消えた村の伝説
序章
深い山奥にある小さな村、名を「霧ヶ村」と言った。この村は古くからの伝説に包まれており、外部からの訪問者はほとんどいなかった。
村は常に濃い霧に覆われ、昼間でも薄暗い雰囲気が漂っていた。
村人たちは口を揃えて「この霧は我々を守っている」と話していたが、何から守られているのかは決して語られなかった。
初めての訪問
ある日、都市部から一人の若い探検家が霧ヶ村を訪れた。
彼の名前は田中宏だった。
宏は古い伝説や失われた場所に興味を持ち、霧ヶ村の存在を知るとどうしても訪れてみたくなったのだ。
村に着いた宏は、村人たちが何かを隠しているように感じた。村人たちは彼を歓迎するものの、どこか不自然な笑顔を浮かべていた。
不思議な出来事
夜になると、宏は村の外れにある古い神社を訪れた。
神社には「山の神」を祀る石像があり、その石像はまるで生きているかのような迫力を持っていた。
宏が近づくと、突然霧がさらに濃くなり、視界が全く効かなくなった。慌てて引き返そうとしたが、道に迷ってしまった。
やっとのことで村に戻った宏は、村人たちが奇妙な儀式を行っているのを目撃した。
村の中央広場で、大きな焚き火を囲みながら、何かを唱えていた。
彼はその儀式の中心に置かれた古い書物を見つけ、それが村の秘密を解き明かす鍵だと直感した。
禁断の真実
翌日、宏はその書物を手に入れるために村の長老に会いに行った。
長老は彼の質問に答えることを拒否し、「村を去るべきだ」とだけ告げた。しかし、宏は諦めずに長老の家を出た後、書物を盗み見することに成功した。
書物には恐ろしい事実が記されていた。
霧ヶ村は古代からの呪いによって霧に覆われており、村人たちは定期的に「山の神」に生贄を捧げることで、村の存在を守っているというのだ。
もし生贄が途絶えれば、村全体が消滅してしまうという。
運命の選択
その夜、宏は村の中央広場に再び赴いた。
村人たちは再び儀式を始めようとしていた。
彼は勇気を出してその場に飛び出し書物の内容を村人たちに問いただした。村人たちは驚愕し、宏を取り囲んだ。
長老は重い口を開き、「今夜の生贄はお前だ」と告げた。
宏は全てを悟った。村の秘密を知った彼は、次の生贄として選ばれたのだ。逃げることはできなかった。
終章
翌朝、霧ヶ村の霧は一層濃くなり、村全体が深い静寂に包まれた。探検家の田中宏は、二度と姿を現すことはなかった。
その後、霧ヶ村は完全に消え去り、まるで最初から存在しなかったかのように地図から姿を消した。
そして、霧ヶ村の伝説はさらに深い謎と恐怖を伴って、次の探検家を待ち続けるのであった。