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てくてく

オランダに来て3ヶ月がたった。

来てからすぐ買ったシャンプーが切れそうだ。
来た時に着ていた半袖は、クローゼットの端っこで申し訳なさそうに佇んで、ジャケットとセーターがクローゼットを牛耳っている。
明るくなったからと布団から出たら8時半で、早起きできないのを太陽のせいにしたくなる。

あ、もうこんなに時間が経ったんだ。という感覚とともに、自分はずっとここにいたような気もする。

マーケットに行ってオランダ語で安売りのアボカドを買った。
通学で乗り換える電車の発車時間とプラットフォームは体に刻み込まれている。
そう、3ヶ月でいろんなことができるようになった。
これが日常になってきた。

でも、友達と話していてヨーロッパの歴史ジョークが飛んできたりすると、言ってることはわかるけど目の前の二人の感覚は分からないなぁと思う。

現代の都市での生活と、文化・歴史的な背景ってのは全然違うところにあると改めて感じる。ふと、自分は "Stranger" なんだなあと気付かされる。

この3ヶ月、最初はまず生活するのに必死だった。そして、色んなことを試した。 なんだかんだ言って、中学校1年生以降の6年間の中で一番「生活しかしてなかった」と思う。

起きる。顔を洗う。歯を磨く。着替える。朝ごはんを食べる。電車に乗る。
講義を聞く。(何か新しいことをいくつか試す。)
電車に乗る。家に帰る。洗濯をする。シャワーを浴びる。晩ごはんを作る、そして食べる。歯を磨く。寝る。



繰り返す、繰り返す毎日。
そんな中に、少しづつの楽しみと自分のやりたいことを足していく。
そして、日々は単調に繰り返しながらも私の世界を広げ、いろんな色と音と香りに染めていく。

「明日がくる」というのは特別なことだと思う。
またあの朝焼けが見られる。思いっきり冷たい空気を吸い込んで、「ああ、この世界は今日もきれいだ。」と、そう思える瞬間がまた来ることが嬉しい。毎日、また一から今日をはじめられる。

この世界では、80億人の人たちが今日も人生の新しい一ページを書いている。80億の物語、喜劇も、悲劇も、ロマンスも、アドベンチャーも、全てが現在進行形で、この世界を織りなしている。
私もその一つ。今日人類によって書かれたストーリーの0.000000000125%が私のものだ。

日々は繰り返し、続く。
それを知っているから私たちは進んでいきながらも、休むことができる。
明日がくる。だから今日は、ここまでにしてコーヒーでも飲もうか。
そんなほんの少しの余裕と深呼吸が、私たちの心を温めてくれる。

機械の繰り返しとは違う。私たちの繰り返しは、とても有機的で、繰り返した跡は三次元に、四次元に広がっていく。

私が今見る全てのものは、先人の繰り返しの残した跡だ。そう、私たちは繰り返しながらも、繰り返すからこそ、前へ、上へ進んできた。

気がついたら19才になっていた。私が繰り返す日々が、数字になる。
年を重ねるというのは、わたしが今日も新しい1日をはじめているということ。今日は、6996回目。

今日の物語は終わりに近いから、そろそろ筆を休めようか。
明日がくるから、大丈夫。
そうやってこの先も、てくてくと歩いていこう。



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