【高校物理】電気分野⑤「コンデンサ」 <大幅増補改訂>
【コンデンサ】その1
「平面電荷分布の作る電場 ガウスの法則」
(講義(動画あり))
この講義では,積分を駆使して電荷が一様に分布している平面の上下の電場の強さを求めるのですが,この議論が難しいのであればとりあえずは「ガウスの法則」を使って求めても構いません。
ちなみに大学物理では,
「クーロンの法則」は「ガウスの法則」に取って代わられます。
この講義内容の動画もつくりました。参考にしてください。
【コンデンサ】その2
「ガウスの法則」(問題)①②
関西大学後期日程(2020年)&
慶應義塾大学医学部(2016年) 過去問解説
「ガウスの法則」は一応,どの教科書にも載っています。
しかし,太字になっていなかったり,欄外にかかれていたりと,
その扱いはかなり小さいのです(巻末索引にない場合も…)。
ガウスの法則は,点電荷でなくても成り立つ法則で,
その適用範囲はクーロンの法則を超えています。
対称性のよい電荷分布のつくる電場は,
ガウスの法則を用いれば簡単に求められます。
【コンデンサ】その3
「1枚極板・2枚極板」(講義)
どの教科書を見ても,コンデンサは2枚極板からはじまります。
𝑸=𝑪𝑽 のコンデンサの基本公式,電気容量の式,
(一様)電場の式,静電エネルギーの式,こんな感じでしょうか。
あ,そうそう,合成容量の式(直列接続,並列接続)も,
必ずと言っていいほど紹介されていますね。
私はこの展開に疑問を持っています。
これでは,コンデンサをつくっていく過程が見られないので,
極板間にはたらく引力の式や,静電エネルギーの式が,
公式の丸暗記になってしまい,実感をもってとらえられないのです。
コンデンサの極板のひとつが接地されていると何が起こるのか,
電池は一体何をしているのか(どういうはたらきがあるのか),
それらの疑問にすべて答えられますか。
【コンデンサ】その4
「静電誘導とコンデンサ」
立命館大学後期分割(1998年) 過去問解説
(動画あり)
一様電場中に極板2枚を重ねて置いた場合,
上側と下側にどんな電荷が誘導されるか。
これは,コンデンサの公式を覚えているだけでは対応できない問題です。
離して置いた2枚極板(コンデンサ)の各極板の上下に蓄えられる電荷を
「静電誘導」と「電荷保存則」から導いていきます。
ツイートの最後に,
「2枚極板コンデンサのまとめ」を添付しておきました。
2枚極板の基本のすべてがここにあります。
また,この問題には解説動画があります。
ツイートとは少し異なるアプローチも紹介しています。是非!
この問題解説の動画もつくりました。参考にしてください。
【コンデンサ】その5
「3枚極板・極板間引力」(講義)
3枚極板になっても,やるべきことは変わりません。
基本は,「平面電荷分布のつくる電場」です。
その本質が分かっていれば,「キルヒホッフ第2法則」が立てられます。
さらに,「電荷保存則」を連立します。
この講義では,
「アース(接地)」の意味,
そして「導線でつなぐこと」の意味も確認しています。
【コンデンサ】その6
「誘電体挿入・エネルギー収支の式」(講義)
岡山大学(1994年) 過去問解説+考察
私の YouTube動画 「エネルギー収支の式 完全版」に寄せられた質問
「コンデンサに誘電体を挿入する問題のエネルギー収支の導出をしたいのですが、運動方程式とコンデンサを含む回路の回路方程式の2式はどのように立式すればよろしいでしょうか。よろしくお願いします」
に答える形で,以下のツイートをしました。
「小問問題 → 解説」を繰り返すという初めての試みです。
岡山大学の問題を解きながら,エネルギー収支の式の使い方を確認して,
最後の <考察> で,最終的に上の質問には答えられたかな,
と自分の中では思っています。
【コンデンサ】その7
「4枚極板・金属板の引き抜き」
河合塾 第1回東大即応オープン(2014年)
問題解説
模擬試験から,正答率の低い問題を1問。
配点は,
Ⅰ(4点):導き方1点,電場2点,静電エネルギー1点
Ⅱ(8点):(1)導き方2点,答え1点,(2)導き方3点,答え 各1点
Ⅲ(8点):(1)導き方2点,答え 各1点,(2)2点,(3)2点
平均点(全国平均)は,5.6点/20点 です。
他の問題が,力学 7.7点,波動 6.4点 なので,最も平均点が低い大問です。
「中身の見えるコンデンサ問題」は,
やるべきこと(電荷保存則&キルヒホッフ第2法則)が決まっている人は,
手が止まりません。
この問題を電気容量の式や合成容量の式を使って解く人がいます。
それはほとんど「思いつきの答案」。
思いつかなかったらアウトです。この違いに早く気づいてください。
無限遠方から見たら,この系がどう見えるか,
ということを意識すると問題が簡単に解けることが多いです。
「俯瞰的な(鳥瞰的な)視点」は物理にも有効です。
そして,中身が見えても見えなくても,
コンデンサに関しては「やるべきことが同じ」という視点も重要。
【コンデンサ】その8
「面電荷密度」(講義)
「面電荷密度」に紙面を割いている参考書・問題集はあまりありません。
しかし,この物理量は使えます。
その意味および電荷保存則の立て方をこの講義で押さえていきましょう。
そして実際に入試問題で使い方を確認してください。
電気容量(静電容量)については,その定義を押さえておいてください。
コンデンサに蓄えられる電荷を求めてから全体の電気容量(合成容量)を求めさせる問題において,「面電荷密度」は威力を発揮します。
合言葉は「合成容量の公式は最後の手段」です。
【コンデンサ】その9
「誘電体挿入・面電荷密度」
山口大学(1988年)<改題> 過去問解説
この問題では,誘電体を挿入します。
考え方は金属板のときと同じですが,
今回も「合成容量の公式」を使わず解いてみましょう。
(合成容量を使った解法は 補足 で示しました)
電池がつながっているときには,
誘電体が入っている部分と入っていない部分の電位差は同じです。
すなわち電場も等しくなります。
しかし,誘電体内部では誘電分極が起こっているので,
電場は弱められるはずです。
その仕組みを考えていきましょう。
【コンデンサ】その10
「導体板挿入・面電荷密度」
東京工業大学(1995年) 過去問解説
複雑そうに見える回路でも,
問われるのは,電荷,電位(差),エネルギー・仕事(熱),力 です。
したがって,立てるべき式は,
・電荷保存則
・キルヒホッフ第2法則
・エネルギー収支の式
ということになります。本当にこれだけです。
思いつきは必要ありません。地道に,立式して解くだけ。
この東京工業大学の問題では,
導体板が電極板から受ける「作用」(力) を問うています。
現象から攻めるか,保存則から攻めるか,
文字数制限があるので瞬時に判断しなければなりません。
【コンデンサ】その11
「導体板の移動と仕事」
防衛大学校(1987年) 過去問解説
誘電体や導体板の挿入はよく見かけるのですが,
導体板を電場に平行に移動させる問題はあまり見かけません。
その場合も問われるのはやはり,
電荷,電位(差),エネルギー・仕事(熱),力 です。
電池(電源)に極板が接続されているかどうかを確認して,
電荷保存則,キルヒホッフ第2法則,そしてエネルギー収支の式
を立てていくだけです。
【コンデンサ】その12
「ゴム板・金属板挿入」
生徒のつくった問題(2019年) 問題解説
私の高校3年生の授業では,
2~3人一組で生徒に作問をさせ,それを他の生徒に解かせる
という時間があります。
作問者は,問題解説・生徒からの質問受け付けまで行うのですが,
生徒とともに問題を解いている(生徒役の)私から,
問題に関するツッコミを浴びることになります。
たいていは,その問題のコンセプト,問題で扱った現象の応用例などを
私は聞くのですが,
私の質問に応えられる生徒が年々減ってきているように感じます。
(危機感を募らせています)
何が面白くて,何を受験者に伝えたくてその問題をつくったのか,
それ無しには作問はできないと私は信じているのですが…。
生徒のつくった実際の問題用紙・解答用紙はこちらになります。
【コンデンサ】その13
「加速度センサ」
京都工芸繊維大学(2012年)<改題>
過去問解説
一つひとつはそれほど難しくないのに,
全体的に見ると難しく見える問題というものが存在します。
この問題もそうです。
問題文を注意深く読むとそれほど難しい設定ではない,
ということが分かります。
「加速度センサ」という用語にもビビらないように。
誘導がしっかりしているので,それにのって解くだけです。
(実際の問題よりも誘導をていねいにしました<改題>)
この問題は,コンデンサを扱っているのに極板間引力を無視しています。
この条件を見逃してしまうとものすごく難しくなってしまいます。
問題文を注意深く読もう!
【コンデンサ】その14
「導体極板に働く力」
東京工業大学(2019年) 過去問解説
電気分野の問題に見えて実は力学の問題ということはよくあります。
この問題も前半は力学の問題です。
テーマは「つり合い点の安定・不安定」。
東工大らしい「グラフを選ぶ問題」が2問あります。
導体極板が電場から受ける力を考えるときは,
向かい側の電荷がつくる電場で,それは極板間の電場の半分であること
を問題文中で述べてくれていますが,
それは常識としておきたいところ。
【コンデンサ】その15
「極板の単振動」
京都大学(2013年) 過去問解説
その14と同様に,一見すると,電気分野の問題に見えますが,
実は力学の問題です。
やっていることは,
「力のつり合いの式」または「運動方程式」を立てているだけ。
ひとつ注意しておかなければならないのは,
バネが伸びているか縮んでいるか明らかでない場面があるということ。
そのときには,「伸び」または「縮み」を仮定して解きます。
【コンデンサ】その16
「スイッチ切り替え」
京都大学(2012年) 過去問解説
「近似」は京都大学を志望している受験生にとっては必須事項です。
近似を使うことでおおよその値を見積もれる人は,
物事を俯瞰的に見ることができるので,
例えば,実験における危険性などを予め回避することができます。
京都大学はそういう人材を求めている,ということなのでしょうね。
私は個人的には,
有効数字をちゃんと考えられることが
理系の人間にとって重要だと考えています。
【コンデンサ】その17
「無限回つなぎ替え」
東北大学(2018年) 過去問解説
スイッチのオン・オフを含めた電気回路に注目する視点,
そして全体を一つの物体系として,エネルギーに注目する視点,
さまざまな視点が必要となる問題です。
一つひとつていねいに見ていかないと解けません。
さらに,つなぎ替えても変化しなくなること(定常状態)を
数式でどう表現するのか,も考えなければなりません。
旺文社の全国大学入試問題正解は「基本的」と言っていますが,
「基本的」=「簡単」ではありません。
【コンデンサ】その18
「球形コンデンサ」(講義)
「その2」でも登場した「球形コンデンサ」です。
「ガウスの法則」を使う問題に慣れてください。
(対称性のある電荷分布には有効です)
特に,電位を求める問題に受験生はひっかかるようです。
「電位の基準」がどこであるかに常に注意をしてください。
(補足)では,内球を接地した場合の合成容量についても考察しました。
内球を接地する設定は問題集ではあまり見かけないので,
この問題を解くことで確認をしてください。
ツイート内で,
内球を接地したときのこの系の合成容量を求めています。
並列接続ということから,
2つのコンデンサの電気容量の和として求めていますが,
もっと簡単に求めることも可能です。
下の添付ファイルを見てください。
【コンデンサ】その19
「導体球殻がつくる電場と電位」
過去問解説 千葉大学(2010年)
「一様な電荷密度の球」
駿台予備校 第1回東大入試実戦(1993年)
千葉大の問題は,
どの問題も難問にならない程度に難しくしてあるのでおススメです。
なぜ「静電遮蔽」という現象が起こるのかの説明
を穴埋め形式でしていきます。
できあがった文章はそのままどこかに書き留めておこう。
コンデンサ問題の最後は,駿台の東大入試実戦模試です。
…気づきましたか?(笑)
ここまで「コンデンサ」の話を展開してきたはずなのに,
最後にとうとうコンデンサがなくなってしまいました。
【コンデンサ】< おまけ >
「水槽モデル」
上智大学 過去問解説(講義動画)
コンデンサの直列接続・並列接続には
どのような意味があるのでしょうか。
まずは,オーソドックスな解き方。
「電荷保存則」と「キルヒホッフ第2法則」の2本の式を立てる
だけで解けることを示します。
そして最後に,コンデンサを水槽に見立てて,
直列接続・並列接続・スイッチ切り替えの意味を探っていきます。
視覚的にとらえる面白さを実感してください。
以上です。
マナブ