【病理学】弾性線維の染色法について
このアカウントでは二級病理検査士や臨床検査技師の資格取得を目標にされている方に向けて、ゴロや表など交えながらわかりやすさを意識して情報を発信しています。
今回は弾性線維の染色法についてまとめていきます。
現場でも癌細胞の脈管侵襲の評価などでしばしば染色しています。国試にも出題される重要な項目ですので復習していきましょう。
【弾性線維とは】
弾性線維は皮膚や肺、膀胱など張力や弾力が必要な組織に多くみられる線維です。特に大動脈や肺動脈は弾性線維があることで心臓における血液の駆出に伴う圧に耐えられるような構造となっています。
弾性線維染色を行うことで組織の病変や腫瘍の深達度、脈管侵襲、弾性線維の断裂など明瞭に観察することが出来ます。
【弾性線維のポイント】
▶主要成分はエラスチン蛋白質
▶皮膚、肺、膀胱、大動脈、肺動脈などに多くみられる
▶張力や弾力に優れている
▶支持組織の線維はすべて繊維芽細胞が合成している
支持組織の線維は物理的な性質や染色性の違いから、
膠原線維、弾性線維、細網(好銀)線維の3つに分けられています。
以前の記事で膠原線維についてもまとめていますので参照ください。
【弾性線維の染色法】
▶アルデヒド・フクシン染色
▶オルセイン染色
▶エラスチカ・ワンギーソン染色(EVG染色)
▶ビクトリア青染色(VB染色)
【ゴロ:弾力のあるアオエビ】
弾力のある(弾性線維)ア(アルデヒド・フクシン染色)オ(オルセイン染色)エ(エラスチカ・ワンギーソン染色)ビ(ビクトリア青染色)
【アルデヒド・フクシン染色ついて】
▶弾性線維・HBs抗原・膵臓ランゲルハンス島B細胞を青紫色に染める
▶塩基性フクシンを使用
▶膠原線維はライト緑で緑色に染まる
膵臓ランゲルハンス島B細胞のような内分泌細胞の固定にはブアン液を使用するのがよいとされています。今後固定液も解説します。
ちなみに、ライト緑は分子量が大きいため膠原線維のように細胞質構造が疎(荒い)なものを染色します。
ライト緑を使って分子量の違いで染め分ける染色法については、以前のパパニコロウ染色に関連がありますので、時間がある時に参照ください。
【オルセイン染色ついて】
▶弾性線維・HBs抗原を茶褐色に染める
▶オルセイン染色液に塩酸とエタノールが含まれる
オルセイン染色はB型肝炎ウィルスのHBs抗原を染色する染色法の一つです。
【HBs抗原を検出する染色法】
▶オルセイン染色
▶アルデヒド・フクシン染色
▶ビクトリア青染色
エラスチカ・ワンギーソン染色を除いた3つがHBs抗原を検出する染色法です。弾性線維のゴロと合わせて覚えていきましょう。
余談ですが、HBs抗原の染色をする際、3つの各染色液全てで塩酸と70%アルコール用います。二級病理試験では過去問で出題されています。
【エラスチカ・ワンギーソン染色について】
▶ワイゲルト染色とワンギーソン染色を複合した染色法
▶弾性線維、膠原線維、筋線維を染め分ける染色法
▶塩基性フクシン(レゾルシンフクシン)を使用している
【ビクトリア青染色(VB染色)ついて】
▶弾性線維・HBs抗原・軟骨基質を青色に染める
▶ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)との二重染色ができる
▶癌細胞の脈管侵襲などが観察でき、現場でも日常的に用いられる
ビクトリア青染色はHE染色の染色性を損なわないため私の検査室でもよく染色しています。
HEによる二重染色をした場合、核の色はヘマトキシリンにより青紫色となります。
今回は弾性線維の染色法についてまとめましたが、いかがでしたか?
弾性線維の染色法を覚えておくと、エラスチカ・ワンギーソン染色以外の3つのHBs抗原の染色法も一緒に覚えられますので一石二鳥だったりします。参考になれば幸いです。
【練習問題】
Q.塩基性フクシンを使用する弾性線維の染色法はどれか。
1.エラスチカ・ワンギーソン染色
2.ビクトリア青染色
3.チール・ネルゼン染色
4.オルセイン染色
5.PAS反応
答え.1
【解説】
3.チール・ネルゼン染色では石炭酸フクシンという塩基性フクシンを使いますが、抗酸菌の検出するための染色法です。抗酸菌は赤く染まります。
5.PAS反応に使うシッフ試薬には塩基性フクシンが含まれていますが、多糖類の染色法の一つです。
わかりやすかったり、ためになったよって方、スキボタンやフォローいただけると嬉しいです。これからもコツコツ配信していきます。一緒に頑張っていきましょう。