闇の散財ツアー 後編★敏腕ハンターさんからの刺客!? もうやめてぇ!リーダーのHPはゼロなのよぉ!!
目の前の試し張りフロアでは、イケメンスタッフさんにレクチャーを受けて女の子のグループが楽しそうにテントを張っていた。建て終わったテントを他のスタッフさんがバトンタッチして片付けている。動きにはムダがない。すごい勢いでテントが箱から出てきた時よりもコンパクトになって収納されていく。ずっと見ていられる・・・そう思ったその時、
「ずっと見ておれるわぁ・・・」
私が思っていたこと、そのままをリーダーが呟く。
そう言いながらも、リーダーの目は今畳まれているテントを飛び越えてその向こうにあるLOGOSのテント「プレミアムパネルドゥーブル」を見つめていた。熱に浮かされたようなめでぽーっとしているリーダー・・・。
遡ること数分前。
「ちょっと、頭冷やそう!」そう言って立ち上がったリーダーが向かったのは、店舗中央にあるテントが設営してあるウッドテラス。そこにある北欧のアウトドアブランドNORDISK(ノルディスク)の1番人気のテント「アスガルド」の中に避難してきたのだ。グランピングなどでよく見かける可愛くて映えそうなお高級テントだ。
違うテントを見て冷静になろうというリーダーの作戦だろう。しかし、気がつけばリーダーの視線はさっきまで居たLOGOSのプレミアムパネルドゥーブルを見ている。目はまだトロンとしている。離れてまで目で追ってしまうなんて本当に欲しい証拠だ。アパレルを見ていても、ストーブを見ていても、リーダーの視線は気がつけばドゥーブルを見ていた。リーダーが恋する乙女になっている。
そして、私たちが何を見ている時でも視界の片隅に見切れるように立っている存在がいる。ふんわり優しい雰囲気のべっぴんさん。そう、リーダーを絶賛ロックオン中の敏腕ハンターさんだ。そのときの私の視界を写真に撮っておけば良かったと今では強く思う。再現するならば、次の写真のような状況だ。
お分かり頂けるだろうか。彼女は我々の視界の端っこで商品の陳列を直したり、困っているお客様がいないか見まわしながらずっと居るのだ。
彼女はLOGOSのスタッフさんだ。本来、LOGOSのコーナーにいるはずが、持ち場を離れて我々の視界の隅に居続けているのだ。恐るべしハンターさん。リーダーに植え付けたドゥーブルの芽が育って、リーダーが堕ちるのを待っているのね。確実に仕留めるまでロックオン。私は彼女の職人魂に胸を打たれていた。
リーダーが御手洗に行って不在の間、私はある商品を手に悩んでいた。
LOGOSの炭火サンマ焼き器である。欲しい・・・しかし果たして私は、年に一度焼くか焼かないかの魚・サンマのためにこの商品を買っていいのか。我々闇チームは値段を表現する際に、よく八幡浜の某店でちゃんぽんをいくつ注文出来るかに例える。闇チームの共通貨幣単位はCP(ちゃんぽん)なのだ。ちなみに、この炭火サンマ焼き器のお値段は闇の相場では4CP(ちゃんぽん)。我が家が1年に焼くサンマの総額よりも確実に高い。しかし、今の私は猛烈にこれが欲しい。キャンプ場でサンマをじゅうじゅう焼きたい・・・。
そう悩む私の背後から、
「それ、サンマだけじゃなくてイカも焼けるんですよ。焼きイカ、お酒のアテにも最高じゃないですか?」
と声がした。その刹那、買う・買わないの間でふらふらと揺れていた私の心の針が一気に「買う」に向かって振り切れた。
ハッとして振り返ると、距離を置いていたはずのハンターさんがニッコニコの笑顔で背後に立っていた。手に何冊か本のようなものを持っている。彼女はソレを私に手渡しながら、こう言った。
「ドゥーブルには裾にぐるりとスカートが付いてるんです。だから、虫の侵入も防げるし、冬の冷たい風をシャットアウトできます。先程お伝え出来ていなかったので、良かったらお客様からお伝え頂けないないでしょうか?あ、これ、LOGOSの総合カタログです。本当は有料なんですけど、プレゼントするので皆さんでご覧になってください♡」
ハンターさんは我々を見ていて気が付いたのだ。このグループでそこそこキャンプのギアに明るいのが私で、時折リーダーやGOTOからの質問を受けて色々説明をしていることを。
そして、今ハンターさんは、スタッフである自分の口からではなく、私の口伝えでリーダーにキヨミズの舞台から飛び降りる最後の一撃をくらわせようとしているのだ。
すっげぇ、技出してくるなぁ!オイ!
闇チームの人数分・4冊のカタログを受け取りながら、私の脳裏には
「まなみん・・・まなみん・・・聞こえますか?
今、・・・あなたの脳裏に・・・直接語りかけています。・・・聞こえますか?」
とハンターさんの声がする。そして、私の脳に直接語り掛ける声はこう続けるのだ
「いいですか?
リーダーに・・・トドメを刺すのです。
大丈夫、アナタならできる・・・。」
そう聞こえた気がした。
そして、私はハンターさんにこう答えていた。
「(あぁ、お姉様♡)お任せください♡」
※()内は心の声
こうして私はハンターさんに心臓を捧げ、彼女の手先となったのだ。
私がダークサイドに堕ち、刺客と化したことなど露ほども知らないリーダーが戻って来た。
私の視界の隅にはハンターさんが見切れるように居る。ニコニコ笑っている。
私が手に持っている炭火サンマ焼き器を見て笑っているリーダーに、ついさっきハンターさんに言われた通りのことを伝えた。
それに加えて、
「ここのお会計はドコモのd払いが出来るようになってましたよ。d払いって支払いにdocomoで貯まってるポイントを使えるの知ってますか?それに、買い物した分でまたポイントも溜まるしお得ですよねぇ・・・」と追加情報も併せて伝えた。店を回って見ている時にレジの前で利用可能な決済方法をチェックしておいたのだ。
「マジで!?今、私、ドコモのポイントめっちゃあるよ!」
と、スマホに表示されてポイント数をこちらに見せるリーダー、
「これ全部使えるってこと!?」
と続ける。その辺の小さいテントなら吹き飛んでしまうくらいポイントが貯まっていることに驚きつつも、私は頷く。
この時のリーダーの顔を、私は忘れない。
ここまで散々色々悩んできた人が、キヨミズの舞台から飛び降りる瞬間の、色んなものから開放された表情だ。多幸感に充ち満ちている。
リーダーは、堕ちた。
あとは折半して買うGOTOを残すのみ。だが、ここからはリーダーがGOTOを口説いてくれる。そう確信した。私はそれを見守るのみ。
・・・あぁ、お姉様ぁ(ハンターさん)、私、やりました♡
私の視界の隅でハンターさんが、今日1番の笑顔でニコッと微笑んだ。
再びLOGOSコーナーのドゥーブルの中、リビングセットに腰掛けたリーダーとGOTOは、スケジュール帳を開いて何やら話し込んでいる。どうやら、このテントを折半で買った後、いかにその代金を仕事で取り戻すか、そういったビジネスのお話をしているようだ。
話し込むこと暫く、遂にGOTOが首を縦に振った。この瞬間、闇相場で約260CP(ちゃんぽん)のプレミアムパネルドゥーブルを買うことが決まった。
サッとハンターさんがやって来る。手早く在庫を確保したかと思うと、今までより小さな声で「私とお客様の2人の秘密ということで・・・」と言いながら電卓を叩いてリーダーに見せている。
覗き込んだリーダーがとっても嬉しそうな顔をした。
リーダーとハンターさんの秘密のことは、詳しくは聞くまい。でもいい内容だっただろうと想像する。
「お荷物になるので、テントは先にレジでお預かりしておきますね。他に気になるものがあったら、どうぞごゆっくり♡」ハンターさんはそう言ってテント一式とオプションたちを詰んだてんこ盛りの台車をレジに運んで行った。
この後、我々はそれぞれ買うと決めていた物たちを堰を切ったように カートに載せ始める。
私の炭火サンマ焼き器も載っている。GOTOとリーダーがそれぞれ選んだ寝袋や、リーダーが抱きしめて離さなかったランタンも載っている。カート2台分になった荷物を押してレジに向かった我々をテントやオプションたちを載せた台車が待っていた。買い物の総量、実にカート2台+てんこ盛りの台車1分。まさに爆買い。
レジを済ませると、私とたっちゃんは荷物を持って出てくる2人を受ける形で撮ろうと、ひと足先に外に出て出入口に向けてカメラを構えた。
たっちゃんはリーダーとGOTOの散財を見届けて、「すげぇ!マジで買った!すげぇ!早よキャンプ行きてー!」と興奮していた。
しばらくして、リーダーとGOTOがカート2台と台車1台を押しながら1列になって店から出てきた。260CP(ちゃんぽん)分の大きな決断をした2人の顔は全てを終えて少し疲れていた。朝より痩せた気がする。
買い込んだ荷物をリーダーの車に積み込む。ラゲッジスペースはパンパンになった。
この時、15時を回っていた。我々は飲まず食わずで5時間もショッピングを続けていたのだ。
「お腹空いた!うどん食べて帰ろう!」
そう話して皆で近くのまだ開いているうどん屋さんへ向かった。
食事をしているとき、リーダーが「ドコモのポイントがまだ残っとるんよねー」とスマホを出して見せた。確かに全ポイント使ったはずにもかかわらずかなりのポイントが残っている。d払いでポイントを使うと、レシート上ではそのことは確認ができない。アプリで確認をしなければならないのだ。しかし、全ポイントを使うように設定しているのに、減っているのはほんの一部。決済後にこんなに残るわけが無い。システムエラーだろうか。嫌な予感がした。
とにかく、1度店に戻ってさっきの会計を取り消してもらったら、すぐにポイントが返ってくる。それをスマホで確認した後、再度全額ポイントを使う操作をして決済をした方がいい。私はリーダーにその旨を伝えた。
食事の後、我々は愛媛に帰る組と店にもどる組の二手に別れた。リーダーとGOTOは店にとんぼ返りをして再度決済をし直し、事なきを得た。リーダーのスマホに映るポイント残高も0になったという連絡を受けた。これでいい、ひと安心だ。しかし、こんなシステムエラー聞いたことがないが・・・。
ふとGOTOの顔が脳裏をよぎる。色々あってすっかり忘れていたが、GOTOは電子と名の付くあらゆる機器を見たことがないエラーに陥れるデジタル・クラッシャーだ。
「GOTOさんの電磁波か・・・」
愛媛へ向かう車の中、私とたっちゃんが同時に呟いた。恐るべしGOTOの闇。ライターになる前に就いていた職のおかげで、とかくモバイルには強い私だが、それでも考えられないエラーがGOTOの周りでは日常茶飯事の様に起こる。彼女にもそれなりに自覚があるのだろう。大きなエラーの時ほどGOTOは黙っている。・・・まさに先程リーダーがポイントのとことを話している時、GOTOは気配を消していた。これは、間違いない。
こうして、我々闇チームのテントにLOGOSのプレミアムパネルドゥーブルが仲間入りすることになった。寂しがり屋のリーダーが、頑張って1人でテントに寝ることもなくなった。
このテントがデビューするのは次のキャンプでのこと。
後日談ではあるが、LOGOSの公式YouTubeチャンネル「おそロゴス」のスタッフ紹介のコーナーで、あのハンターさんが紹介されているのを見て慄いた。
彼女はその類まれな販売力で、高松市内にあるLOGOSアウトレットと、宇多津のAlpenアウトドアーズを兼任していると紹介されていた。・・・やはり、お姉様は只者ではなかった。
それにしても、楽しかった。あの店は1日居れるなんてレベルではない。3日は居れる。そのくらいあっという間に時間がすぎて行く。
聖地には、また何度となく訪れる事になるだろう。我々もスキルアップした状態でハンターさんに再会するのが楽しみだ。
皆さんも対戦してみてはいかが?
次回は、いきなりハプニング続出!ドゥーブルテント初出しキャンプ。
See You Next CAMP!