何度も観て、何度も思い出したくなる映画
『映画ファーストキス 1ST KISS』
鑑賞後、押し寄せてくる想いを言語化できず、モヤモヤしている。
作品として素晴らしいものであるが故に、ついつい、主演2人のことを深く深く考えてしまうのだ。
これは、『映画ファーストキス 1ST KISS』を観た私だから感じ、映画を鑑賞した友人たちと語らう中で少しずつ見えてきた、超個人的な感想を特に推敲もせず書き綴った、書き起こさなきゃスッキリしなかった、そんな言葉たち。
・夫婦のすれ違い
冒頭、硯夫妻の関係はもう、冷え切っている。
言葉も交わさないし、視線も合わせない、ただ一緒に住んでいる人。
その後に2人のプロポーズから、すれ違っていく様子がダイジェストのように提示される。劇中何度も繰り返しタイムトラベルする中でカンナは、何も知らない29歳の駈に夫婦生活の不満を漏らしたりもする。
カンナと一緒に駈に恋に落ちてしまった私は、あんなに真っ直ぐな、好きが溢れている、見ず知らずの女性が犬に絡まれているのを放っておけない駈が、そんな冷たくなっちゃうワケがないじゃない!!と思いながらも、わかってしまうのだ。2人の心のすれ違いを。少なくともカンナの方は。
なぜなら私は電気を消さずにいちいち指摘される側だから。
電気消してないよ。と言われる度に思うんだよ、あちゃーやってしまった、って。
申し訳ない気持ちにもなる。でもさ、段々責められてるみたいで腹が立ってくる。
その小さな積み重ねにカンナは卑屈になっちゃうんだ。
そしてカンナは駈が結婚することで、研究を辞めたことに負い目を感じている。
自分はやりたい仕事をやっているのに。
だからクリスマスのディナーに遅れてしまったことに、ごめんね、怒ってる?って言葉が出てくる。
駈が(恐らく)好きでもない草野球をしていることも、
仕事で忙しそうにイライラしていることも、もしかしたら自分のせいじゃないか、って思えてくる。
でもさ、これって駈からしたら、もしかしたら何の悪気もないことなんじゃないか、って。
見ず知らずの女性の顔が汚れていることを、本人に汚らしい顔と言ってしまう駈だもの。電気を消し忘れてたら、消し忘れてるよ、って伝えることは相手を責めてるつもりは、多分ない。
現にロープウェイの中でカンナが不満を漏らしたことに『そうなんですか?』なんて言ってる。
自分では間違ったことしてるつもりないのに、機嫌悪くなられたら、ねぇ?
ディナーにカンナが遅れたのも別に怒ってないんだけど、何回も怒ってる?って言われたら、怒ってないって!!ってそれに腹が立ってくる。
なのに草野球で約束を破った、なんて前のこと掘り返してくるから、エアコンつけっぱなしだったよ、なんて言いたくなってくる。
洗濯はカンナの担当だったのかな。でもカンナが忙しそうだから、せめて自分の分だけでも、って思ったのかも。
カンナは電気消されるのとか嫌がるから、きっと自分の物を洗濯されるのは嫌だろう、って。
もしかしたらベッドを別にしたのも、ホントに優しさだったのかもしれない。
違うかな?私、駈に恋してしまったから、駈を擁護しちゃってる?
でもこの作品で言いたかったのってそういうことだよね。
同じ事象も見方が変わったら、全然違う風に見えてくる、ってこと。
相手を思いやったつもりの行動が、相手には真っ直ぐ届かずに穿って捉えられてしまう。
そんな積み重ねが15年、幸せだった2人(チュッチュってキッスシーンが頭から離れません…)を変えていったのかなぁーって。
・駈の残された15年
駈に恋をした私が、色々考えて洩れ出た言葉が
カンナちゃん、ズルい。
全てを知った駈は結果を変えるより、残された15年を宝物のように大切に大切に過ごそうと決めた。
劇中何度かカンナは何も知らない駈に、結婚生活の不満をぶちまけて、駈はきっとそれも踏まえて15年を過ごした。
でもさ、2人がすれ違っちゃったのって駈のせいだけじゃない。駈→カンナの不満だってある。
柿ピーの柿の種が好きな自分とは違うカンナのことを好きになって、でもだからこそ相容れない部分があってズレていって。
全てを知った駈はそのズレもマルっと愛していこうと思ったんだ。
カンナは結婚生活の不満をぶちまけていなくなって、何も知らない29歳で駈と出逢ったカンナは、自分をマルっと包み込んでくれる駈の優しさの中で暮らしていたのかな。
そう思うと、駈の愛の何と大きいことよ…
どんな想いで15年を過ごしていたのか。
限りある時間だと実感しているからこそ、できたことなのか。
カンナちゃん、ズルいよ。
私、カンナちゃんに嫉妬しているよ。
でもね、本当はわかってる。
何気なく過ごしている私たちのこの生活だって、限りあるものなんだ。
なくなってからじゃ遅いんだ。
夫婦関係に限らず、相手に対して敬意を持って、大切に丁寧に関わること。それだけで世界が変わるんだ。
自分が変われば相手も変わる。
何に対してもマイナスを見て嘆くより、愛情を持った眼差しで見ることで、自分も幸せに暮らせるんだ。
誰もが知っている、気づいている、当たり前だけど、忘れている、大切なことを思い出させてくれる、そんな優しくて柔らかくて、切ない物語。
・追記
私がこの映画を観て受け取った主題は上記の通りなんだけど、その他友人と話したり、他の方の感想を見て雑感を。
・仲が冷め切った夫を亡くすより、幸せに過ごしている大好きな夫を亡くした方が絶対カンナはツラい。
でもそれは幸せな喪失感なんだろうか。
・カンナは結婚生活の中で、何度もやり直したい、こんなハズじゃなかった、私じゃなかったら…って思っていたハズ。
最初のタイムトラベルは『餃子を焼く前に戻りたーい』がトリガーだったのかもしれないけど、カンナの奥底にあった『戻りたい』が15年前へ誘ったんじゃないのかな。
・家族を残して、知らない人を助けます?彼は私より見知らぬ人を優先したんですよ?と言ってたカンナ。こんなの駈への想いがまだ残ってるに違いないじゃない。
でも離婚を選んだ彼ら。
そんな駈に『選ばれなかった』と思っている今の自分に、若き日の駈は『離婚したくないよ』、『君にまた出逢える未来を選びたいよ』と言ってくれる。それはあんな風に泣いちゃうよ。空虚な心が満たされていくよ。
・29歳のカンナに出逢えば、44歳のあなたに会えるんでしょ?ってさ、29歳のカンナからしたらちょっと…
ちゃんと29歳のカンナと恋をしたの?
タイムトラベル前の2人のラブストーリーを観たい気持ちがムクムクと。
でもそれで一本作れちゃうよね。
あれ?ほぼほぼカンナ側の雑感だな。
駈贔屓といいながら、ちゃんとカンナに感情移入しているぞ、ワタシ。