だって”好き”が絶対だから。
好きなものができると、その対象で頭がいっぱいになる。
中学生の頃、ASAYANというオーディション番組をよく見ていた。ナインティナインと永作博美がMCを務める、モー娘。や鈴木亜美など、当時の人気アイドルを輩出したオーディション番組だ。
CHEMISTRYが結成されるキッカケとなった男性ボーカリストオーディションが行われ、最終審査まで残った中にATSUSHIがいた。その流れで、後日ATSUSHIがデビューすることになったグループ、EXILEのライブパフォーマンスが番組内で行われた。見て直感的に、好きだと思った。そこからCDのプロモーション等でEXILEの音楽が流れる度に、なんとなく気にする日々を送るようになった。
当時の自分は、地元の駅裏にあるゲオによく出掛けていて、ある日、EXILEの1stアルバムが目についた。普段CDを買うことは殆どなかったのに、その日はどうしても欲しくなって購入した。帰ってビニルを剥がす。中にはCDと歌詞カード、おそらく初回特典のステッカーが入っていて、VICTORのCD/MDコンポですぐに曲を聴き始めた。
通しで聴き始めてすぐ、3曲目の恋愛曲『fallin’』に心がざわついた。
元々バラードが好きなのでメロディーラインに惹かれたのもあるし、楽しいだけじゃない恋の切なさを歌う歌詞に惹かれたのもあるし、なによりATSUSHIと共にボーカルを担当していたSHUNの歌う声に、内側からうわぁぁぁぁぁって何かが上がってくるような感覚があって当時の自分にはとても衝撃的だった。少し高めの声。甘さのある優しい声。透き通った声。一音一音を発する声がどれも好きで仕方なかった。
元々EXILEを知るきっかけになったATSUSHIよりもSHUNの声にとても惹かれて、そこからわたしはSHUNの声を追い掛け始める。
高校2年生の時に発売された3rdアルバムには好みのバラード曲が多く収録されていて、買った日に3周して聴きながらSHUNの歌声について、当時友達2人と回していた交換日記に勢いのままにこんなことを書いた。
「やばい。耳が幸せすぎる」
「やばい。声からフェロモンが出てる」
友達がそれに対してどうコメントしたかは覚えていない。
1stアルバムを購入して以来、2nd以降もアルバムが出る度に全部予約して発売日と同時に購入して貪り聴くようになった。聴き進めるうちにSHUNの声だけでなく、音楽番組で目にするSHUNの歌う姿、SHUNが歌う曲の世界観が表現されたMV、SHUNの周りにいる人たちとSHUNの関係性といったものにまで興味の幅は広がっていった。特に、SHUNがメンバーやスタッフ、音楽番組のMCと楽しそうに談笑している姿には、SHUNという人が生きている世界の幸福さを感じられるようで、勝手に自分も幸福な気持ちになった。
(その点でいうと『carry on』のMVは最高に良い。メンバーみんなが砂浜を全力疾走したり、大笑いしていたりで、より素に近い姿で楽しんでいる姿を見ることができて、とても身近かつ多幸感に溢れている。ニコニコで観れるよ)
初回限定版のCD特典として付いてきたMVが収録されたDVDは日常的に流しっぱなしとなり、曲ごとに見られるEXILEというグループの曲の世界観や、そのMVでしか見られない彼らの姿をごくごく自然に堪能しつづけた。
(『real world』は好き。謎なとんでも野球している彼らが、なぜかとてもカッコいい)
当時のわたしはCDを買い、MVを見て、とうとうEXILEを脱退しソロ活動を始めたSHUN=清木場俊介を追い掛け、彼の詩集(学生には高価な1万円)を買うまでになった。詩集が手元に届いた時に生まれた感覚は、既に中身がどうこうではなく、SHUNが生み出したナニカ、SHUNから分離したSHUNの一部を自らの手にできた喜びと満足感でいっぱいだった。
これが、自分の中の"好き”が初めてスパークした1番印象的な記憶。
今でも日々を過ごす中で、いきなり「あぁ!これ・・!!」と好きを好き以上に振り切って一気に沸騰させてくる好みど真ん中のナニカに出会うことがある。
好きって暴力的じゃない?
それを目の前にしたら、自分が何がどうであっても「好き!」という気持ちだけに脳内を支配されて、感覚器官も支配されて、自分なんて簡単に奪われて自分の中が、”好きなものを好きという感情”でいっぱいになってしまう。
だけど苦しいわけじゃない。好きに支配されるということは、自分の中にあるとても純粋な「好き」が余すことなく使われているということで、それ自体は大変だけどとんでもなく幸福だ。好きを目の前にしたら、自分の中にある自分を縛る思い込みやこだわりや「自分は◯◯だから」といった謎のポリシーなんてちっぽけなもので、何も太刀打ちできない。ただ好きしかない。好きへの完全降伏。私は好きと共に生きる。
結局のところ、人の中で1番強いエネルギーを持っているのは”好き”という気持ちだと思うし、それ以外のものなんて圧倒的な好きに出会った瞬間、何も意味を成さなくなる。だからこそ、私は日常から自分の基準を好きに置いて好きを摂取し続けているし、自分が好きだと感じるものを集め増やしていくことにも余念が無い。だって好きが絶対だから。
ここまで書いてきた文章を読み返すと我ながら気持ち悪い。
だけどそれでも、
「私はこれが好き」
そう言って語れるものがある人生に、私はとても満足している。