対岸 1
私が生まれたこの国は、四方を海に囲まれた島国だ。東にずっと行くとそこは果てしない海で、西に行けば海を挟んだ向こうに別の国が広がっている。どんなだろう、向こうの国は。今の私みたいにどこか漠然と遠くに行きたいとか思ってる人も向こう岸の国にいるのかな、、、
夏のフィナーレとも言える恋人との夏祭りを最初に持ってきた私だが、この夏には楽しみなことがまだあった。
私は韓国へ行く!それも今週から!
韓国へ行くのはこれが初めてではない。高校の卒業旅行に初めて行き、以来何回か行っていた。
飛行機でたった2時間の本当に近所とも言える国だが、海を挟んでいるからか間違いなくそこには異国としての魅力があった。
今回の旅行は初めて釜山に行く。1人で。
実は韓国へ行くのは毎回1人だったんだけど、私には現地に友達がいた。彼の名前はウンジェで同い年の大学生。
ソウルの食堂で箸の場所がわからなくて困っていたとき「日本の方ですか?お箸はここです」と声をかけてくれたことがきっかけで、一緒に食事をした。(韓国はテーブル脇の引き出しにお箸が入ってることが多い。)
私が1人で来ていたこともあり、次の日一緒に市場巡りをしてくれた。それ以来定期的に連絡をとりながら、旅行の時は一緒に遊ぶ仲間となった。
ウンジェはソウルに住んでいたけど、夏休みには釜山付近の地元に帰省していた。それが今回の旅行では初めて釜山に行くことにしたのだった。
旅行の1週間前からカルロには韓国へ行くことを伝えていた。カルロは少し不満そうにしていたけど、快く送り出してくれた。
そして出発日の2日前にはなぜか大学のみんながいってらっしゃい会を開いてくれた(ただ飲みたかっただけだろうけど)
出発日の前日には美容室へ行った。トリートメントショットも追加で湿気にある程度耐えられる艶髪の完成!
そして当日、私はスカイライナーで成田へ向かった。今回の旅行では海を堪能するつもりだったのもあって、アネ⚪︎サの日焼け止めを免税店で大量に購入していたが、これが原因となって税関で止められた。液体を持ちすぎていたらしい。空港スタッフさんにもらったジップロックに入れて通過。
夕方の便だったこともあって、夏の夕日がジリジリとラウンジを照らす中、飛行機を待った。
ついに飛行機に搭乗する時間になった。この瞬間が1番旅行する!って感じがして好き。飛行機内はガラガラだった。ちょうどこの頃、日韓の貿易戦争が勃発し韓国国内、日本国内共にニュースはその話題で持ちきりだった。韓国での日本政府へのボイコットや、反日デモが連日報道され直前に航空券をキャンセルした日本人が多いためだった。
私自身もこの時期に行くことを父から反対されていた身だった。
でも私自身はそんなこと全く気にしていなくて、自分の夏を楽しむのに夢中だった。しかも成田から釜山へのフライトはたったの2時間くらいなのに、今回の航空会社は機内食がでる国賓待遇だった。
シートベルトのアナウンスと機長挨拶が入り、エンジンの音が強くなる。夏の夕日は沈み、小窓の外は滑走路のライトと空港だけが明るく光っている。何度か機械音がしてエンジンは全開になった。どんどん加速する。そしてあのふわっとくるような感覚のあと、私は異国の空に向かって飛んで行った。