私の靴歴
革靴を自分で買ったのは、社会人になってから。渋谷のパルコで買ったバーガンディのイタリアのブーツが始まり。ふらっと入ったワシントン靴が出してる店でセールで半額になっており履いてみると足にピッタリ。それまでの革靴は履きにくいものという自分の理解を吹き飛ばす靴だった。まともな革靴を買ったことなかったが、店員さんにメルトニアンのシュークリームを定期的に塗ることを教えてもらい、一緒に買った。マッケイ製法のその靴は、一度底を張り替えて今でも大事に履いている。
雑誌をパラパラとめくっていると革靴特集。見たこともない革靴がずらっと並んでいてカッコいいなと思った靴は「靴の宝石 ジンターラ 」と書かれていた。自分の想像を遥かに超える値段が書かれており、「こんな靴履く人いるんかいな?」と思った。それでも自分の頭の中にはいろんな革靴があることは記憶に残っており、セールのシーズンにたまたま訪れた場所で、次の出会いがあった。その場所は新宿伊勢丹メンズB1F。靴界の聖地。日本のナンバー1靴売り場といっても過言ではない場所だ。なんとなくその場所へ入ったが、恐ろしいほどの熱気で、次々と靴が売れていた。店員さんを捕まえるのも一苦労。こんな店は初めてだった。当時の伊勢丹は靴が床にばーっと置かれていて、みんな必死の形相で試着していた。私も「これは買わないと!」と思い試着をする。ここで出会ったのがトリッカーズのカントリーサイドゴアブーツ。ゴムは新品でピカピカで履くのに一苦労。履くと足首をゴムが締め付ける。脱ぐのも一苦労。誰もかまってくれないので、履いたり脱いだり一通り行い、なんとか店員さんを捕まえ、サイズがこれでいいか確かめる。店員さんも忙しく、あまり構ってくれないが、まあ良さそうだと教えてくれた。こんなに脱ぎ履きするのが大変な硬い靴を買うのかどうか、しばし一人で迷ったが、何しろ周りが祭りのようで、靴が飛ぶように売れていたので、私もこの機会を逃すまいと購入した。何度か履いたが異常に硬く、「こんな重くて疲れる靴は履けないなぁ」と思いながら時折履いていた。20年近く経った今、自分の足にピッタリとあっている。革質も最高。おそらく伊勢丹のバイヤーの目が素晴らしいのであろう。他のトリッカーズと比べても数段素晴らしい革だと思う。トリッカーズは多くのモデルや別注を手がけているが、革質はピンからキリまである。私の経験で言うと別注モデルによっては本当に革質が低いことがあるので注意した方が良い。おそらく別注元が原価を下げるために、質を下げたものを発注してるんじゃないかなと思う。トリッカーズは革靴初心者が通る道だと思うが、靴を良く知ってる人も大好きな靴だ。カントリーブーツは奥が深いとヒシヒシと感じさせてくれるブーツで、私も大好きだ。最初の履き心地は硬いので本当に良くないのだが、履いていると本当に自分の足にあってくる。最初に買ったカントリーブーツは実はハーフサイズ大きく、それも原因で歩きにくかったものが、今はベストなんじゃないかと思うくらい気持ちよく履ける。これも今でも大切に履いている。
しばらく時が経ち、同じくらいの値段の靴をいくつか試した。一つ上の靴がだんだんと欲しくなってきていた。そんな時に目に入って来たのが、今まで見たことのない輝きを持った靴だ。いろんな靴雑誌を見るとどうもコードバン という革で作られたオールデンという靴らしい。「すごいカッコいい靴だなぁ」と思った。当時日本では、オールデンのコードバン靴は約10万円くらいの値段をしており、「さすがに靴に10万円は高いなぁ、だけど欲しいなぁ」と思いながら過ごしていた。ある時靴のブログを見ているとアメリカに行けばほぼ半額で手に入ることを知った。これは!と思いニューヨークに行くことにした。ニューヨークは元々行ってみたかったのでちょうど良かった。ニューヨークでは、特にどの店で買うかは決めてなかった。アメリカのデパートに行けば買えるかなとデパートに行ってみるが、置いてない。そんなものかと思い、適当に観光していた。自由の女神観光に出かけた帰り、バスから外を見てると「Alden」と「Sale」いう張り紙が見えた。「おおお、ここだ!」と思いバスを降りてその店に向かった。「Stapleton」というお店だった。店の中に入ると1番奥の方にオールデンが置いてあった。バーガンディと黒のプレイントゥとチャッカブーツがあった。私は心に決めていたバーガンディのプレイントゥを手にして試着したいことを主人に伝えた。主人のおじいちゃんがオールデン のスケーラーを持ってきて私の足を丁寧に測ってくれた。初めての体験でドキドキした。おじいちゃんは私のサイズを持ってきてくれて履かせてくれた。鏡に映る自分の姿を見ながら「うん、ピッタリ!」と思い、思わずニヤニヤした。店に入ってから10分くらいで買うことを決定した。レジで買う時におじいちゃんに「シューツリーはいらないのか?」と聞かれた。こんな高い靴買ったから、そんな余裕はないなと思い、「いりません」と言って靴だけを買ってそそくさと店を出た。店を出て近くの公園に座ってひと休みした。当時はまだiPhoneの出る前で、靴を抱えてしばらくボッーと周りを眺めていた。そこでふと思った「シューツリーは必要だ!間違いない」と。すぐにお店に戻り、オールデンのシューツリーを買った。初めてのシューツリーだった。大事にスーツケースに入れて持って帰った。クリームを入れて、アメリカのホテルによくあるボールペンを使ってシワ入れの儀式を行なった。靴を履いて歩いてみると、その履き心地に感動した。革靴ではなく、スニーカーのような履き心地。そして、その鈍く輝く深いバーガンディも自分の好みに合っていて最高の靴を手にいれたと喜んだ。この靴は私の靴狂いを決定づけた。今でも大切な勝負靴だ。私の靴の旅はまだまだ続く。
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