父・谷口京として伝えたい「人類は勉強する生き物なんだよ」
都心を離れて子育て
諸岡:今週は、谷口さん、お子さんがいらっしゃるということで、お父さんとしての視点についてお聞きしたいなと思っているんですけれども、今お住まいの場所って海がすごく近いんですよね?
谷口:はい、目の前が海のところに住んでます。こどもが2人いて、今5歳と3歳なんですけど、上の子が幼稚園に入るのに合わせて都心から引っ越しました。やっぱり自然が感じられるところ。季節の移ろいとか。もっとのびのびと子供を育てたいと思いましたねぇ。コロナ禍になってあんまり遠出とかできなくても、まあ、目の前が海なんで、カヌーとかSUP(Stand Up Paddleboat)に子どもを乗っけて海に出て行ったりとか。あと山もあるので、山ずっと歩いてハイキングしたりとか。
諸岡:なるほど、じゃあ本当に子育てがいちばんの目的で。
谷口:うん、その通りです。より良い子育て環境を求めて引っ越しました。
諸岡:お子さんができたことで、撮られる写真には何か影響はありました?
谷口:そうですね、さらにエモーショナルな瞬間を撮るようになったかな。子どもの幼稚園の写真を頼まれることがあって。卒園式のムービーとか。その時に園に行って、ちょっと子どもたちが園庭で遊んでるところとかを撮るんですけど。やっぱねえ、こっちが目がウルウルするぐらい子どもたちって光り輝いてるんですよ、本当に。後光がさすくらい、無・邪・気。邪気がないんですよね。そのピュアさに自分がすごく浄化してもらっているっていうか。
諸岡:また感じる部分が増えたような感じですかね?
谷口:そうですね。感性の幅が増えたかもしれませんね。
どうして勉強しなきゃいけないの?
諸岡:ところで、お子さんがもうすぐ小学生になられるかと思うんですけど。教科書でのお勉強が始まります。それで、「もうお父さん!なんでこれ、私勉強しなくちゃいけないの?」ってきかれたら、何てお答えになりますか?
谷口:どうして勉強しなくちゃいけないのか?まあ、僕は勉強嫌いでしたけど。でもやっぱり、勉強はやっぱり必要だな。それは、人類は、勉強する生き物なんじゃないかって。学ぶことによって成長して、進化してきた生き物だから、もう人間は勉強する生き物なんだっていう風に教えるかな。
諸岡:小学校の勉強っていうのは、それこそひたすら九九を覚えたりとか、修行のようなところはあると思うんですけど。
谷口:ある程度はやっぱり、暗記力とか暗記した九九とかって、生活に必要ですよね。
諸岡:そういうのってもしかすると、探究学習みたいな横断的な学習をしていくための、土台みたいなものを作っているのかもしれないなと、私は思っていて。
谷口:なるほどね。
諸岡:谷口さん自身はご両親になんで勉強しなきゃいけないの?って聞いたことってあります?
谷口:あると思うなあ。なぁんでそんな勉強しなくちゃいけないんだよって言い方したと思いますね。僕の父親は勉強できたみたいで、大学入って、一部上場企業、一流企業に入って。だから、学歴がやっぱり頭の中にあったみたいで、とにかく良い大学に入れっていう風にはずっと言われていて。いい大学に入って、いい企業に就職しなさいって。僕は多分この職業についたのも、それへの反発もあったのかもしれませんね。そのレールには僕は乗らないよっていう。
諸岡:今、ご自身が父親になられて、その時お父様がおっしゃってたことって、なにか共感できるところってありますか?
谷口:共感、できる部分もありますよ、もちろん。自分も大学で教員をやらせていただいていて。で、思うに、やっぱり高等教育に上がれば上がるほど、視野が広くなると思うんですよ。で、いろんな人と会う。なによりもやっぱり時間があって、その時間の間に、いろいろな知識を蓄えられる。あと、共通のバックグラウンドの仲間ができる。それは大きいと思うんですよね。社会に出てもそれは役立つと思います。
小学校のPTA活動、どうする?
谷口:PTAとか、諸岡さんどうされます?
諸岡:ははは、PTAもなんかいろいろ聞くんですよね。学校によってポイント制だったりとか。何かの活動をすると1ポイント溜まって、何ポイントたまるとそのあとやらなくていいみたいなのがあるらしいんですよね。
谷口:あぁ、基本的にはやっぱりやりたくないっていう・・・
諸岡:だと思います。
谷口:ですよね。そういう存在ですよね。
諸岡:そういうPTAとかはどうですか?積極的にって感じていらっしゃいます?
谷口:幼稚園ではやってます。幼稚園ではお父さんの会っていうのがあって、月に1回園庭を整備するんですけど。お父さんたちで他の北海道とか九州の園に視察に行ったりもするんですよ。そこでいいところを取り入れて、自分たちの幼稚園にどうしたら落とし込めるかっていうのを考えて、新たな遊具を設置したりとか。
諸岡:そんなに積極的に関わる園ってかなり珍しいですね。
谷口:まあそうですね。ありがたいですよね、そういうのは。小学校も、自分の子どもがどういう教育を受けてるかって知りたいじゃないですか。
諸岡:確かに。
谷口:どういう先生なのかって。その先生がどういうバックグラウンドで先生に至ったのかって知りたい人間なんで。でもそういうのて、難しくないですか?
諸岡:なかなか公立の普通の学校だとねえ。けむたがれちゃうかも・・・ってなっちゃいますよね。
谷口:でしょ?うーん。学校を、子どもの教育を任せる場じゃなくって、もっと一緒にこう、子育てに関わるっていうのかな・・・なんかそういうのだといいなって思いますね。
諸岡:うーん。
谷口:ま、授業参観とか運動会とかありますけど、そう考えると、PTAってなんか参加する価値があるのかなあ、とか、今からぼんやり考えていますけれども。
諸岡:すばらしい。
旅へ出る準備としての勉強
諸岡:海外にロケに取材に行く時って、前もってその地域のことって勉強されます?
谷口:やっぱりある程度しますよ!
諸岡:どんな感じでされますか?
谷口:どういう宗教、どんな民族、あと食べ物・・やっぱり食べるの楽しいし。あと、そうですねえ、音楽のこととか。まあ、一通り調べますね。あと歴史か。
諸岡:楽しそ〜な顔でおっしゃいますよね。
谷口:うふふ。でも、調べすぎないで、自分がそれまで持っていた知識で、びっくりするのも大好きですね。調べすぎないで。
諸岡:うん!
谷口:僕が体験した中で、アマゾンに行った時に、僕は、「ああ、アマゾンのこの密林では3日もたない」って思ったんですよ。歩いてると、案内をしてくる地元の部族の案内人が、こう・・・こんな、なんか苔むしたまあるい石っころみたいなのを拾って、それを鉈でパーンと割ると中から白い実が出てくるんですね。で、それを「食べろ!」と。「これを食べれば1個で1日もつから」って、いわゆるパワーフードですね。でも僕からしてみると、もうなんか・・・いろんな虫が蠢いている、密林の、地面におっこってる、謎のなんか、苔むしたクルミみたいのなんですよ。
諸岡:腐ってるんじゃないかって(笑)。
谷口:それを食べて「ああ、なんか水が飲みたい」ってなると、パーってツルを引っ張ってパーンってやるとそこから水が出てくる、水の出る木ってあるでしょ?あれをこう飲んで。で、彼らはそうやって、その知恵があるわけじゃないですか。で、そういうことって、また事前に勉強してっても、実際に自分で見つけらんないと思うんですよね。やっぱりそこで、現地の人と接して、生で実体験として教えてもらうからこそさらに、なんていうかなぁ、驚き・・・。あと、そうすることで地元の人にリスペクトというか。本当にリスペクトを覚えましたね。すごいな、この人たちって。
諸岡:そうですね。それこそ人間は勉強をする生き物、ですよね。
ストックフォトやスマホの普及…カメラマンという職業はどうなる?
諸岡:カメラマンのお仕事ってどうなっていくんでしょうね?
谷口:あの、カメラマンっていう職業は、おそらくAIにはとってかわられないかなと思います。
諸岡:ほう、といいますと?
谷口:やっぱりエモーショナル、感情でシャッターを切る。ただ単にシャッターを切るんじゃなくって、やっぱり写真家というのは心が動くから。人間、やっぱり感情がある生き物である以上、表現する職業については、AIに取って代わられないんじゃないかなと思います。ただ、どんどん淘汰はされていくでしょうね。例えば、写真もストックフォトで、ウェブ上の写真とか雑誌の写真とかでもストックで誰でも写真は買えるじゃないですか。
諸岡:そうですねえ。
谷口:スマホでいつでも撮れる。だから、何を撮るか、何を伝えるか、何を発信するか。やっぱり個性を出す。いかに自分の個性で表現をするかって大事になるかと思います。それはどんな職業だってそう思いますけどね。なんで、私だったら私の名前。やっぱり、この仕事は諸岡さんにお願いしたいよね、諸岡さんにナビゲートして欲しいよねって、あるじゃないですか?やっぱり自分の仕事、個性があるからこそ、それに対して仕事が来るんであって。はい。
諸岡:4週に渡ってたくさん、秘境のお話、教育のお話、聞かせていただきました。すごく面白かったです。ありがとうございました。
谷口:ありがとうございました。こちらこそ。
諸岡:また、いろんな旅の写真で、若者を海外に誘ってください。
谷口:はーい。ありがとうございます!
諸岡:どうもありがとうございました!
編集後記
全4回、人気写真家である由縁がわかる谷口さんのインタビュー、楽しんでいただけたことと思います。アマゾンの密林でのエピソードも谷口さんならでは。たしかに、ジャングルで生活するための知識は一朝一夕に身に付けられるものではありません。先人たちが学習を積み重ねて得た知恵、受け継がれてきた財産なのでしょう。そこにリスペクトの念を抱く谷口さんだからこそ写し出せる世界もあるのかもしれません。
「どうして勉強しなきゃいけないの?」
「だって、人は勉強する生き物だから。アマゾンに住む人たちはね・・・」
いつか、そんな風に子どもの問いに答える谷口さんの楽しそうなお顔が目に浮かぶようです。皆さんだったらどうお答えになりますか?動画、記事の感想なども是非お寄せください!
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