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openAIの新プランとAI時代の「能力」格差について
openAIが月額200ドル(!)でo1モデルが使い放題の新プランを発表しました。
これはopenAIが自ら発した「俺はopenをやめるぞ!」宣言というべきもので、今後、AIアクセス権の差による個人の「能力」格差が本格的に広がっていく要因の一つとなるでしょう。
・前提:AI時代の「能力」観について
この稿の前提として、私はAI時代の「能力」についてこのようになっていく考えています
「個人の能力」 = 「素の能力」✖️「使えるAIの性能」✖️「AI活用能力」
この前提のもと本題へ進みます。
・chatGPTとo1
両者はいずれもopenAIが開発するAIですが、目標とするところが大きく異なります。ざっくりいうと、
chatGPT:よくある質問に高速で(それっぽく)答える
o1:新しい問い、難解な問いにじっくり取り組み(ちゃんと考えられた)答えを返す
・「ユーザーの問い掛け力」が問われる
なので、o1に関しては「ユーザーがそもそもo1に投げるべき問いを持っているか」という問題が生じます。
例えば「昨日買った商品を返品したいんですけど」とchatGPTベースのカスタマーサポートチャットに投げれば、顧客の求める答えを即座に返してくれるでしょう。
しかし、o1は同じ質問をされた時に
(商品を返品するとはどういうことだろう?)
(このお客様を満足させる対応とはいかなるものだろう)
(お客様が真に求めていることはなんなのだろうか)
(どうすればその要求に答えることになるのだろう)
(それは最終的に我が社の利益に繋げることが可能だろうか)
(そのために、どのような対応が考えられるだろうか)
(案1:⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎)
・・・などと熟考しはじめてしまうようなやつなのです。
(実際にそう動くかではなく、傾向の話として捉えてください)
一方で複雑で抽象度の高い問いを投げれば、「どこかで聞いた答え」しか返せないchatGPTに対して、o1はかなり練られた回答をすることができるようになっています。
つまり、o1は現場の最前線ではすぐに固まる無能者に過ぎませんが、例えば意思決定者の側に仕えれば強力な補助者・参謀ともなりうるということです。
もちろんo1は情報システム技術者としても相当優れています。高い能力をもつ開発者(人)とo1の組み合わせは、同じ人物が率いる部下数人のチームよりも優れた結果を出すかもしれません。
chatGPTが「普通の人が普通にやることを高速に補助・代行するAI」だとすれば、
o1のようなAIは「強者をさらに強化することに向いたAI」だと言えるでしょう。
・AIのアクセス権限による人材のランク分け
この違いに加えて、今回の高額プランの登場により、企業はどの従業員にどのAIへのアクセス権限を与えるかという選択を真剣に行うようになるでしょう。
既存の様々な権限の差に加えて、「どのランクのAIにアクセスできるか」という差が人々の中に生じることになります。しかも、最初に前提として述べたように、AI以後の世界においては
「個人の能力」 = 「素の能力」✖️「使えるAIの性能」✖️「AI活用能力」
となりますから、AIが進歩すればするほど、アクセス権の有無が個人の「能力」格差を果てしなく拡大していくことになります。
もう少しこの状況が続けば、より強力でより高価なAIが次々に登場し、強いAIにアクセスするための費用は、一般的な所得の個人がちょっと頑張れば捻出できるという金額をあっという間に超えてしまうでしょう。
また、掛け算ですから、素の能力のすこしの差も大きく拡大されることになります。
そうなれば、強いAIは「選ばれた組織」の「選ばれた人材」だけがアクセスできる「特別な武器」ということになります。
アクセス権限獲得争いに敗れた人材が以後に挽回することは非常に難しい、あるいはほとんど不可能ということにもなるかもしれません。
まぁ、いずれopenAIの企業目的であるAGIの開発がなれば、強者もクソもなくなってしまうのでしょうが、せめてそこに至るまでの過程をもう少しのんびり楽しませてくれないものかなぁ・・・。
今朝、新プラン発表のニュースを見ながら思わず「うわあ」と声を出してしまった僕はこんなことを考えておりました。