20歳が0歳 9
彼からのLINEは私に自責の念を持たせるのに充分、、、ではなかった。
私はなんかだか少し心がキュッとしたのは事実だったが、悪いことだと頭ではわかっていても付き合っていないと言われればそれもまた事実のような気がした。
カルロに「できたよ!」と返し、アディルの隣で眠りにつく。小さなベッドが恋しいと思いつつも寝心地を考えるとやっぱりこの大きなベッドの方が良かった。
翌朝、特に言葉を交わすこともなく朝ごはんも食べず、シャワーを借りてアディルの家を出た。地下鉄でバイバイしたけど一つも寂しくない、戻りたくもない、ただ気だるさだけが体にのしかかっていた。
男性がよく経験する感情抜きの行為とはこういう感じなのかな?まともに冷房も効いてない車内にイラつきながら家へと帰る。
思ったより疲れていたのかその日は午後遅い時間まで寝てしまっていた。起きるとカルロから何件か連絡が来ていた。
「今日はくるの?」
正直男の隣というのはなんとなく疲れたのだけど、昨日のことに少しは罪感じていた。カルロを裏切ったというより、嘘をついてしまったことに。似た感情だけど私かは言わせればこの2つは違う。前者は私とカルロがお互いに関係を特別視しているからこそ生まれる。特別だと思っていなかったわけではないがまだ付き合っていないから。
「隠し事をしてしまったこと」に対する罪滅ぼしのつもりで、なんとなくめんどくさかったけど「うん!準備したら行くね!」と返信をした。
カルロの家の前に来たときはもうすでに夕方を過ぎていた。カルロの家に荷物を置いて夜ご飯を食べに行く。「昨日はどうだった?」というカルロからの質問が心に小さな針を刺したような気持ちにさせた。「疲れてて何もしなかった!久しぶりに1人だったからゆっくりできたよ」と返した。
試験で疲れたとはどの口が言ってるんだろう?対して勉強もしなかったし、その上に試験の後にアディルと食事して、寝たのに。体力はボルト級だと思う。
よくやましいことがある時に食べる食事の味は「味がしなかった」と言われるけど、それはないと思う。ちゃんも美味しかった。もしくは私が「やましい」とはさほど思ってないのだろうか?正直自分でも自分が今どう感じでいるのかわからない、というよりは何もやましさや自責の念が強く生まれてないことに驚きを感じていたのだ。
頭では「悪いことを反省しなければならない」と思っていても心は何も感じていないから。
日曜の夜だからクラブに行くこともなく、2人の時間。楽しいけど、思い返せば少しだけ退屈だった気がしなくもない。スリルを犯したいというよくない気持ちが少しずつ溢れていたのもこの時期からだったのかもしれない。
月曜日が早く来てほしいと思ったのは、この夜を入れて人生で本当に数えるほどだと思う。このモヤモヤした心のうちを友達に共有したかったから。
そんなことを思ってるうちに夜がふけて、お互い早く寝ないと!と寝る準備をしてベッドに入った。
やはり狭い。彼が私を抱きしめながら寝て、彼の足が半分ベッドから出てる。広いベッドの快適さを知ったら、余計に狭く感じるこのベッド。でもやっぱり嫌いじゃなかった。この狭いベッドが少し軋んだとき、初めて私は自責の念を感じたのだった。