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環境は実力、成功は成長ではない: 課題への取組み③

 何かを成そうと思ったら、戦略を立てないといけない。自分自身の知力と体力、周囲の助けを含めた環境資材を鑑みて、越えるべき壁、もしくは倒すべき敵とどう取り組むかを思考する。そうして成功した暁には、喜びと自信が待っている。(小野堅太郎)

 なーんて上手くいかないのがこの社会である。種々の計画、努力、策略を尽くしても越えられない壁は存在するし、勝てない敵には勝てない。たまに結果は努力量に比例して残酷な結末を迎えることもある。「失敗から学べる」とよく言うが、計画が悪かった、努力が足りなかった、策略が甘かった、という内容で終始すると、なぜ事前に計画をもっと練り努力しなかったのか、という一言で終わってしまう。失敗から学べることは「なぜ負けたのか」という自己反省ではなく、「なぜ勝者は勝てたのか」を分析することにある。

 自己反省は何も生まない。失敗から、自分はダメだと思い込んだとしたら、負の影響しかない。なぜなら自分なりに頑張ったのだから、成長しているのは確実なので自分を責めることは筋違いである。オリンピック選手がレース中にコケたりすると観客としては「あーー」となってしまうが、そもそもオリンピック選手に選ばれていること自体が凄いので、大したミスではない。運が悪かっただけである。オリンピック選手になることが目標であればすでに成功している。成功の上に成功を積み重ねれば、いずれ失敗は必ずやってくる。そもそも負けた者たちの方が圧倒的に多いのだから、負けた理由は無限にある。しかし、勝てた理由はそんなにない。

 では、なぜ勝者は勝てたのか。たいていの場合、「人、物、金」と「時間」である。「人、物、金」は「環境」と一括りにできる。環境が恵まれていたのだ。「時間」は巻き戻すことができないので、早く始めた者が優位に立つがサボればすぐに追い抜かれる。競争であれば、それぞれが取り組み始めた時点でスタートが切られており、努力を続けているのが前提となる。となれば、勝負を決する前に、この「環境」をいかに整えたかが「勝つ理由」となる。

 環境は「生まれ」など、はなから追いつけない格差が初めからある場合がある。賢い人はそこを考えて、はなから他の勝てそうな領域に移って勝負する。もしくは、現環境でやれることしかやらない。研究者をやっていると、そういう人に出会うことも多い。私の師匠の稲永教授は、そんな賢い研究者たちを「もったいない」と言っていた。本道にその人が取り組めば、研究はもっと盛んになるからだ。稲永教授は「無いなら作る、出来ないなら出来る状態にする」人だった。時間はかかるが、一緒にやっていて楽しかったし、夢を持てた。

 何が言いたいかというと「ダメな環境は変えられる」ということである。時間がかかるので初めは負け続けるが、続けていれば勝ちが見えてくる。結局は、環境こそ「実力」であり、環境は努力により成長する。環境に恵まれた人は「実力が高い」となるが、人や物、金を失えば実力が下がる。敗者は勝者の恵まれた環境を「実力」と判断し、自分の環境改善に向けて取り組めばいい。

 そして、いつか勝つかもしれない。その時が成長の終わりである。終わらない人たちもいる。スポーツ選手や棋士たちは、トップに立った後も仮想のライバルを目指して防衛を狙い続ける。しかし、いつか、世代は交代する。大抵の場合、多くの人がいつまでも勝てない。つまりは、一時的な勝者を含めて、全人間、敗者となる。

 冒頭に書いた「越えるべき壁、もしくは倒すべき敵」は、少なくとも「他者」ではなく、「自分の中」にある。競争して、他者と自分を比べてもあまり意味がない。過去の自分と比べることに意味がある。今の自分の実力(環境)は過去より良くなっているのか?良くなっていれば、成功である。自分を褒めないといけない。

 競争は、一時的なゲームである。長くやるものではない。若いうちは競争して、自分の力を養って、負け続けたらいいだろう。努力しない人より成長できる。勝つかどうかはどうでもいい。競争に疲れたらやめればいい。実力を維持して、あとは楽しむだけである。

若者諸君!みんな頑張れ!

年寄りたちよ、引退して人生を楽しもう!

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