ある1日のショートショート。
目覚ましアラームをつけないで、自然のままに目が覚める朝が好きだ。
窓の外から聞こえてくる車の走る音、カーテンの向こうに感じる日の光。数時間前にはもう動き出している世界に遅れて枕元のスマホに手を伸ばす。
時刻は10時少し前。SNSやらチャットツールの通知をぼんやりとしたまま確認して、忘れていた体温計にも手を伸ばす。口の中に入れて数秒放置。測定終了音が聞こえて数字を見る。
「36.53℃」
ごく平均的な数字をアプリに記録して、抱き枕がわりの白いキツネのぬいぐるみを脇に抱え、また布団をかぶる。まだ起きたい気持ちじゃない。もう少し、この状態に飽きるまではここにいたい。
世界はもう動いていても、私はまだ動きたくない。
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