実験器具の洗浄と乾燥 #00100
バイオ系実験室での実験器具の洗浄と乾燥についてまとめます。特に大学で実験を始める学部学生と大学院生は必ず目を通してください。実験器具の取扱いは実験の基本です。(小野堅太郎)
1.洗浄の前に
実験の予定には、必ず片付けの時間も入れてください。使用した器具をきれいに洗浄し、乾燥、そして保管する必要があります。ほとんどが共有の器具ですので、自分が洗ったものを他の人が使うことがあります。共有の実験室でみんなが安心して実験できるよう、個々人がキチンとした器具洗浄を行う必要があります。
とはいえ、実験がおしたり、急な用事で洗浄を後回しにすることがあります。その際は、ほったらかしにせず、廃液後に水道水で予洗いし、水道水を張ったトレイに漬けておいてください。後で戻ってきたときに、洗浄しましょう。
器具洗浄の基本は、中性洗剤での洗浄、蒸留水でのすすぎ、乾燥、保管の4ステップです。洗剤は家庭用の中性洗剤なら何でも構いません。スポンジなどでしっかりこすり、汚れや油分を洗い落としてください。乾燥には乾燥機(50℃、2時間)を使いますが、メスシリンダーは自然乾燥でないといけません。動画では最後にスライドショーで保管方法についても説明しています。器具ごとにやり方が異なりますので、しっかり覚えてください。
2.ビーカー、フラスコおよびビン
一般的なガラス実験器具であるビーカー、フラスコ、薬液ビンの洗い方は共通です。スポンジにて中性洗剤でしっかりと外側を洗浄してください。ビーカーはスポンジで内側を洗いますが、フラスコと薬液ビンは手が届かないので専用の洗浄ブラシを使います。
十分に水道水で洗剤を洗い流し、最後に蒸留水ですすぎます。精製水(MQW)までの精度は不要です。
これらの器具は乾燥機に入れます。ビーカーは逆さまに置き、フラスコと薬液ビンは横に置きます。乾燥機は50度に設定し2時間作動させます。
3.薬さじなど
薬さじや小瓶、スターラーなどは、スポンジにて中性洗剤でしっかりと洗い、十分に水道水で洗剤を洗い流し、最後に蒸留水ですすぎます。乾燥機にはそのまま入れるのではなく、金網の上に置いて、金網ごと乾燥させます。
4.ロートと試験管
ロートは基本的にスポンジで洗いますが、管部分の内側はブラシが通らないので流水で十分洗浄する必要があります。試験管の内側は専用の細いブラシでしっかりと洗浄します。試験管の底は汚れが残りやすいのでしっかりと確認してください。
蒸留水ですすいだ後、ロートは口が広い方を下にして置き、試験管は乾燥器内の試験管立てに逆さまにして置きます。
5.メスシリンダー
さて、他と大きく違うのが「メスシリンダー」です。ビーカーやフラスコなどに目盛が付いていますが、「あくまでも参考値」であり、体積を測定するものではありません。しかし、メスシリンダーの目盛は体積を測定するための正確な目盛です。ですので、メスシリンダーの内容積に影響を与えるブラシや乾燥機を使用してはいけません。
動画ではヤラセで徐先生にわざと間違ってもらっています。しかし、意外にいくつかの研究室ではこれが守られていないようです。ではどうやって洗浄するか、を動画でしっかり勉強しておいてください。
6.頑固な汚れと取れない蓋の取り方
なかなか取れない頑固な汚れは、エタノールや重曹(もしくは希塩酸)を使って取ります。取れない蓋は、蓋の部分だけに熱いお湯をかけて温めると取れやすくなります。
いずれにせよ、実験前に器具の透明度を見て汚れていないことを確認してから、実験を始めてください。