「お面の男」

ある女性が、仕事の関係でとある田舎の村に出張することになりました。
村には小さな宿しかなく、彼女はその宿に泊まることに。

宿の主人は親切な老人で、彼女を歓迎してくれましたが、一つだけ奇妙な注意をしました。

「夜中に外に出ないでください。
特に午前2時には絶対に外に出てはいけません。」

女性はその注意を聞き流し、部屋に入って休むことにしました。

しかし、夜中に目が覚めてしまいました。時計を見ると午前2時を少し過ぎていました。
好奇心に駆られた彼女は、外に何があるのか確かめるために部屋を出て、静かな村の通りを歩き始めました。

通りを歩いていると、遠くから足音が聞こえてきました。振り返ると、白いお面をかぶった男がゆっくりと近づいてくるのが見えました。

お面の男は無言で、彼女に向かって一直線に歩いてきます。恐怖に駆られた彼女は宿に戻ろうとしましたが、足がすくんで動けずにいます。

男が近づくにつれ、彼女はそのお面の下に何か異常なものを感じました。

お面の隙間から見える目は、まるで生気がないように感じられました。
彼女は必死に叫び声を上げましたが、声が出ませんでした。

突然、彼女の目の前が真っ暗になり、そのまま気を失いました。

翌朝、彼女は宿の主人の声で目を覚ましました。
彼女は宿の前に倒れていたのです。主人は深刻な表情で彼女に言いました。

「あなたが外に出たと聞いた時、まさかとは思いましたが…。
あのお面の男に出会ったんですね。

彼はこの村の古い伝説で、
午前2時に外に出る者を迎えに来ると言われています。
あなたが無事で本当によかった。」

その日、彼女はすぐに村を去り、二度とその村には戻りませんでした。

しかし、彼女の心にはあのお面の男の姿が焼き付き、
夜になると今でも時折思い出してしまうのです・・。