ありがとうエピソード小説①『街角の小さな感謝:バスケットボールを拾う』
まえがき
本小説は事実を元にしたフィクションです。
私の元に届いたありがとうエピソードを小説化したものになります。
本小説の元となったエピソードはこちらです。
>>>ありがとうエピソード1『バスケットボールを拾う』
エピソード主は、あとやくさんです。
それでは、ありがとうプロジェクトの小説をお楽しみください。
あとやくさんの話:バスケットボールを拾う
①キッカケ
今日もいつもと変わらないただの日常を過ごしていた。
いつもの道、いつもの街並み。
普段通りに、いつも通りに、仕事から帰る。
ただ何となく街を歩いていた。
そしてただ、何となくSNSを開いて眺めていた。
すると一つの投稿が目に留まる。
それが「ありがとうプロジェクト」
元々何か新しいことを始めてみることが好きな私は
「何となく面白そうだな」
と思いつつ、プロジェクトの詳細を確認する。
プロジェクトでは、毎日SNS上で「ありがとう」と言葉にする習慣を身につけ、感謝の意識を高めることが目的とされていた。
②最初の一歩
「感謝の習慣?よくわからないけど、まぁ、とりあえず参加してみるか」
SNSでコメントするだけだし、損をするわけでもない。
何かが変われば儲けもんくらいの感覚で参加してみることにした。
ありがとうプロジェクトをやっている”ふたひい”という人の固定ポストに
「ありがとう」
とコメントを残すだけ。
>>>ふたひい@ありがとうプロジェクト
「どれどれ。”ありがとう”っと。これだけで良いのかな?」
しばらくすると、他の人達からいいねやコメントが付いた。
「あとやくさん、参加してくれてありがとうございます。」
なんかちょっとむず痒さを感じた。
「ありがとうと言われるのって、改めて意識すると、ちょっと恥ずかしい。でも、悪くないな、この感覚。」
私が、これまで感謝の言葉を全く意識していなかったことに気付いた瞬間だった。
不思議と
「そんなちょっとした小さな変化でも、積み重ねることで、自分の心に良い影響を与えるのではないか?」
と思えた。
③日々
「今日も”ありがとう”っと。はい、投稿完了。」
日を追うごとに、
「ありがとう」
の言葉を発することが当たり前になり、私の心にもポジティブな変化が広がってきた・・・ように感じなくもない・・・いや錯覚かな?
「毎日ありがとうと発する習慣を身につけただけで、本当に何か変わるのか?」
最初こそちょっと刺激があり、ワクワクしていたが、当たり前になったからこそ、変化が良く分からなくなっていた。
④バスケットボールを拾う
そんなある日、私はまたいつものように、普段通りに街を歩いていた。
公園では元気いっぱいに遊ぶ子供たちの声が聞こえる。
何となくそんな光景を目にしながら歩いていると、子供達のバスケットボールが私の足元に転がってきた。
ボールを拾い上げると、子供たちが走ってきて、一人が
「すみません、ボールお願いします!」
と笑顔で言ってきた。
私は何も考えず自然とボールを返す。
すると、他の子供達も揃って
「ありがとうございます!」
とお辞儀をしてから、元の場所に戻っていった。
その時、私は
「私はこれと言って何もしていないのに、ありがとうだって。なんかむず痒いな。初めてありがとうプロジェクトに参加した時のようだ。」
・・・・・
「あぁ、そういうことか。ありがとうプロジェクト。」
私は、日常の中にある小さな「ありがとう」に気付いた。
今までただの日常の一環として受け流していた感謝の言葉。
今まで存在していたけど、受け取れていなかった小さな感謝。
そこに気付ける自分を発見した。
そんな小さな出来事ですら受け取ることができると、心の中に優しい光を灯してくれることに気付いた瞬間だった。
心が震えた。
「さて、明日も頑張るか。」
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