②志望校・併願校の決め方で大後悔時代
さて、ここまで私は「戦略のブレに注意しろ」「戦略のブレは最悪手」などと、さんざん戦略のブレをディスってきた。これほどまでに戦略のブレを目の敵にする理由はどこにあるのか。
決断が遅れる
動機や根拠が明確かつ具体的でないと、最善の打ち手が見つかるまでに無駄な手段を取りがちである。
動機と最善の打ち手の関係が分かる極端な例を挙げよう。慶應義塾大学経済学部を第一志望にしているとする。「経済学部に行きたい」という学部重視の動機であれば、併願校には経済学に強い大学を多く受験するのが良いかもしれない。また、「慶應義塾大学に入りたい。経済学部を目指す理由は看板学部だから。」という大学名重視の場合には、慶應義塾大学の全ての学部を受験するのが良いかもしれない。
このように、同じ大学学部を第一志望としていても志望動機は様々考えられ、その動機によって最善の打ち手は異なる。したがって志望動機が明確でない場合、効果的な戦略を立てることができず一時の感情に流されてその場しのぎの決断をしてしまう。そして気が付いたときには本来ならば最善であった戦略に必要な、出願・受験チャンスを逃してしまっているのだ。
受けて後悔
受験から1年以上がたった今でも、「あのときああしておけばよかった」「あの頃は東京大学を目指していたのに」などと、指定校推薦をいただいた事に対する感謝を忘れ、プライドを捨てきれない未練たらたらの文章を書いている。どうしてこんなにも心残りが残ってしまったのか。
断っておくが、FIT入試や指定校推薦が悪いわけでは断じてない。これらがなければ、今私は大学に通えていなかったかもしれないのだから。それでも後悔が残っている一番大きな理由は、「それぞれの入試の特色を理解せず、感情の向くままに出願した」からだ。
戦略をブレさせることのない筋の通った人間であれば、それぞれの入試について理解を深めたうえで取捨選択して第一志望に臨むはずである。ところが私ときたら「不合格」の恐怖のみに突き動かされ、手当たり次第に出願したのである。
そのなかでも指定校推薦は「専願」である。専願の入試方式というのは、合格をいただいたら必ずその大学に行かなくてはならない。大学側は「ここに行きたい!」という積極的な理由で来る生徒を募集している。すなわち合格=受験の終了だ。もちろんその特色を知らなかったわけではないが、その先にある「第一志望が受験できない」ということの重さを理解しないままに出願してしまった。
受けないで後悔
「第一志望が受験できない」ことで抱く心残りは、不合格に対する心残りとは明らかに異なる。後者は他人が決定することだ。客観的な数値で結果も出る。その意味ではまだ納得ができるかもしれない。一方前者は、受験で誰もが感じる「不合格への恐怖」「失敗への恐れ」に負け、自分からチャンスを捨てに行っている。受験していないのだからもちろん数値で結果も出ないし諦めもつきにくい。心残りとプライドだけが残る。まさに「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」を持った虎の誕生である。
これから受験に臨む諸君には、周囲からの評価や一時の感情に流されて戦略をブレさせて後悔してほしくない。専願の入試方式を選ぶのであれば積極的な理由で選んでほしいし、第一志望があるのなら「不合格の恐怖」に負けずそこに向かって突き進んでほしい。
ではどうすれば「戦略のブレ」を回避できるのか、次章ではそこを解説していきたい。
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