多言語教育の必要性と、それを実現する台湾の「許容力」
郭 麗蘭さんプロフィール:
日本へ5年間の留学経験があり、現在は台湾のロケーションコーディネーターとして日本メディアと多く仕事をしている。リサーチのプロであり、多彩な取材経験も持ち、近年は日本人アーティストのアジアツアーを手掛けたり、日本で台湾観光のPR活動なども行っている。
食べる時は皇帝様ほど偉い!
郭さん:諸岡さん、ちなみに何回か台湾にいらっしゃいまして、台湾のどこが一番好きですか?
諸岡:うわー、難しいところですけど、やっぱり美味しいところですかね
郭さん:やっぱり食べ物ですか!
諸岡:食べもの(笑。
郭さん:台湾ではマンダリンの北京語を使うんですけど、挨拶の時には「你好(ニーハオ)」ではなく、「呷飽沒(ジャパーベ)」。ごはん食べました?が、挨拶の言葉なんです。
諸岡:へー、おもしろい。
郭さん:ごはん食べること=幸せなこと、無事なことなので、挨拶言葉は「呷飽沒(ジャパーベ)」と言うのがありますね。
諸岡:「今日も元気?」というのにちょっと近い感じなんですね。
郭さん:ですね、はい。例えば親でも、子どもがごはんを食べる時に怒ったりしないと言うことが言い伝えにありまして、ごはんを食べる時に皇帝様ほど偉いと言う言葉は、常に使われてます。で、言い換えれば、一日でごはんを食べるのが一番大事だよと言うことを言い表してますね。
諸岡:それくらい食べることを大切に考えてるわけですね。
台湾ならではの教育事情ー歴史
郭さん:台湾も、特に今、香港の問題がありまして。台湾は、昨日聞いた数字なんですけど、46歳以下の人たちは自然に台湾は独立している国だと思っているようです。で、今台湾人は、自分が独立していると思っている人は99%です。で、統一したい人は0.7%しかいないんですよ。
これはあくまでも李登輝総統が(1988年に)総統になられて、今まで中国の政府が布いていた「台湾人=中国人」だよという教育から抜け出して、台湾人はアイデンティティ的には台湾人であるべきという教育を受けられるようになったから、46最以下の人がその意識が変わったと言う境目なんですけど。
最近も、どんどん中国の圧力が強くなっているところがあって、指摘されているのは、台湾意識の台頭によって、中国文化離れの傾向があると言われています。これが何が違うかと言うと、台湾は中国の一部分という教育だったんですが、今は、台湾は台湾、中国は中国でわかれています、という、(教育)改正がありますね。
例えばですよ、昔は台湾とか中国は、日本人に対して統治された時代があったから、日本人を憎むというような話があったのですが、でも逆に台湾では、日本がよく教育してくれた面と、例えば今の台北市も、当時の都市計画のもとで作られた都市のパターンだったんです。
子供たちの遊び場が(なくて)困っている日本の都会の問題は、台北ではそんなに言われてないんですよ。というのは、あちこち小さな公園がやたらあります。今の政府はそのあちこちの小さい公園の中に遊具をたくさん設けてる。という、人口密度の高い台北市内でも、オアシスみたいな公園がたくさん点在しているのが、実は日本政府の時代に残してくれた計画だった。逆に、台湾人にはすごくありがたみを持ってる年配者がたくさんいます。で、若者たちでも日本に対して憎むという気持ちは多分そんなにないと思います。
諸岡:日本で報道される、情報番組なんかで扱われる台湾って、すごく親日、親日、おじいちゃんたちは日本語喋れるよ〜っていうことをピックアップしがちなんで、確かにね、いろんな歴史があるだろうから、いろんな感情があるだろうなとは思っていたんですけど、今のお話を聞いてなるほどなと思いました。
求められる多言語教育
郭さん:今、マンダリン北京語が公用語になってるじゃないですか。上の人が、北京語を喋れないおじいちゃん、おばあちゃんがいる。で、真ん中は、台湾語を喋れるお父さん、お母さんがいて、次の孫は、台湾語を喋れなくて、北京語しか喋れない人がほとんど。だから間に、コミュニケーション取れない一時期の社会問題があって。
実は、今の小学校でもそうなんですけど、英語以外に、もっと勉強する言葉ありますよ。台湾語、先住民の言葉、一時期たくさんインドネシアとかベトナムの外国人のお嫁さんが来てたわけです。で、産んだ子どもたちが、「新住民」ということで。だから台湾語なり先住民語とか、インドネシア語とかベトナム語は、英語同様に大事にすべきだという文化の許容がよくされているのが台湾独特の文化だと思います。
諸岡:本当ですね。英語しか意識していなくって、外国語って。
郭さん:そういう時代もあったんですけど、台湾はいまだに住み込みの外国人ハウスキーパーが必要で来ているし。
台湾では2018年から「新経済移民法」を決定し海外からの労働人口の流入増を図っている
郭さん:今後台湾は、単一民族ではなく、新住民を取り入れながらこれから新しい社会を作っていくのが、今の蔡英文政府は分かっているから、いいんじゃないかと思います。あ、ちなみに蔡総統はアメリカ留学の法学の博士なんです。
諸岡:あー、そうなんですか。
郭さん:だから自分も、エリートとして海外の一流の大学に行ったから、そういう自分の言葉以外の他人の言葉を使いながら、その文化を尊重していくことの大事さと必要さを分かっている人です。
で、オードリー・タンさんもお父さんについてドイツで生活する時間とか、あと自分で海外でいろんな仕事をしたりして、で、彼女の口にしていた言葉で面白かったのが、「私は世界中、アフリカでもアメリカでもヨーロッパでもいろんな友達がいるから、別に何人ではなく、みんながそれぞれの言葉を使いながら、結果的にみんなが英語を使えれば一番便利だ」ということを喋っています。
台湾のビジョン、日本の未来
諸岡:すごーい。もう、ぐうの音も出ないな。納得。なんか日本が見習わなきゃいけないところをすごくたくさん聞いた気がします。
郭さん:いやいや、日本は私が思うのは、平和な幸せな国だと思います。平和だから、外でいろんなチャンスをキャッチしてくる必要性が高くないんですよ。でも、台湾みたいにすごく小さいところで、いつ中国に統一されるかわからない立場であるし、自分の命と自由と財産を守るためにいろいろなことを考えなくてはいけない、というのと比べたら、そのビビリさとプレッシャーが違うんじゃないかと思って。
諸岡:なるほど、ありがとうございます。ただ、日本もやっぱり外国の方の力を借りてこれからやって行かなきゃいけないところもあるので、そういうところは素直に見習ってったほうがいいのかなと思います。
郭さん:多分、老後の介護のことは早くやらないと、大変な社会になる気がします。
諸岡:そうですよね。もうお互い少子化の国なので・・・。
郭さん:まあ、労働者の問題はいろいろ出てくるんですけど、でもやっぱり老後の介護とか今の社会不安は解消される部分はありますね。
諸岡:そうですねえ。いろんなお話を聞かせてもらいました。本当に台湾のいろんなところを調べていただいてデータで見せていただいたりしたので、すごくよく分かりました。ありがとうございました!
編集後記
今、世界から注目を集める国・台湾。今回のインタビューで、最新の台湾の様子が垣間見え、ますます魅力を感じた諸岡です。とはいえ、その背景にはいつ統一されるかわからないという、台湾ならではの事情もあります。そうならないためにも、より強い動機をもって教育にも力を入れる必要があるのかもしれません。学びの形はいろいろですが、これからの日本に必要な学びは一体なんだろう?と考えながら、勉強する子どもたちを応援したい年の瀬です。
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