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ノーベル賞連発のイオン透過性について #00073

 細胞膜の膜として主成分はリン脂質二重膜ですが、光も通さないほどの強い隔壁です。そんな膜をイオンが通過できるのは、イオンを通過させる孔(ポア)を形成するイオンチャネルが存在するからです。これによりイオン電流が発生し、細胞は電気現象を引き起こすことができます。では、いったいどのようにして特定のイオンだけが通過できるようになっているのでしょうか。(小野堅太郎)

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 一般的にTVやYouTubeで動画を見る「チャンネル」とイオンを通過させる「チャネル」は、英語の「channel」に由来するので、同じものです。しかし、生物学では「チャネル」と書きます。職業病で小野は「チャネル」としか言えません。「channel」は狭い水路を示す言葉です。電気生理学者たちが実験結果から「細胞膜を特定のイオンだけが通過できる通路があるに違いない」と考えたわけですが、その概念を他者に伝えるために「channel」という言葉を当てはめたわけです。

 過去に活動電位に関する動画解説で詳しく話していますが(下記note記事参照)、ホジキンとハクスリーにて細胞膜が1000分の1秒レベルでイオンの透過性が変化することが明らかになりました(1952年)。この二人が1963年にノーベル賞受賞するころには、「チャネル」と言語化された概念は科学界で広がっていましたが、「ホントにそんなメカニズムが存在できるの?」と疑問を持つ科学者もいたわけです。1976年、。ネーアーとザクマンの二人は、後に「パッチクランプ法」と呼ばれる革新的実験法の原型を使って「チャネル電流」の記録に成功します。この二人もまた1991年にノーベル賞を受賞しています。分子生物学の発展から「イオンチャネルたんぱく質」の遺伝子およびその機能の確認により、現在の「チャネル」は概念ではなく、細胞に存在する確固たる物質として使われるようになりました。

 上記のnote記事では、動画クイズの答えとして「イオン選択性のメカニズム」を解説しています。今回の解説動画は、それを動画化したものです。1998年にマキノンがカリウムイオンチャネルの三次元構造を報告し、「イオン選択性」の謎が解き明かされました。2003年に、水チャネル「アクアポリン」を発見したアグレーと共にノーベル賞を受賞しています。リン脂質二重膜は光を通さないぐらいですから「水」も通しません。しかし、多くの細胞は浸透圧により形態を変えますし、赤血球に至っては滅茶苦茶に形が変わります。そういったことから、イオンだけでなく「水チャネル」の存在も疑われていたわけです。これらの発見により、個々人の多様性である変異によりチャネル構造の変化が様々な疾患に関わっていることがわかってきました。現在は、コンピューター内での分子モデルを使った薬物設計により新規治療薬の開発が加速しています。また、今後は人がデザインした新規のチャネルも生まれてきており、実験に応用されています。

 この動画でわからないことがあれば、おおよそ前2つの動画で説明しています。必要に応じて復習しながら楽しんでください。

00:46 チャネル=チャンネル
02:36 イオンチャネルと水チャネル
06:56 イオン電流
08:40 イオン選択性の仕組み
13:16 電位依存性の仕組み
18:04 質問タイム

補足・訂正

 下の2記事(動画)も参照してください。

動画クイズの答え

 答えは「TRPV1チャネルとPiezoチャネル」です。神経生理、特に体性神経系電気生理学を専門とする研究者全員が、「まだ、ノーベル賞をもらえないのか!?」と思っていた二人が受賞しました。ぷにぷにアザラシさんがnote記事でかなり詳しい内容を公開されていますので、小野からの詳しい説明は不要かと思います。是非ご覧ください。


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