【小豆島旅行記⑩2日目~part.1~】闇チーム全員集合の朝
2日目の朝が開けた。
キャンプ場に設営した闇のテントの中からは、夢見るディレクターが奏でるハッピーサウンドがグウグウと聞こえていた。テントの外では起き出てきたリーダーとGOTOが朝食を用意しながら昨夜の大雨の話をしていた。案の定、リーダーはあの雨に全く気がついていなかった。どれだけすごい雨音だったのか、GOTOが説明をしていると、
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突如テントの中から緊急アラームを思わせるけたたましい音が鳴り響いた。2人が驚いていると、ガバッと誰かが上体を起こすような音がしてすぐに...音が止まった。
目覚まし時計...?
と顔を合わせる2人。
すぐにディレクターのハッピーサウンドが聞こえ始める。キャンプの時のいつもの朝の光景がここ小豆島でも繰り広げられている。平和である。
目覚まし時計を止めては寝るを数回繰り返すのが、ディレクターのモーニングルーティーンだ。
その頃、後発隊は香川へ向けてクルマを走らせていた。
荷室には自分たちの荷物の他、闇柑の苗木とカホン。オタマトーン。そして、山田屋まんじゅうを入れたクーラーボックスなど小豆島面白Twitter連合とのプロレス返しに用意した闇の武器がたくさん載せてある。出発前にリストでチェックしている、忘れ物はない。
ふたりとも小豆島へ行く時に着ようと用意していた妖怪美術館のTシャツも着ている。小豆島での正装である。バッチリだ。
しかも、リアガラスから荷室を見た時に気が付かれないように、2本の闇柑の苗木にはワインのボトルを包む時に使うラッピング袋を被せてある。どの武器も必要になる瞬間まで我々の車の荷室に隠しておく予定なのだ。事前に見られて「はーん、なるほどそう来たか」などと悟らせてはいけない。我々のプロレスの美学だ。
これで対策も完璧。ただし、後ろの車から見る我々の車は怪しさ100点満点だった。
助手席では私がLINEで先発隊と小豆島の天気や、先発隊の状況、自分たちの現在地など連絡を取り合ったり、Twitterで小豆島の様子を探っていた。
昨夜のアフタートーク生配信を合図に、それまでブレーキをかけたように大人しかった小豆島面白Twitter連合や闇チームのツイートが再び活発に動き始めていたのだ。できるだけ情報を集めておきたい。なにせ、こんなことあるかもよ~?というふんわりとしたプロレスの予告もTwitterでしてくる人達なのだ。どのタイミングで武器を出すのが最適か情報の収集はマストである。
車は快調に進んでいく。心配していた高松市内の朝の混雑も無かったため、出港1時間にはフェリー乗り場に到着した。高松港から土庄港まではフェリーで1時間。ここまで来たらもう少しだ。
その頃、ようやく起きてきたディレクターとともに先発隊は朝食を取っていた。天気は曇り。後発隊は無事にフェリーに乗ってこちらに向かっているところだ。彼らとは10時に土庄港で合流後、まずは銚子渓にある「おさるの国」に行く予定だ。そろそろここを撤収をして、港へ行く準備を始めなくては。「昨日の私たちみたいに、3人で後発隊を歓迎したらオモロいかな。チョーケシダンスとかで(笑)」など話をしていたその時、雨が降り出した。始めはすぐに止むだろうという量だったが、あっという間に本降りになった。
撤収前によく乾かすのがテントを長持ちさせるためには必要である。あまり濡らしたくない。時間もない。3人で必死でテントを畳んだ。
フェリーの前方に島が見えてきた。
「あれが小豆島やっけ?」と話していた後発隊の2人。海上は晴れていたこともあり、「やっぱりあの人はホンモノの晴れ女やねぇ。すごいわ」とGOTOの噂をしていた。どんどん島が大きくなってくる。
やっと来れたね。今日まで長かったわー。と感慨に浸る私たちに先発隊からLINEが入る。
「アナタ達が近づいて来たおかげで大雨の中テント撤収中(笑)お迎え間に合わないかも」
というものだった。
土庄港で合流の予定だったが、今日最初に行く予定の「銚子渓おさるの国」で合流することになった。こんなに晴れてるのに大雨?と思い島の方に目をやる。
明らかに雲を被っている山がある。キャンプ場って、あの辺りかな?などと話している我々にリーダーからLINEが入る。
「大雨だとお猿さん達は隠れて出てこないらしい。二十四の瞳映画村に目的地変更!」
リーダーは昨日チョーケシ兄やんに万一雨だった時のことを相談していたのだ。
猿だって雨は避ける。雨がひどいと猿は出てこないから、雨天時のスポットの候補として「二十四の瞳映画村」をレコメンドされていたのだ。映画「二十四の瞳」や「八日目の蝉」などのロケ地にもなった「二十四の瞳映画村」には、今、期間限定で妖怪美術館とのコラボレーションで企画展示がされているという。今日再訪予定の「妖怪美術館」と今夜宿泊予定の「国民宿舎小豆島」とあわせて3ヶ所での企画展示なので万一雨天なら「二十四の瞳映画村」に変更して企画展示をコンプリートするという提案だった。
土庄港に着岸する直前での目的地変更だったので船室から車に移動しつつ、私はスマホのナビを「二十四の瞳映画村」に設定した。車のナビは昨日の時点ですでに今日の行程を入れてある。次の目的は「おさるの国」に設定してあっるのだ。我々は一番乗りで高松港のフェリー乗り場に着いていたこともあり、降車順はかなり早い。ナビの変更に時間がかかって後続の車に迷惑をかけないための措置だった。
フェリーに軽い衝撃があった。着岸したのだ。車に乗ってすぐに目の前の乗降口が降り、島の風景が飛び込んで来る。
あぁ、小豆島だ。やっと来れた!ただいま!
感慨に浸る間もなくグループLINEの呼び出し音が鳴る。
「雨止んだ!やっぱりおさるの国集合で!」
すぐに運転席に座る旦那に行先の変更を告げる。急な変更は割とよくある。慣れている。幸い車のナビの目的地はそのままにしていたのでスムーズだった。
後発隊の車は銚子渓へ向かって走り出した。
途中で「妖怪美術館」の前を通過する時、車を減速して車窓から「ただいま!」と妖怪美術館の建物やチョーケシ様に挨拶した。後でゆっくり来るから、今はこのくらいで。と話しながら車を進める。
調べてみたら、土庄港からおさるの国へ行くのと、先発隊のいるキャンプ場からおさるの国へ行くのとでは所要時間は変わらないようだ。
車は登り坂に入った。どんどん上がっていく。以前来た時には気が付かなかったが、小豆島は地形の起伏が激しいのかも知れない。やはり広い範囲で動いた方が色んなことが知れて楽しい。そんな事を考えていたら視界に動物注意の標識が入ってきた。猿に注意。なるほど、そんなにいっぱいいるのか。注意しよう。
路面をふと見るとこの辺りは少し前に雨が降っていたことが分かった。道路の端が濡れている。ヘアピンカーブを2箇所ほど過ぎて少し進んだ先に「銚子渓おさるの国」があった。
駐車場に入る。先発隊の車はない。雨の中の撤収だったから時間がかかっているのだろう。今のうちに色々見ておこう。駐車場の一角にある「銚子茶屋」という売店を覗いてみることにして車を降りた。
店の外に立っていた人が私たちに声をかけてくる。
「おさるの国に来られたの?チケットはこちらで買えますよ」おさるの国のスタッフさんのようだ。初めて来た人にはチケットの売り場が分かりにくいから、こうして車が入って来たら伝えているのかもしれない。親切だ。待ち合わせをしているので合流してから入園する旨を伝えて売店の中に入る。お土産のおさるのグッズが並んでいた。可愛い。え、これも可愛い。
小豆島上陸から約5分でリーダーはみかん箱の上で歌っていたが、私は上陸約15分で自分にお土産を買っていた。
駐車場で先発隊の到着を待つ私たち。
そろそろ着いてもおかしくない頃なのに、先発隊は来ない。旦那は趣味の洗車を始めていた。
その頃、先発隊の3人は頭を抱えていた。
デジタルクラッシャーGOTOの闇がリーダーのナビに降り注いだ結果、意図した場所とはまったく違う場所に到着していたのだ。
歌舞伎舞台である。
何をどう間違えたら「おさるの国」が歌舞伎舞台になるのだろう。恐るべしデジタルクラッシャー。
ついでに紹介すると、この「肥土山歌舞伎舞台」、離宮八幡神社の境内にあり、島内にいくつかある農村歌舞伎の舞台の代表をなす建物だそう。花道や廻り舞台、迫り上り、奈落、葡萄棚、天井、化粧部屋、楽屋、大夫座など歌舞伎舞台の模式的なものが揃った歴史ある舞台らしい。
しかし、我々が今求めているのは歴史ではなく猿だ。目的地は「おさるの国」である。先発隊は改めてナビを設定し直し、走り出した。
LINEで届いた連絡によると、先発隊はどうやら歌舞伎舞台にいるらしい。我々後発隊の頭の中も「?」でいっぱいだ。どうしてそうなる。闇が深すぎる。
それから約10分。
先発隊の車が「銚子渓おさるの国」の駐車場に颯爽と滑り込んできた。
洗車をすると雨を降らせる体質だというのにせっせと車を磨いている旦那に窓を開けて「コラー!」「洗うなってー!」と叫びながら。
こうして闇チームが揃った。
さあ、まずは「おさるの国」を楽しもう。