
【高校物理】磁気分野⑦「電磁誘導」 <大幅増補改訂>
磁気分野で一番重要な現象「電磁誘導」。
入試問題では最もよく取り上げられるテーマです。
「電磁誘導」とは,導体棒やコイルに起電力が発生する現象。
この講義で,発電の原理を学びましょう!
基本的には,私がTwitter でつぶやいたものをまとめました
(たまにYouTubeの動画もあります)。
Twitter で1ページずつツイートを見ていってもいいですが,
その下にPDFファイルを置き,
問題と解説をまとめて見ることもできるようにもしておきました。
【電磁誘導1】
(講義1)誘導起電力の導出
(講義2)電磁誘導とエネルギーの変換
●●●(講義1)●●●
エネルギー的な考察も含めて,必要な事柄を網羅していきます。
添付ファイルの問題を解いて,講義動画を観てください。
この問題を解けば,
誘導起電力の大きさをエネルギー的に導出できます。
動画内では,異なる視点で誘導起電力の大きさを導出しています。
【電磁誘導1】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 10, 2021
(講義1)誘導起電力の導出
添付ファイル(3枚)を解いてください。4枚目は解答です。エネルギー収支により誘導起電力の導出をします(動画で解説をしています)。さらに動画内では,金属棒中の電子が受けるローレンツ力を考えることで誘導起電力を導出します。https://t.co/lZTfSTkFlY pic.twitter.com/SJ5jIKvQyc
●●●(講義2)●●●
電磁誘導の本質である「エネルギーの変換」を押さえておきましょう!
磁気・電気・力学が融合する瞬間をとらえてください。
(感動したとき用の)ハンカチの用意はいいですか?(笑)
【電磁誘導1】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 10, 2021
(講義2)電磁誘導とエネルギーの変換
動画を観てください。電磁誘導のエネルギー的な考察。「誘導起電力の仕事率」と「アンペール力(電磁力)の仕事率」が相殺することから,電磁誘導の本質は「磁場を介したエネルギーの変換である」ということができます。https://t.co/72MwgsKJBL
「 𝒗𝑩𝒍 公式」について
電磁誘導で「誘導起電力を求めよ」とあれば,
まずは下の (【電磁誘導1】で導いた)「 𝒗𝑩𝒍 公式」
で解くことを勧めます。

棒内部の正電荷が受けるローレンツ力の向きが電池の向き
(起電力の向き=電流を流そうとする向き)
この公式で対応できない問題は次の2つ。
・ ベータトロンの原理
・ 回路を貫く磁場が変動する問題
注: 「回転する導体棒問題」は何とか対応できます。
これについては後ほど【電磁誘導16】で扱います。
「 𝒗𝑩𝒍 公式」で対応できない問題は,
「ファラデーの(電磁誘導)の法則」で解きます。
(【電磁誘導8】以降の問題で扱います!)
【電磁誘導2】
(練習問題1)
一様磁場中,水平面斜面上を動く導体棒
マーク式問題です。
典型問題ですが,
最後の問5をスラスラ解ける受験生はほとんどいないと思います。
「誘導起電力の仕事率」と「アンペール力(電磁力)の仕事率」が
相殺することから,
電磁誘導の本質は「磁場を介したエネルギーの変換である」
ということができるのですが,今回の問題は,
相殺する事実をうまく利用すると計算が楽になります(問5)。
装置全体で考えると,
磁場自体はエネルギーを生んだり消費したりはせず,
変換を媒介する役割を持ちます。
即ち,化学反応における「触媒」みたいなもの
と考えていいでしょう。
【電磁誘導2】(練習問題1)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 11, 2021
一様磁場中水平面斜面上を動く導体棒
添付ファイル(4枚)を解いてください。選択問題ですが,電磁誘導をエネルギー的に理解していないと立式が難しい問題も含まれています。ひとつアドバイス。「選択肢をはじめに見ること」。選択肢から何に注目すべきかが分かります。 pic.twitter.com/sBxVBDzPBp
【電磁誘導2】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 11, 2021
(解答・解説①)
問5の「電流が導体棒に及ぼす力のする仕事率」というのは結局,「磁場が電流に及ぼす力(アンペール力)のする仕事率」と考えることができます。この装置(系)全体で考えると,アンペール力のする仕事(率)は出てこないのですが,ここではそれを求めよといっています。 pic.twitter.com/6v06h2lnaf
【電磁誘導2】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 11, 2021
(解説②)
問5 仕事率を定義どおり求める方法(解1)とエネルギー収支を利用する方法(解2)を示しました。(解2)に関しては,「誘導起電力の仕事率」と「アンペール力(電磁力)の仕事率」が相殺することを利用しています。迷ったら,テクニックではなく「定義どおり」に求めましょう。 pic.twitter.com/mi3P603eth
【電磁誘導3】
(練習問題2)
一様磁場中,波形レール上を動く導体棒
筑波大学(2014年) 過去問解説
レールの一方が波形でしかもサインカーブなら,
誘導起電力はどんな形で表されるのか,
「瞬間値(瞬時値)」という言葉に惑わされないように。
回路において,君たちが立てられる式は,
キルヒホッフの法則,一択です。
「位相のずれ」や「リアクタンス」など暗記する必要はありません。
ただし,電流は定義どおりに求められるようになってください。
【電磁誘導3】(練習問題2)問題①
— マナ物理 (@manabu_physics) June 14, 2021
一様磁場中,波形レール上を動く導体棒
添付ファイル(8枚)は筑波大学(2014年)の過去問です。前半部分で,誘導起電力の公式を導出し,導いた公式を使って波形レール上を動く導体棒に生じる誘導起電力を求めます。電位差ではなく,点P1の「電位」ですよ。要注意! pic.twitter.com/CarZTX3dtP
【電磁誘導3】(練習問題2)問題②
— マナ物理 (@manabu_physics) June 14, 2021
問題の続き(後半)です。「瞬間値(瞬時値)」という単語を見て,交流の問題だととらえ,「位相がπ/2進む」とか「遅れる」などという知識を持ち出す必要はありません。君たちができることはキルヒホッフ第2法則を立てること,電流を定義通りに求めることだけです。 pic.twitter.com/isHwXZLSFP
【電磁誘導3】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 14, 2021
東進の模範解答を見ると,問5では,コンデンサの容量リアクタンスを持ち出し,電流の振幅を決め,電流の位相は電圧に対して π/2 進むことから -cos型 となる…らしい。これらはすべて暗記? 暗記してないと手も足も出ない問題? う~ん,もはやこれは物理じゃない。 pic.twitter.com/diQ7eEOXyI
【電磁誘導4】
(練習問題3)
一様磁場中,導体棒2本 その1
神戸大学(2014年) 過去問解説
最近よく見かけるようになった問題です。
導体棒が2本になっただけで「もう無理!」と言ってしまう者がいます。
イヤ,あきらめたらアカンで。一つひとつ考えていけば大丈夫!
小問は,その直前の小問がヒントになっている可能性があります。
一つの物体にだけ注目するのではなく,系(システム)で考えます。
部分 → 全体 へ視点を移動させるのです。
【電磁誘導4】(練習問題3)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 15, 2021
一様磁場中,導体棒2本 その1
添付ファイル(4枚)は神戸大(2014年)の過去問です。今年(2021年)の大学入学共通テストでも出題された「導体棒2本」問題。力学的な考察,エネルギー的な考察も必要になってくる問題です。系(物体系)を意識しながら問題を解いていきます。 pic.twitter.com/FlZ5xjyu8O
【電磁誘導4】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 15, 2021
問3が誘導になっています。「運動量保存則」に気づくことはできましたか?(今年の共通テストもまったく同じ誘導でした)
「エネルギー収支」については後ほど詳しく説明します。ここではとりあえず,左辺は「系に供給される仕事(エネルギー)」だととらえてください。 pic.twitter.com/8d2p72gzvV
【電磁誘導5】
(練習問題4)
一様磁場中,導体棒2本 その2
結局は,
キルヒホッフ第2法則と運動方程式(力のつり合い)
を立てているだけ。
ツイートの中でも述べていますが,
導体棒のどちらの端が高電位かを調べる方法を載せておきます。
これは本当に受験生がよく引っかかるところです。
<導体棒 cd のどちらの端が高電位かを調べる方法>
1.導体棒 cd のみを考える(他から切り離す)
2.導体棒 cd を動かす
3.端cとdを導線でつないだとき,「導線」を誘導電流が流れる向きを確認
4.導線を c→d の向きに流れたならば,c が高電位(正極側)である
【電磁誘導5】(練習問題4)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 16, 2021
一様磁場中,導体棒2本 その2
前回に続いて「導体棒2本」問題です。
<導体棒cdのどちらの端が高電位か?の判断法>
1 導体棒cdのみを考える
2 導体棒cdを動かす
3 端cとdを導線でつないだとき「導線」を誘導電流が流れる向きを確認
4 c→dならばcが高電位(正極側) pic.twitter.com/nYNqMcWYAJ
【電磁誘導5】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 16, 2021
解説で 重力による位置エネルギーが入っていないことが気になりますか? (重力がした仕事)を右辺に移項して,「-(重力がした仕事)=(重力による位置エネの変化量)」と考えることも可能ですが,「重力がした仕事」と「位置エネの変化」を2重に入れないよう注意ですよ! pic.twitter.com/Fa6Oieglxa
【電磁誘導6】
(練習問題5)
一様磁場中,導体棒2本 その3
東京工業大学(2013年) 過去問解説
「導体棒2本問題」の総仕上げ。
【電磁誘導4】の神戸大学の問題に似ていますが,もう少し
【電磁誘導6】(練習問題5)問題①
— マナ物理 (@manabu_physics) June 17, 2021
一様磁場中,導体棒2本 その3
添付ファイル(8枚)は東京工業大学(2013年)の過去問。「導体棒2本問題」の総仕上げです! 回路全体をひとつの(物体)系とみて運動量保存則を導き,最後にエネルギー収支という流れは「その1」の神戸大の問題と同様。誘導にのろう。 pic.twitter.com/PVUa96dI8U
【電磁誘導6】(練習問題5)問題②
— マナ物理 (@manabu_physics) June 17, 2021
実は,実際の東工大の問題では「棒1にはたらくローレンツ力」という表現でした。私のツイートを遡っていただくと,この表現は誤りであることが分かると思います。ですので,「ローレンツ力」はすべて「アンペール力」と書き換えました(<改題>とした理由)。 pic.twitter.com/F7AwlnQALt
【電磁誘導6】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 17, 2021
立てるべき式は運動方程式とキルヒホッフの法則,そしてエネルギー収支。下のリンクは「エネルギー収支の式」を導出する動画です。まだコイルの性質(磁気エネルギーなど)を学んでない人は,コイルを無視しても構わないので,是非観てください。https://t.co/uw4RO0FZJc pic.twitter.com/g8wlj0ywm5
「エネルギー収支の式(完全版)」講義動画
電磁誘導の問題で頻出の「エネルギー収支の式」を導いておきましょう。
ここ20年分の大学入試問題から電磁誘導の問題だけを抜粋して
眺めてみると,
最後にエネルギー収支を考えさせる問題がほとんどでした。
本来はコイルについて学んだ後に考えるべき式なのですが,
ここで導出しておきます。
コイルをまだ習っていない人は,
コイル(素子)の部分を無視しても構いません。
最後まで観てください。
最後に導出された「エネルギー収支の式(完全版)」は覚えてください。
【電磁誘導7】<解説動画あり>
(チャレンジ問題)
一様磁場中,水平面上を動く導体棒
早稲田大学理工学部(2010年) 過去問解説
早稲田大学の物理は,60分で3問,
すなわち解く時間は1問あたり20分しかありません。
この問題を20分で解ける受験生はいないでしょう。
自分が解ける問題を瞬時に判断し,
制限時間内に解くのが難しいなら次の問題に移る必要があります。
すなわち,満点は目指してはいけないのです。
物理が得意な受験生は,捨てた問題に後ろ髪を引かれながら,
次の問題を解く辛さを味わうのです。
特に力学が得意な生徒は,
「解けるはず!」と力学問題に時間をかけすぎる傾向があります。
要注意です。
受験生にはもう少しゆったりと
(時間をかけて)解かせてあげればいいのに,
と早稲田大学の問題を見るたび,私は毎年思ってしまいます。
【電磁誘導7】(チャレンジ問題)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 21, 2021
一様磁場中,水平面上を動く導体棒
添付ファイル(4枚)は早稲田大学理工(2010年)の過去問。これは,早大の問題で生徒から質問が一番多いものです。この問題を20分で解ける受験生はいません。問7まで解ければ“合格”ですが,問8以降(特に問9)も考えてみてください。 pic.twitter.com/99wBRDvrz0
【電磁誘導7】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 21, 2021
(確認・解答・解説①)
うまく誘導にのってください。回路において君たちが立てられる式はやはり「キルヒホッフの法則」一択です。そして動く導体棒について立てられる式は,運動方程式(を解いた結果 a=一定 or 問題文に「等加速度」と書いてあれば,等加速度運動の公式)なんです。 pic.twitter.com/6YfKbvi305
【電磁誘導7】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 21, 2021
(解説②)
問8はなかなか解ききれる受験生はいないでしょう。けれど,解説を見てもらえれば分かりますが 無茶はしていません。問9は おなじみ「エネルギー収支」。問8が解けなくても 問9は解けます。
下の動画は,「エネルギー収支の式」の導出(再掲)。https://t.co/uw4RO0FZJc pic.twitter.com/nlIDVrKKkN
解説動画もつくってみました!
【電磁誘導8】
(講義3・例題)
「𝒗𝑩𝒍 公式」とファラデーの法則
筑波大学(1986年) 過去問解説
●●●(講義3)●●●
まずは講義動画を観てください。
「ファラデーの電磁誘導の法則」をまともに使える受験生が
ほとんどいないという事実に私は危機感を覚えています。
問題集を見ても,誘導起電力の大きさを求めるときには,
ー𝒅𝜱/𝒅𝒕 に絶対値をつけて,
起電力の向きは「レンツの法則」で求めているものがあります。
本来,「ファラデーの電磁誘導の法則」は,
誘導起電力の大きさと向きが機械的に求められるのですが,
そのことを強調している本が少ないのです。
具体的な入試問題(筑波大学の問題)で,
同じ問題を「 𝒗𝑩𝒍 公式」と「ファラデーの電磁誘導の法則」
の2つの方法を使って解いてみましょう。
【電磁誘導8】(講義3・例題)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 23, 2021
「vBl公式」とファラデーの法則
講義動画2本を観た後,添付ファイル(2枚)の筑波大(1986年)の過去問を解こう。余力がある人は,問2を「ファラデーの法則」でも解いてみよう!(ただし,問題文を注意深く読むこと)https://t.co/NEriJgtQ5Uhttps://t.co/YlmaksFixg pic.twitter.com/YYtV9svl9U
【電磁誘導8】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 23, 2021
問1 自由電子は電荷が負であることに注意。ローレンツ力の向きは正電荷と逆。フレミング左手の法則「右手」バージョン!
問2・3 磁場中にある導線の長さは時々刻々と変化します。
問4 エネルギー収支の式を導きます。磁場は仕事とエネルギーを媒介しているんやね。 pic.twitter.com/CsrQYTItF3
【電磁誘導9】
(練習問題6)
左右で異なる磁場中を動くコイル
共通一次試験(1989年) 過去問解説
2021年共通テストでは,
一次試験としては難しめの電磁誘導の問題が出題されました。
センター試験や共通一次をさかのぼってみると,
こんな問題を見つけました。
この年(1989年)は物理の全国平均が化学に比べて低く,
得点調整が行われたのですが,
おそらくこの問題の得点率も低かったと思います。
出題者の頭の中には「ファラデーの電磁誘導の法則」があったはずです。
問1(1)→(2)の流れを見れば明らかやね。
ですが,
「ファラデーの電磁誘導の法則」は符号ミスをする可能性がある
ので,私はまず「 𝒗𝑩𝒍 公式」を使用することを勧めます。
【電磁誘導9】(練習問題6)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 25, 2021
左右で異なる磁場中を動くコイル
添付ファイル(4枚)は共通一次(1989年)の過去問。この年,全国平均が物理53.5点 化学73.8点。物理選択者に著しく不利であるとして,次の謎の計算式によって物理の点数調整が行われたのです。
(調整後の点数)=48.8+0.512×(調整前の点数) pic.twitter.com/0NIdcbMDkw
【電磁誘導9】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 25, 2021
(解答・解説)
起電力の向き(誘導電流を流そうとする向き)が与えられているときに,符号も含めて機械的に誘導起電力を求められるようになっておこう! 解説の中でも述べていますが,基本的には「#vBl公式」です。「#ファラデーの電磁誘導の法則」を使用した解法も載せておきました。 pic.twitter.com/593iB6liN0
【電磁誘導10】
(練習問題7)
一様でない磁場中を落下するコイル
東京工業大学(2018年) 過去問解説
「エネルギー収支」は電磁誘導の問題では避けては通れないものです。
通常は最後の問題でエネルギー的な議論となるのですが,
この東工大の問題はいきなり1問目からエネルギー収支を考えさせます。
いや,
常にエネルギーのことを頭の片隅に置きながら
問題を解かなければならない,
と言った方がいいかもしれません。
【電磁誘導6】にもはっておきましたが,
下は「エネルギー収支の式(完全版)」の講義動画のリンクです。
是非!
【電磁誘導10】(練習問題7)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 28, 2021
一様でない磁場中を落下するコイル
添付ファイル(4枚)は東京工業大学(2018年)の過去問。いきなり1問目からエネルギー収支を考えさせています。コイルが落下している間,下の辺CDの方が辺ABより強い磁場を横切っていくことに注意すれば,電流の向きは自ずと決まります。 pic.twitter.com/t1ZAkZCl66
【電磁誘導10】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 29, 2021
(解答・解説)
エネルギー収支の式は,重力による位置エネルギーの変化量で考えてもいいのですが,解説では重力(外力)のする仕事で考えています。二重に入れないように,注意が必要。
(b)の解説では,反時計回りに流れる電流を i と定義して,キルヒホッフ第2法則を立てています。 pic.twitter.com/Af3pnlCmy2
【電磁誘導11】
(練習問題8)導体円筒中を落下する磁石
東京大学(2007年) 過去問解説
この問題,いや,この実験が好きなんですよね。
共通テストの試行テストでも取り上げられていました。
この実験は毎年生徒に見せています。
最後に「IV マナブ問題」も追加しておきました。
選択問題ですが,理由も答えよう(力学との融合問題。
私がよく使う手です)。
東京大学にはここまで出題してほしかった。
【電磁誘導11】(練習問題8)①
— マナ物理 (@manabu_physics) June 29, 2021
導体円筒中を落下する磁石
添付ファイル(6枚)は東京大学(2007年)の過去問です。この問題,好きなんですよね。実際に,円筒の上方から磁石の動きを見ると,「宇宙を感じます」(笑)
最後に「IV マナブ問題」も追加しておきました。選択問題ですが,理由も答えよう。 pic.twitter.com/OHrcAo2GeA
【補足】 ローレンツ力でレンツの法則を説明してみました。
【電磁誘導11】(練習問題8)②
— マナ物理 (@manabu_physics) June 29, 2021
+(補足)
東京大学の過去問の続き。Ⅰ(1)の解答は,どの問題集を見ても「レンツの法則」。ではレンツの法則が成り立つ理由は?と聞かれたら?
笠原邦彦さんなら「エネルギー保存則を破らないため」と答えるところですが,私は異なるアプローチで考察してみました。 pic.twitter.com/iSVB2NH0A8
Ⅱ(1)は様々な考え方があります。主な解答を2つ示しておきます。
ポイントは,
磁束が変化している時間に注目するか,
磁束が変化しているリングの数に注目するか,です。
Ⅱ(2)は,「エネルギー収支」。
今回も「重力による位置エネルギーの変化量」ではなく,
「重力のする仕事」で考えました。
【電磁誘導11】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 29, 2021
(解答・解説)
マナブ問題解説
磁石は等速度で落下している。リングに流れる誘導電流がつくる磁場と磁石の磁場との相互作用で,磁石に働く鉛直上向きの力が重力とつり合っている。リング(円筒)には,その力の反作用の力が鉛直下向きに働くので,円筒は磁石の重さの分だけ重くなる。 pic.twitter.com/A6ugFAVgVy
【電磁誘導12】
(練習問題9)誘導電流(うず電流)
関西大学(1989年) 過去問解説
レンツの法則を使う問題です。
私は,これから入試問題で,
このタイプの問題(「簡単にできる実験」の考察)
が増えていくと予想しています。
ただし,定性的に答える問題は基本的に難しいです。
この問題のポイントは「作用・反作用の関係」であること
も強調しておきます。
【電磁誘導12】(練習問題9)
— マナ物理 (@manabu_physics) June 30, 2021
誘導電流(うず電流)
添付ファイル(4枚)は関西大(1989年)の過去問。レンツの法則を使う問題。磁束変化を『妨げる』ような誘導電流が流れます。誘導があるので解けますが,定性的に答える問題は基本的に難しい。驚いたことに,(6)をカットしている問題集があります。 pic.twitter.com/3piMeyZezf
【電磁誘導12】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 30, 2021
(解答・解説)
(6)では「P1の磁場(上向き)と,近くにあるP2の磁場(下向き)がつながって,N極の真下では円板に平行な向きに磁場が形成される」という見方をします。「磁石の受ける力の反作用を円板が受ける」も重要!
私はこの(6)のような「別の角度からの視点」を大事にしています。 pic.twitter.com/jHStRKbgCj
【電磁誘導12】
— マナ物理 (@manabu_physics) June 30, 2021
(レンツの法則 実験動画2本)
① アルミニウム製のフタに触れないようにネオジム磁石を回転。手はフタを回している感触があるのです。「作用反作用の法則」
② 様々な素材(状態)の板の斜面,ネオジム磁石を滑らせるだけですが…。https://t.co/wW6l0hI1Rmhttps://t.co/RaMqaG94Fn
(6)では磁石の真下だけではなく,
その近辺の円板に生じた磁場を考えています。
「磁石の受ける力」は,間接的に磁石を回している手に感じられます。
レンツの法則の確認実験
「レンツの法則」の実験をいくつか。(2分程度の短い動画です)
さまざまな素材(状態)の板で傾斜をつくって
ネオジム磁石を滑らせるだけの単純な実験ですが,
それぞれの結果の説明ができますか?
元ネタはもちろん関西大学(1989年)です。
実験1 アルミニウム板にうず電流(誘導電流)が流れて…
実験2 アルミニウムと銅の電気伝導率(抵抗率)を見ると…
実験3 うず電流の半径が小さくなると…
< オマケ実験 >
「U形磁石に銅製円板」はよくある組み合わせ。
今回は「ネオジム磁石にアルミニウム製のフタ」。
フタに触れないように手を回転させます。
しかし,フタを回している感触があるんです!
「作用反作用の法則」なんやねぇ。
【電磁誘導13】
(講義4・例題)ベータトロン条件
横浜市立大学(1991年) 過去問解説
●●●(講義4)●●●
「ベータトロン」です。これは「 𝒗𝑩𝒍 公式」が使えない問題。
生徒が苦手としている問題ですが,
ワンパターンなので押さえるべき箇所は限られています。
(2)(b)の電場の強さを求めさせる問題が要注意です。
これを「電位の傾き」で求めている問題集が多いのですが,
それは誤りです。
詳しくはツイート(もしくはPDFファイル)を見てください。
【電磁誘導13】(講義4・例題)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 2, 2021
ベータトロン条件
添付ファイル(3枚)は横浜市立大(1991年)の過去問。4ページ目は解答。【解説】を読みながら,ベータトロンについて学んでいきましょう。最後に「ベータトロン条件」を求めさせる典型的な問題ですが,解説に不備のある問題集が多い問題でもあります。 pic.twitter.com/BkL2D7urFr
【電磁誘導13】(解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 2, 2021
(2)(b)の電場の強さを求める問題について
⇒ 求めようとしている電場(誘導電場といいます)は通常の静電場ではありません。なので,単純に 「電場の強さ=電位の傾き」という等式は立てられません。
ではどうしたらいいの?
「起電力=単位磁荷がされる仕事」で求めます。 pic.twitter.com/kObBTBIJxL
【電磁誘導14】
(練習問題10)電気量測定器
京都産業大学(1987年)<改題> 過去問解説
「電気量測定器」の問題。
いきなり初めて聞く装置が出てきます。
それだけでビビってしまう人がいます。
それを出題者はネラッています。
しかし,
「電磁誘導」の講義を読み(観て),例題・練習問題を解いて,
この問題までたどり着いた人は分かっていますね。
電気回路において、君たちができることは1つしかありません!
【電磁誘導14】(練習問題10)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 4, 2021
電気量測定器
添付ファイル(2枚)は京都産業大(1987年)の過去問です。「電気量測定器」です。え?! 知らない? 知らなくても大丈夫! 回路において,君たちができることはただ1つ。
「1回転」が分かりにくければ,「半回転」(コイルを磁場に平行まで回転)してみよう。 pic.twitter.com/Lq8qZD0XVw
【電磁誘導14】(解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 4, 2021
対応できましたか? 1987年(バブル期),このレベルの問題を このレベルの大学が出題していたということに驚きます。ただし,京都産業大は最後の磁束密度の数値問題までの問いを細かく分け,小問が7つ。さらに,コイルを半回転しかさせていません(その方が解きやすいやろね)。 pic.twitter.com/GLh5VVvx1g
【電磁誘導15】
(練習問題11)ソレノイドと輪
京都産業大学(1989年)<改題> 過去問解説
またまた京都産業大学の問題です。
相互誘導と超伝導体をテーマにしています。
途中から「考えさせる問題」に代わります。
条件をよく読んでください。
今回は解答欄(文字数制限)が示されていないので,
「どこまで答えるか」を考えながら,解いてみてください。
最後まで解ききることができますか?
【電磁誘導15】(練習問題11)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 7, 2021
ソレノイドと輪
添付ファイル(3枚)は京都産業大学(1989年)の過去問。はじめはよくある設定の問題。途中から「考えさせる問題」に代わります。そして最後の問5には,何と「超伝導体」が登場! 1989年かぁ,なるほど「銅酸化物高温超伝導」が登場した時期やね。面白い。 pic.twitter.com/kVhbPz5kNh
【電磁誘導15】(解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 7, 2021
当時の京都産業大は面白い問題が多い。
最後まで解けましたか? 記述式の問題を解く場合,「どこまで答えるか」という“問題”が生じます。「解答欄の大きさによる」というのが正解なのでしょうが,難しい問題です。解答・解説では,別解や応用問題など,情報を盛り込みました。 pic.twitter.com/QzING65l85
【電磁誘導16】
(講義5・例題)一様磁場中で回転する導体棒
●●●(講義5)●●●
一様磁場中で回転する導体棒に生じる誘導起電力です。
「vBl公式」でもいいのですが,
それを使うには少し工夫が必要です(別法として示しておきました)。
例題では,回転する導体棒の数が増えます。
実際に電流が流れると,
角速度を一定に保つため,力のモーメントを与え続ける必要があります。
導体棒にはたらくアンペール力,
そしてエネルギー収支の両面で解いてみてください。
【電磁誘導16】(講義5・例題)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 9, 2021
一様磁場中で回転する導体棒
講義の後,例題を解こう。一様磁場中で回転する導体棒に生じる誘導起電力の問題です。実際に電流が流れると,角速度を一定に保つために 力のモーメントを与え続ける必要があります。エネルギーの面からも,この問題を考えてみてください。 pic.twitter.com/Zg9FGUDoKh
【電磁誘導16】(解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 9, 2021
回転する導体棒に生じる誘導起電力は「vBl公式」でもファラデーの法則でもどちらで求めてもOK。
問2の解説では 次の2通りの解法を示しました。
1.導体棒にはたらくアンペール力から求める方法
2.エネルギー収支の式を利用する方法
「多角的な視点」を獲得してください。 pic.twitter.com/9rwLfZVuct
【電磁誘導17】
(練習問題12)
一様磁場中で回転するコの字型導線
東京工業大学(2016年) 過去問解説
一様磁場中で回転する導体棒(導線)の問題を1問解きましょう。
回転なので,力のモーメントと絡めてくる問題が多いです。
この東京工業大学の問題もそのひとつ。
ただし,エネルギー収支で解くことができる問題もあります。
【電磁誘導17】(練習問題12)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 11, 2021
一様磁場中で回転するコの字型導線
添付ファイル(4枚)は東京工業大学(2016年)の過去問です。
(b)には解き方が2通りありますが,(d)の解き方は一通りです。【解答・解説】でそのあたりの話を詳しく述べておきました。すべて解けた人も最後まで是非読んでみてください。 pic.twitter.com/Q27iFW8lyx
【電磁誘導17】(解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 11, 2021
(b)を私は「エネルギー収支の式」で解きました(赤本青本は「力のモーメントのつり合い」です)。「外力のする仕事率=電力(ジュール熱)」になるのですが,「誘導起電力のする仕事率」と「アンペール力のする仕事率」が相殺するので「エネルギー収支の式」には入ってきません。 pic.twitter.com/wp3XIekVrB
【電磁誘導18】
(練習問題13)
一様磁場中で回転する1巻き半コイル
慶應義塾大学 過去問解説
私の好きな問題です。
コイルにはたらく力(アンペール力)をどのように求めるか,
がポイントになってきます。
ビオ・サヴァールの法則から「直線電流のつくる磁場」を
導出したときに登場した「電流素片」(電流の微小部分)で考えます。
この問題を初見で解ける生徒は,私はちょっと尊敬してしまいます。
【電磁誘導18】(練習問題13)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 13, 2021
一様磁場中で回転する1巻き半コイル
添付ファイル(4枚)は慶應義塾大学の過去問(改題)。私の好きな問題です。この問題を初見で解ける生徒を,私はちょっと尊敬してしまいます。
問2(2)のヒント:電流の微小部分(「電流素片」といいます)がつくる磁場を考えます。 pic.twitter.com/wz5at4rDI9
【電磁誘導18】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 13, 2021
コイルに磁場からはたらく力は,積分を用いても求められますが,素片の 𝒚 成分の和となることを利用しました(解答図の 𝑰Δ𝒔 を電流素片といいます)。この問題は「交流の発生」につながるものとして使えます。(コイルとクリップとを使用した「クリップモータ」は有名) pic.twitter.com/TexehjoXsw
【電磁誘導19】
(練習問題14)
コンデンサ(コイル)と電磁誘導
東京電機大学(1995年) 過去問解説
誘導起電力を生じている金属棒に,コンデンサそしてコイルをつないだら,金属棒はどんな運動をするでしょうか?
コンデンサのとき,金属棒の運動方程式を立てると…面白い現象が!
【電磁誘導19】(練習問題14)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 14, 2021
コンデンサ(コイル)と電磁誘導
添付ファイル(4枚)は東京電機大学(1995年)過去問。誘導起電力を生じている金属棒に,コンデンサをつないでいます。金属棒はどんなふるまいをするでしょうか。
「マナブ追加問題」も用意しました。コンデンサの代わりにコイルにしたら? pic.twitter.com/cxluWZxSIc
【電磁誘導19】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 14, 2021
問3・4「加速度の大きさ」を求めるので,「運動方程式」を立てよう。“マトリョーシカ現象”は私の造語。なかなかいいネーミングやない?(笑)
問4の解説に「電流 𝑰」の向きの定義をしましたが,コンデンサに蓄えられる電荷の置き方と電流の関係は重要。問5も狙われます。 pic.twitter.com/srxYXWlcZi
【電磁誘導20】
(練習問題15)RC回路
東北大学(2002年) 過去問解説
「ファラデー(の電磁誘導)の法則」
を正確に(定義通り)使いこなせるかどうかを測る問題として,
私は利用しています。
レンツの法則で逃げてはいけません。
ファラデーの法則は誘導起電力の向きも教えてくれるのです。
問3と問5を本気で解いてみてください!
【電磁誘導20】(練習問題15)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 16, 2021
RC回路 問題①
添付ファイル(7枚)を解こう。東北大(2002年)の過去問です。問3で「電磁誘導の法則」をマトモに使いこなせる受験生はあまりいません(残念ながら)。旺文社全国大学入試問題正解の解説でも「レンツの法則」で誘導電流(誘導起電力)の向きを定めています…。 pic.twitter.com/r5AnXV7vCv
【電磁誘導20】(練習問題15)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 16, 2021
RC回路 問題②
問5 ここでエネルギー保存則を使う人がホンマに多いんやね。いやいや,違う違う。それは出題者の意図から外れていますよ。次の問6を見るとそれが分かります。
ここは…「外力のした仕事率」を定義通り求めるのです。すると,ある事実が見えてきます。 pic.twitter.com/KPMllqWAFH
【電磁誘導20】(解答・解説)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 16, 2021
問8は問題のある問題。「コンデンサの両端の電圧」とありますが,どこを基準とした電位差なのかが明記されていません(実際には,電流の正の向きも定義されていませんでしたが,私が付け加えました)。でも,諦めたらアカンよ。記述式問題,自分で定義して解き進めよう! pic.twitter.com/0rvV45T0Of
【電磁誘導21】
(練習問題16)問題のある問題
大阪大学(2014年) 過去問解説
電磁誘導の典型問題ですが,
途中で「あれ?!」と手が止まると思います。
「そのとき君ならどうするか?」という問題です。
今回は考えられうる別解をたくさん用意しました。
どの解法がしっくりくるか,検討してみてください。
ただし,このような問題は実際に入試問題として出題してほしくない
というのが,解いてみての(個人的な)感想です。
【電磁誘導21】(練習問題16)
— マナ物理 (@manabu_physics) July 18, 2021
問題のある問題
添付ファイル(4枚)は大阪大学(2014年)の過去問。
「問題のある問題」です。本番でこんな問題に出会ってしまったら,というシミュレーションです。大阪大学は2017年に出題ミスがありましたが,作問の粗さが目立ちます(いや,大阪大学だけやないか…)。 pic.twitter.com/jUN5Hvmz34
【電磁誘導21】(解答・解説)①
— マナ物理 (@manabu_physics) July 18, 2021
問5 「導体棒の運動方程式」とあります。加速度は α と与えられていますが,糸の張力が与えられていません。どのように糸の張力を消すか,がポイントになってきますが,それって物理でしょうか?
そして他にもミスが…。→ 次のツイートへ pic.twitter.com/cH16Aw9HqN
【電磁誘導21】(解答・解説)②
— マナ物理 (@manabu_physics) July 18, 2021
問7の前の「電池の消費電力」という記述,「これは何だろう?」と考えて,そこから先へ進めなくなってしまった受験生もいたのではないか,と想像します。そういえば,共通テスト物理にも「不正確な表現」がありましたね…。出題者の国語力が落ちているのでしょうか。 pic.twitter.com/bf1qzHU8Iv
以上です。また面白い問題を見つければ追加していきます!
マナブ