卵子学会・胚培養士試験を受けてみた
※この記事は2023年度試験を受けた時の体験を元にしています。
あくまで個人が記憶を頼りにまとめたものや噂レベルの小話を入れたものなので、正式な情報は卵子学会公式サイトを参考にするようお願い申し上げます。
卵子学会とは
ART施設に勤務する培養士にはお馴染み。日本における培養士のメイン学会です。
エンブリオロジスト学会もありますが、あちらの方がややマイナーになります。
ざっくり説明すると
・卵子学会 →学会の偉い人は大学農学部の先生がメイン。
・エンブリオロジスト学会 →臨床検査技師さんたちが立ち上げた学会。やや小規模。学会の偉い人はART施設の培養士がメイン。年一でワークショップ、学術大会でスイーツ会やってたり楽しげ。
培養士試験とは
卵子学会が認定する民間資格です。国家資格ではありません。
正式名称は「生殖補助医療胚培養士」。
12月に試験の申し込みが始まり、1月下旬までに必要書類を提出。
書類審査で合格すれば、4月中旬の東京で行われる培養士試験を受験することができます。
注意点としては
・ART施設での1年以上の勤務が必要。
・大学の卒業証明書が必要なので、卒業大学へ郵送で手配するときは日数に注意。
入職〜試験当日までに勤務1年ならOK、ICSIまで習得してなくてもOK、というツッコミどころ色々な試験です。
ただ、民間クリニックであれば資格所持で求人・採用の際に優遇されたりします。
給与面でも資格手当ついたりするので、給与アップの意味ではとっておいて損はないかもしれません。
試験の応募条件を満たす
ざっくり言うと
・農学系、医学系の大学or専門学校卒である。
※あまりいないと思いますが、文系大学出身だと応募条件を満たせないと思います。知人の知人ぐらいの人で、培養士としては一人前なのに文系出身なので資格試験受けられないという方がいたそうな。
・ART施設で1年以上勤務。(試験日までに1年経ってればOK)
・卵子学会が認めた各種学会、セミナーのどれかに2回以上参加
です。
ちなみにメジャーな学会は「受精着床学会」「生殖医学会」「卵子学会」「日本産科婦人科学会(日産婦)」です。エンブリオロジスト学会は含まれないので注意。
培養士関連の発表が多いのは日産婦以外の学会です。オンデマンドで参加もできたりするので各学会のページを見てください。
詳しい条件は卵子学会公式サイトの培養士試験のページを見てください。
それから早めに卵子学会に入会しておきましょう。試験受けるには入会必須です。入会してない人はこの日まで入会、という決まりがあったとい思います。
試験の申請方法~受験の申請編〜
まず試験申請日当日の12時前までにパソコンかスマホにてスタンバイします。
12時になったら即申し込みです。入力項目は少ないのでささっと入力して送信。
先着順なのであっという間に締め切りになってしまうのが難点。
2022年12月は確か30分?くらいで締め切りになったかと思います。限定コスメの予約かよと思うほどです。
無事受付されれば後日、受付完了メールが来ます。申請した時の自動返信メールは必要書類に含まれるので削除せずとっておきましょう。
試験の申請方法〜必要書類を集める〜
・ART施設で1年以上勤務した証明書
・勤務施設がART認定施設として登録されていることを証明する書類
・自分が関与した体外受精・顕微授精・移植の症例数30件書く
・そのうち3つは患者背景、誘発方法、移植周期どんなだったか詳しく書く。
・学会、セミナーの参加証明書
・大学の卒業証明書、成績証明書
・履歴書・写真付き
などです。年末年始は休診=採卵止めるので時間に余裕のあるクリニックも結構あるので準備時間とれるかと思います。そうじゃないところは余裕をもって準備しましょう。
特に卒業大学が近くにない場合、卒業証明書の取り寄せが一番時間かかるので真っ先に用意した方が良いです。
全て用意ができたら書類をスキャンします。パソコンとスキャナーが必要ですが、コンビニでもできますしクリニックによってはスキャナー置いてたりするので可能であれば貸してもらいましょう。成績証明書は封筒を破いてOKです。それでいいんかと思う人は同志です。
スキャンしたら、そのデータを卵子学会の会員ページにアップロードします。
試験申請がちゃんと通っていれば、会員マイページに試験書類用のメニューができています。
期日までに書類データをアップロードし、書類実物を郵送で送れば完了です。
スキャンデータ送るのに実物も郵送って、二度手間なのどうにかしてほしい。
書類受付完了のメールが来たら、講習会料金3万円+受験料3万円=合計6万円を振り込みます。高いです。
振り込み期間が1週間程度しかないので、忘れないようにしましょう。忘れた場合失格です、とメールに記載ありなので容赦無く落とされると思います。
試験勉強
テキスト「生殖補助医療(ART)-胚培養の理論と実際」から出題されます。
されますが…WHOの精液検査の基準値はテキスト記載のものではなく、最新のものが出題されました。このテキスト2017年発行なので、筆者が試験受けた時点ではすで6年経過しておりだいぶ古くなっております。古い知識と新しい知見、どっちが正しいのかと迷いながら勉強することも。
個人的に気になるのが、非閉塞性無精子症(NOA)の精子回収率=クラインフェルター(KS)の精子回収率となってる点です。
現在だとNOA回収率3割程度、KS回収率5割程度です。NOAの中でもKSであれば、回収率は原因不明NOAと比較すると高くなるのです。
脱線しました。
試験ですが、おそらく長年やってきていて問題バリエーション無くなってきたため、重箱の隅をつつくような問題が多くなってきているのでは…と推測されることも。
つまり、すごく細かいところも出てくるのでテキストを隅々まで読み込むことが大切だと思います。私は理解しにくいところとかどうしても興味が持てないところを飛ばした結果落ちました。テキストちゃんと読もう!!
ちなみにこのテキスト、試験一ヶ月前に郵送で届きます。謎システム。届くずっと前から買ってる人結構いるので、持ってるのにもう一冊増えた…な事態になる人多し。メルカリで売りましょう。
試験の1ヶ月前くらいに受験票が届きます。
講習会
試験を受けるために参加必須の講習会が3月末〜4月上旬にあります。
コロナ禍のおかげでWebとなり、Webで視聴→小テストに合格すればOKというや形式です。
コロナ前は試験1日目の午前に講習会、午後から筆記試験という、鬼のような日程だったのでこの変更は素晴らしいと思います。
この講習会の料金が3万となっており、一度落ちて再受験の方は講習会参加が免除になっています。3万円って高くない??
代わりにあちこちのクリニック、大学病院の先生や培養士さんが精子〜卵〜ラボ業務について〜倫理〜臨床〜などの講義をしてくれて中々おもしろいです。
講義は1~6時限に分かれていてそれなりに疲れますが、1週間ほどの期限内にWebで視聴、小テストに合格すればOKなので地道に視聴していきましょう。
等速で視聴しないと不正扱いになると思いますが、一度等速で最後まで見てしまえば自分でカーソル動かして好きなとこで止めても大丈夫だと思いますので良きように。
試験当日
2023年度試験日程は
1日目 午後から筆記試験。
遠方組に優しい日程
2日目 9:00-16:00の間で15分面接です。面接時間は受験票に記載されてます。
遠方組は午前に設定されていることが多いという噂。
鉛筆、消しゴム、腕時計を持っていきましょう。私は忘れたので東京駅で買いました。試験会場の壁に時計があったので、腕時計はなくても大丈夫でしたが、壁時計ない部屋で開催もあると思うので持っていきましょう。
服装ですが、筆記試験時は私服でも可かと思います。オフィスカジュアルみたいな方も結構いらっしゃいました。
面接日はスーツの方がほとんどだったかと思います。
試験当日〜筆記〜
基礎40問、1時間
臨床60問、1時間10分 すべてマークシート形式
で実施されました。
選択肢が5つあり、
・正しいものor間違っているものを一つ選べ。
・正しいものを一つ選べ
といった出題形式です。受けた感想としては、選択肢が2つまでは絞れるけど最後が分からん、という状態でした。
2023年度の傾向としては臨床がかなり難しく、筆者としては実際の臨床と結びつく問題少ねえな…??という感想でした。正直、臨床で心折れたと言っても過言ではありません。卵子学会は難癖つけられたくなければ、ぜひ過去問公開してほしい。
試験当日〜面接〜
受付→広い部屋で待つ→面接部屋の近くまで連れて行かれる→順番まで待機
待機中は周りがシーーーーンとしているのでめちゃくちゃ緊張します。
お手洗いは早めに行っておきましょう。
面接は基礎・臨床・倫理担当の面接官が一人ずつ、合計3人の面接官対自分です。
わからない質問にははっきり分からない、と答えるのが賢明かと思います。
別の質問してくれたりします。質問は割と鉄板の内容(透明帯の役割、キャパシテーション、精子調整法、使用しているインキュベーターの種類など)が多く、捻った質問はされないと思います。
合格発表
5月末の卵子学会学術大会(土日開催)にて発表です。
現地にて合格者の受験番号が張り出され、Webでの発表は学術大会終了後の月曜に発表です。
2023年度は合格率50%台とかなり低かったようです。
2022年度は6割程度らしく、年々難易度は厳しくなっているとか。
6月中に合格者の元に認定証が届くそうです。
そして、合格しても落ちても筆記・面接の出来がどのくらいだったかの通知もあるようです。
落ちた方はその結果を目安に、次の試験を頑張りましょう。
お疲れ様でした。
ちなみに、試験委員会の先生たちがまとめたこんな文書もありますので参考にどうぞ
我が国における生殖補助医療胚培養士の現状 2015
最後に
試験を受けるタイミングですが、個人的には培養士3年目以降がおすすめ。
そのくらいだと業務も一通り覚えてきて余裕が出てくるからです。
試験受験費用がトータル10万円(学会参加費、試験会場交通費・宿泊費など込み)ほどかかってしまうため、受ける時は慎重になることをお勧めします。飛行機の距離の方はもっとかかるでしょう…
それから、テキストを読み込んで筆記試験さえクリアできれば合格できる試験のため、培養士の力量を反映していないのが問題かな…と思うところです。
落ちた身でこういうことを言うのは僻みにしか聞こえないので何ともですが、国家資格になる際には過去問の開示、試験内容の改善を期待したいところです。
これから受ける方は頑張ってください!!応援しております。