宮崎ユウのひとりでソロキャンできるもん! 後編★ちょっと感じたソロの良さ
〘 前回までのあらすじ 〙
コンビニで1人お買い物がギリギリ限界レベルのおひとり様苦手女子・宮崎ユウ。
ディレクターに煽られて負けず嫌いに火がついた結果、初めてのソロキャンプに挑戦することに。ひとりとはいえ、いつものごとく次々とハプニングが降り注ぎ、翻弄されるリーダー。
思うように設営は進まない上に親指を負傷、もどかしい思いを怒りに変えて気力だけでカーサイドタープを張り終える頃には、御機嫌は大変に斜め。とてつもなく低めのテンションのまま、仁王立ちでカメラに向かっていたのだった。
■パトラッシュとカレーの癒し
「はい、完成!」
強めの怒気がこもった低いトーンの声のリーダーが、カメラにカーサイドタープの設営完了を宣言した。
ここまで出来たら、後はもう今までのキャンプで何度となくやって慣れ親しんだ事ばかり。
ようやくできた屋根の下にテーブルを広げLOGOSのあぐらチェアを設置すると、恋焦がれた焚き火台を出した。
この日は時折雪がチラつく寒さなのだ。焚き火の暖かさがどれだけ恋しかったことか。
凍える手で薪を組むと、火をつけた。白い煙が立ち上ると同時にパチパチと焚きつけ用の細い薪が燃える音が鳴る。オレンジ色の炎が少しずつ成長すると、やがて大きな薪に火が移った。じんわりと伝わってくる焚き火の暖かさが大きくなり、全身を包んでくれるようだった。
料理をするのを忘れて、しばし手を火にかざして暖をとるリーダー。体が暖まると心に余裕が生まれたのか、周りで寛ぐキャンパー達の様子が目に入ってくる。
キャンプ場内には他のキャンパーさんが連れてきているのであろう犬もいた。薄く積もった雪の上を元気に走り回る無邪気な姿が可愛らしく、ささくれた心が癒されるようだった。焚き火にあたりながらその様子を眺めることしばらく、すっかり暖まったリーダーは昼食を準備し始めた。
車から調理器具などが入ったバスケットと食材を詰めたクーラーボックスを降ろすと、取り出したレトルトカレーのパッケージを手にカメラに近づくリーダー。カメラに大きく映し出されたパッケージには「もっちり里芋カレー」の文字。今日のランチにこれを食べると紹介すると、テーブルにポケットストーブを取り出して、それを囲うように風防を立てた。
ポケットストーブにセットした固形燃料に火をつけて、浸水させた米の入ったメスティンを乗せて炊飯を始めた。米が炊ける間を利用してレトルトカレーを温めるお湯と、食後に美味しいコーヒーを淹れるためのお湯を準備することも忘れない。
取り出したクッカーとケトルに水を注ぎ、火にかけると、椅子に座って再び焚き火で暖をとりながら辺りを見回す。
楽しそうにキャンプ場を駆け回るパトラッシュ(キャンパーさんのペット犬)の姿を眺め、癒されること数分。
ポケットストーブの上で火にかけられているメスティンからブツブツとご飯が炊ける音がし始めると同時に、ほんのりとお米が炊ける香りが立ちリーダーの空腹を刺激する。
沸騰がおわり、チッチッチッと乾いた音がし始めたらメスティンを火からおろしてしばらく蒸らす。その時間を使ってスタンバイしてるクッカーのお湯にカレーのパウチを入れて温める。
ご飯の蒸らし時間が終わりメスティンの蓋を取ると、立ち上る湯気と炊きたてのご飯の香りに、親指を負傷してどん底まで落ちたテンションが持ち直してくるのを感じるリーダーであった。
◾︎スパイスの魔法
美味しそうに湯気を立てる炊きたてのご飯。しゃもじを使ってごはんを軽くほぐすと、そこにお湯から上げたアツアツのレトルトカレーをかける。
「お、おおーふ♡」
開封した瞬間に漂うスパイスの香りと、ゴロッと出てきてカレーの海にダイブする里芋のボリューム感がなんとも美味しそうで、リーダーから歓喜の声が漏れる。
嗅覚と視覚から空腹を掻き立てられて気持ちがはやるものの、この美味しいカレーを1滴たりとも無駄にしたくないという思いがまさり、丁寧にパックから絞り出す。
持てる限りの理性を総動員して完成したカレーの物撮りを済ませると、
「いただきます!」
と言ってスプーンを動かす。
「こいつ、こいつ♡」
湯気の立つカレーから大きな里芋を発掘して、ごはんと一緒に抔うと、ふーふーと吹いて1口に頬張る。
口内に旨みが広がると同時にスパイスの香りが鼻に抜ける。熱々の里芋を歯で割るとねっとりとした歯触りの後、里芋の甘さと奥深い出汁の旨みと共に更なる熱が口に広がる。白い息と共にハフハフ言いながら食べ進めるリーダー。
里芋の甘さとスパイシーなカレーの風味が互いを引き立て合うのをひとしきり楽しんで飲み込むと、食道から胃のあたりまでがじんわりと暖かくなる。寒い所で食べているからこそ、いつもより余計に美味しく感じるのだろう。
ひと口目を頂き、美味しさのあまりふぅっと感嘆の息をつく。白い息が空を舞う。まるで胃が「幸せ♡」と言っているようだった。
それをまた感じたくて、ひと匙、またひと匙とスプーンを口に運ぶリーダー。
この「もっちり里芋カレー」は愛媛の郷土料理である「いもたき」をカレーにしているため、スパイスの華やかな風味や野菜の甘さのほかに出汁の奥ゆきのある旨みも加わった逸品であり、リーダーの大好物でもある。
具材にカレーでは珍しくコンニャクが入っているのは、いもたきをカレーにしているからこそである。これがまた旨いのだ。
「里芋デカッ♡」
「コンニャクもあるー♪」
存在感のある里芋やコンニャクを嬉しそうに見つけては口に頬張っていくリーダー。
「旨いわぁ♡本っ当に美味しい!」
とすっかりご機嫌を取り戻したリーダーの様子を見ると、カレーのスパイスには緊張をほぐしてリラックスさせる効果があるというのは本当なのだと感じる。
こうして、「もっちり里芋カレー」をペロリとたいらげたリーダー。アツアツのカレーのおかげで体の芯からポカポカしていた。
そして、幸せなお腹をさらに満たすべく2品目に着手する。カレーのスパイスには食欲を増進させる効果もまたあるのだ。
◾︎ソロだからこそ欲張りに
ソロだからこそ簡単に
食欲に火がついたリーダーが2品目に作るのは、カップ焼きそばを使った「簡単お好み焼き」。お好み焼き粉を使わずに簡単に出来、洗い物も出ないと良いことづくしのキャンプ料理である。
まずカップ焼きそばの麺をジップ付きの袋に入れて、普段のストレスや怒り、今日のリーダーの場合はひとりぼっちの寂しさなどを指先に込めて麺を細かく砕く。
それを容器に戻して、具のキャベツと少量の水、たまごを割入れてよくかき混ぜて、ホットサンドクッカーに流し込んで火にかける。
あとは食べやすい大きさにカットして、付属のソースや青のり、マヨネーズをかければ完成と簡単にできるのが特徴である。
ホットサンドクッカーで焼くからひっくり返すす時に失敗がなく、誰でも表面はカリカリで香ばしく、中はふんわりと美味しく焼き上げることができるスグレモノメニュー。
サクッという耳に心地よい音とともに、ソースの味が広がる。香ばしく焼けた麺とフワッ仕上がった麺の食感のコントラストが面白く、食が進むひと品。
「うん、美味しい♪」
焼きあがった簡単お好み焼きをひと口食べてそう言うと、リーダーはこちらもペロリとたいらげた。
ソロキャンプだからこそ、準備や片付けに手間がかからなくて美味しいものを、他の誰でもない自分のペースや腹具合に合わせて欲張りに食べることができる。人の目など気にしなくていいのだ。
これこそがソロキャンプの楽しさであり、醍醐味のひとつである。それを味わった今、リーダーの心は
「私、ソロキャン、やったったわ・・・」
という、ある種の達成感に充ちていた。
淹れたての食後のコーヒーを飲み、ひと息つきながら食後の余韻に浸ることしばらく、キャンプ場の奥ではパトラッシュがまだまだ元気に走っていた。
◾︎ぶり返す寂しさ、そして・・・撤収
料理を作ったり、食べたりすることに集中して忘れていたひとりぼっちの寂しさが、こうして食事が終わってしまうと少しずつぶり返してくる。
ひとりでデイキャンプをしていることを思い出したリーダーは再び寂しさに襲われていた。
先程まで時折チラついていた雪が粉雪から牡丹雪に変わっていた。
これは、早めに撤収をしないと積もったら帰るのが大変になるかもしれない。そう思って時計を見ると15時を回っていた。
設営に手間取ったことを考えると、撤収でも何かしら手間取るかもしれない。
それを考慮して、リーダーは撤収を始めた。決して寂しさに負けて撤収を早めた訳では無いと自分に言い聞かせながら、片付けをしていくリーダー。
まずは、調理道具などを仕舞って、カーサイドタープの下に出していたテーブルや椅子、焚き火台などを片付けて車に乗せた。
そしてタープを畳むべく、ポールを固定していたペグを外して、家で練習した通りタカアシガニのお食事スタイルで片方のポールをもう片方の突起を押し当てて連結を解除してポールを仕舞う。
反対側でミラーやホイールに巻いてタープを固定していたロープを外して、タープを降ろすと、パネル部分に入れていたアルミフレームを外してタープを畳んだ。
片付けが進む度に、みんなで来ていればもっと効率よく、ワイワイ言いながら進むのにと考えて、またしてもリーダーのテンションが下がっていく。
「片付けをひとりでやるくらい虚しいものはないわ・・・」
テンションに比例して低いトーンの声でそうボヤくリーダー。最後にクーラーボックスの下に脚として敷いていた薪を
「もう面倒くさい・・・ポイっポイっ」
と言いながら車の荷台に半ば適当に入れて、ゴミ袋を乗せて撤収を終えると、
「とにかく・・・やっぱり、グルキャン最高!」
とカメラに向かって言ったリーダー。
車に乗り込むと、「終わった・・・」と安心する気持ちと、ひとりで頑張った疲れがドッと押し寄せてきた。なんだか眠気もする。
はぁ~と大きなため息をついて、サイドミラーを見ると、さっきまで走り回っていたパトラッシュが不思議なものを見るような目でこちらを見ていた。
パトラッシュ・・・、走り回って疲れたろう。ぼくも疲れたんだ・・・。何だかとても眠いんだ・・・パトラッシュ。
そうミラーに写るパトラッシュに語りかけながら、エンジンをかけるリーダー。エアコンの暖かい風が沁みるようだった。ゆっくりと車を走らせると、暖かい天国(自宅)へと続く道を走りだす。
天使の羽のように落ちてくる牡丹雪の中、パトラッシュの声が遠くに聞こえた気がした。
ひとりぼっちの寂しさを改めて感じると同時に、ほんの少しだけ垣間見ることができたマイペースに自分だけの世界に浸るソロキャンプの楽しさ。しかし、やっぱり寂しさに襲われた。そんなほろ苦い宮崎ユウ初めてのソロキャンプから始まった2021年。
キャンプ場を出る時には、もう1人では来ないと心に決めていたものが、家に着く頃には「また来てみてもいいかも」と変わっている事に気付いて、少し悔しい気持ちになったリーダーだった。
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次回、お花見キャンプをめぐる第1回闇のzoom会議を経ての宇和島市「グリズリーBBQ&CAMP」でのデイキャンプの様子をお送りする。
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Sea You next CAMP!