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【高校物理】原子物理分野「原子核」

原子物理の「原子核」範囲の基本事項から学んでいきます。
具体的には「原子核崩壊」「原子核反応」「結合エネルギー」を扱います。

「原子核物理学(核物理学)の始まり」でグーグル検索をすると…
原子核の構造と性質,原子核同士の相互作用による核反応などを研究する物理学の分野。 1896年の H.ベクレルの放射能の発見,1911年の E.ラザフォードの原子核の存在の証明に始った原子核の研究は,粒子加速器および粒子検出器の開発・改善を経て実験的研究が発展をとげた。
< ブリタニカ国際大百科事典 >
というものが一番上に出てきます。

ラザフォードとソデイは1901年10月から1903年4月まで,カナダのマギル大学において,トリウムThとそれが崩壊(壊変)して生ずる原子核の放射能の原因を化学分析によって調べ,原子は放射線を放出することによって別の元素の原子に変わっていくことを発見しました。
ソディは,放射性元素の崩壊によって生成された物質中に化学的性質は同じで質量の異なる元素が存在することを見出し,それをアイソトープ(同位体)と名づけました。ギリシャ語の「同じ(アイソ)」「位置(トポス)」を組み合わせた造語で,化学的性質も原子番号も同じで質量だけが異なることを意味します。
 と,これまで私は授業などで言ってきました。
しかし,昨年(2021年)4月ネット上ではこんな記事が出回りました
「水素の同位体である重水素と酸素によって構成される水である『重水』は通常の水より甘い」
というものです。
化学的性質が異なる可能性が出てきました。続報に注目しましょう。

1.【原子核崩壊】(講義・例題)
  香川大学(2021年) ・早稲田大学教育学部
  (2020年) 過去問解説

「原子・原子核・原子力」(著:山本義隆 出版社:岩波書店)
という興味深い本があります。
私は,この本を「原子分野」の教科書にすればいいのに…と
個人的に思っています。その中から一部紹介しましょう。

初期の放射線研究で,放射性元素から出てくる放射線の量は
放射性元素の種類と量だけで決まることがわかっていました。
つまり放射線の強度が温度や圧力というような環境の物理的状態
には左右されず,また化合物が何であるのかという化学的条件にも
よらない
という事実が見出されています。
そして,一定量の放射性元素からの放射線の強度が時間とともに
幾何級数的に(指数関数的に)減少することも知られていました。

p.149,150 第6章 原子核について


2.【原子核崩壊】(実戦問題)
  東京大学(1995年) 過去問解説
  マナブ追加問題

「半減期」の公式は,指数関数です。
これは,放射性崩壊に限ったものではありません。
身の回りの現象には指数関数的に変化するものが多いのです。
例えば,
終端速度以上の速さで鉛直下向きに投げた物体の運動
(空気抵抗を受け,減速し,最終的には終端速度となる運動)
は,まさしく 𝒗-𝒕 グラフが指数関数型の変化をします。
(残存原子核数の時間変化 𝑵-𝒕 グラフと同様のグラフ)
もう一つの例は,
2つ目のツイートの「マナブ追加問題」を参照してください。

この東京大学の問題は,
半減期の公式を丸暗記しているだけでは対応できないものです。
逆に「放射能の強さ」を知らなくても,
問題文に説明があるのでどういうものであるかが分かります。
その場で考えて法則性を見つけ,それを利用して問題を解いていく。
東京大学は,この問題構成が非常にうまいと感じます。
(旺文社「’95 全国大学入試問題正解」の解説に書いているような
「近似式」などのテクニックは必要ありません。)


3.【質量とエネルギー】(講義・例題)
  長崎大学(1991年)・岡山大学(2003年)
  過去問解説

原子核の基本事項をまとめておきます。
「質量欠損」「𝑬=𝒎𝒄² の導出」「結合エネルギー」です。

「𝑬=𝒎𝒄² の導出」については,
「原子・原子核・原子力」(著:山本義隆 出版社:岩波書店) を
参考にしました。
この議論は「物理入門(現:新・物理入門)」(著:山本義隆)で
私は初めて見ました。
(教科書では,相対性理論とともにいきなり登場する)
𝑬=𝒎𝒄² が導出できることに,
当時高校3年生だった私は衝撃をうけました

(この本を読んだことで,私は「物理学科」を目指すようになった
のかもしれません。物理の全国偏差値30台だったのですが(笑))
注: PDFファイルの下を参照

高3の最後に受けた模試


4.【質量とエネルギー】(実戦問題)
 信州大学(1992年)・大阪歯科大学(1998年)
 過去問解説

質量とエネルギーの関係を,
・ 核子1個あたりの結合エネルギーのグラフ
・ 原子核の安定性
・ (統一)原子質量単位
・ 核融合と核分裂
をテーマ(題材)として考察していきましょう。


5.【原子核反応】(講義・例題)
  信州大学(2017年) 過去問解説

原子核反応(核反応)において,4つの量が保存します。
(講義)の中で確認してください。
さらに,「反応の 𝑸(反応熱)」についても押さえておきましょう。
具体的な核反応をあげ,
「反応の 𝑸 値」に様々な表現があることを確認しました。

ツイートの最後の(マナブ補足)で,
相対論的なエネルギーから,近似公式を使って,
「静止エネルギー+運動エネルギー」が導けることを示しました。


6.【原子核反応】(実戦問題) その1
  広島大学(1991年) 過去問解説

原子核の熱運動で核融合反応が起きるには10億度が必要…。
これは,地上(密度小)でこの反応を起こすには
これだけの温度が必要だということです。
密度が大きければもっと低い温度で核融合反応は起こります。
例えば太陽の内部は,1500万度です。

ちなみに,「ウルトラマン」の最終話に登場する
怪獣「ゼットン」の吐く「火球」は1兆度(笑)


7.【原子核反応】(実戦問題) その2
  大阪大学(1985年) 過去問解説

他分野との融合問題を解きましょう。
特によく出題されるのは,「力学」「波動」との融合問題です。
大阪大学や京都大学の過去問を解いていると,
そういう問題によく出会います。

この問題は,
全国大学入試問題正解(旺文社)では「難問」とされているものです。
ここでは,赤本(教学社)の解説を載せておきました。
教学社は,こんな難しい解説をしておいて,
(B)の問題を「やや難しい」と評しています(本気か?)。

以上です。
マナブ


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