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第2話【妖怪万博まであと97日】万博の決定は突然に

 ※まえがきでご案内していますが、以下、“兄やん”こと佐藤氏の視点を通して書いています。
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いやーん!10月が終わるー!
今日がハロウィンのイベントなのだから、そのことは何となく理解はしていたが…。妖怪美術館の事務所で不意に見たカレンダーにその現実を目視できるかたちで突きつけられた私は、カレンダーの前で愕然としていた。
今月は、妖怪美術館を紙上に再現した『POP YOKAI 現代百鬼夜行』(Rockbook社(フランス))の日本先行発売もあり、書店での出版イベントに来年2月の妖怪万博のPRも兼ねて、奈良へ妖怪美術館が出張参加していた。他にも堺(大阪)や立川(東京)の妖怪イベントにも参加している。妖怪美術館は、今年、例年以上に神出鬼没だ。

日本で先行発売された「POPYOKAI」。先日開催された、世界最大の本の祭典フランクフルトブックフェアにも並んだ。英語と日本語が並記されたバイリンガル版では、「へー!こう訳すのか!」と英文科卒の筆者も目からウロコの逸品。勉強になります。洋書を取り扱っている書店もしくは妖怪美術館のネット通販にて購入可能

それらの準備や妖怪美術館の独自イベントに並行して、妖怪万博に向けた準備も行っているため、みんなそれぞれに目まぐるしい日々を送っている。日にちや曜日の感覚が怪しいことも多々ある。
これでも、おそらくまだまだこれからなのだろう。
これから年末にかけて妖怪万博の準備が佳境に入る。今まで以上に時間の経過を早く感じる日々が来ることを想像するだけで、戦々恐々としてしまう。
ワタシ、カレンダー、コワイ…泣


実は、妖怪万博の開催は2023年の9月頃には内々で決まっていた―。

「再来年、2025年の2月には閑散期対策として妖怪美術館で開催している『鬼まつり』というイベントを、それまでよりも大きな規模で開催したいと思っているんです。」

2023年5月27日、徳島県の大歩危峡で開催された「第1回 四国妖怪フェスティバル」に参加した時のこと。初日の夜に開かれた出展者交流会で、四国妖怪フェスティバル実行委員長の永本氏に、私はこう話していた。

2023年「第1回四国妖怪フェスティバル」出展者交流会に臨む館長の柳生忠平氏(左)と“チョーケシ兄やん”(右)の様子。永本氏と話した後なのか、兄やんの表情に「やっちまった」感が見て取れるような…(写真:nomurachan)

お会いしたことがないにも関わらず、「四国妖怪フェスティバル」への出展案内のメールを我々に送ってくださったのは、実行委員長の永本氏だった。その誘いを受けて出展した「第1回 四国妖怪フェスティバル」には、四国だけではなく鳥取県の境港市や兵庫県の福崎町など、全国から妖怪でまちおこしをしている団体“怪自慢”たちが集まっていて、地域の垣根を越えた交流の場にもなっていた。
妖怪の様々な企画やイベントが全国的に盛り上がりつつあるのを体感した会だった。この波がさらに増加・拡大していけば、日本の独自の文化として「YOKAI(妖怪)」が世界語になるはず。そう確信できる素晴らしい時間だった。
その感動と、自分たちも頑張らねばと“怪自慢”の皆さんに触発されて気持ちが熱くなっていたところにお酒の勢いも加わった私は、忙しくされていた永本氏を捕まえて『鬼まつり』の規模拡大という だいぶ漠然とした構想をお話ししたのだ。

「実は、四国妖怪フェスティバルも『四国4県持ち回りで開催できたらいいなぁ』と思っていたんですよ!」
同じようにお酒に酔っていた永本氏は私の言葉を聞いて、すぐにこう返してくれた。
お互いにとってまさに“渡りに船”と思った瞬間だった。
「それならば、第2回は大歩危で開催して、第3回は小豆島(香川)で開催することにしましょうか!」
と私が永本氏の言葉に乗っかると、
「いいですね!ぜひそうしましょう!
みんなで小豆島に行きますよ!」
と永本氏も返してくれる。
その後は、ぜひよろしくお願いします!と、2人で盛り上がった。アルコールのせいでおぼろげながらもそう記憶している。

こうして、改めて素面しらふの状態で考えると怖いほどトントン拍子で小豆島での「第3回 四国妖怪フェスティバル」開催が決まったのだ。
そのしばらく後、2023年9月に入った頃に永本氏からメールが届いた。
アルコールも入った状態での話だったので、改めてのお願いと確認のメールだった。
何を隠そう、永本氏に話をした後、私は
「妖怪美術館のみんなに相談する前なのに、言っちゃったなー」
と反省していたのだ。
しかし、「鬼まつり」の規模拡大を実現するチャンスであることに変わりはない。
このメールを受けて腹を括った私は妖怪美術館のメンバーへ、2025年2月に「第3回 四国妖怪フェスティバル」を小豆島で開催すること、そのうえで「鬼まつり」やそれを締めくくる「節分お疲れ様会」を今までにない大きな規模で開催することを伝えた。
もちろん、
「みんなに相談する前に、永本さんに言っちゃった♡」
という軽めの懺悔を添えて…。

さすがの妖怪美術館の面々も一瞬たじろいだ。
が、すぐに切り替えて「やるしかない」と賛同してくれたのは心強かった。
「遅くとも、来年(2024年)5月の「第2回 四国妖怪フェスティバル」の時には開催発表したいですね」
永本氏とこう話した結果が、今年2月「節分お疲れ様会」で「来年のことを言うと鬼に笑われるぞ(笑)」と突っ込まれながらも、歓声と拍手に包まれた妖怪万博2025の開催宣言になったのだ。

あれ以降、「大丈夫かな」「間に合うかな」と不安になるたびに、2月にわざわざ宣言に立ち会うために徳島から小豆島に来てくれた永本氏の笑顔が思い出されるのだ。
あぁ、今日の青空にも永本氏の笑顔が浮かんで見える…。

「まぁー、瀬戸内芸術祭“セトゲイ”前の大仕事だからねー」
私がカレンダーを凝視して息を飲む様子を見て、理由を察したnomurachanがかけてくれた声で我に返る。
のんびりとした、達観したようなトーンの野村さんの声に不安になっていた気持ちが落ち着く。
「あと97日!今日のイベントも頑張りましょー」
と声をかけつつミュージアムショップへ向かうnomurachanの背中を見て、弱っていた気持ちに喝を入れた。
もう間もなく妖怪姿のイベント参加者のみなさんが集まってくる。
Xの投稿を見る限り、ガチめにおっかないコスチュームを用意している参加者もいるんだろうな…。

【妖怪万博まであと97日!】

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