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SDGsと新たな社会のための歩み(京大JIAMセミナー感想)

 京大公共政策大学院とJIAMの連携セミナーを聞いてきました。こちらも興味深く思ったことをまとめておこうと思います。テーマは「SDGsと新たな社会のための歩み」です。セミナーの内容とは関係ありませんが、京大の法経第一教室に入ったのは久しぶりで懐かしく思いました。

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1.持続可能な社会を作るためのデジタル改革(岩下直行先生)

 最近流行のSDGs。猫も杓子もSDGsといいますか、とりあえずSDGsを掲げておこうという風潮には、やや疑問も感じます。このセミナーでは、その辺りへの言及があってよかったです。

 そもそもSDGsは「持続可能な開発目標」。しばしば「持続可能な」、地球や社会にとって「何だかいいこと」の部分が強調されますが、「開発目標」の要素もあります。「何だかいいこと」を実現するためには経済成長の側面がないと、企業も社会も動かないというのが、SDGsの考え方なんですね。

 例えば、企業にとってはSDGsは投資を呼び込む手段です。それが結果として、地球や社会にとって「何だかいいこと」につながると。この辺りは、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスにも通じるところがあるかもしれません。「何だかいいこと」の部分だけを強調するのは、SDGsにとっては片手落ちといえるでしょう。

 また、SDGsの前身は、1961年に始まった国連開発の10年(UNDD)。もともとは発展途上国への支援、南北問題への取り組みから始まっています。貧困問題にしても、もちろん国内の貧困問題も深刻な問題ですが、SDGsが解決の対象としている掲げている貧困問題は、まずは発展途上国のそれであることを意識する必要があるでしょう。

 ちなみに岩下先生としては、デジタル化が進むことで、実際のモノでなくてもよくなり、環境問題の解決につながるとしています。

2.心(こころ)伝達技術で目指すウルトラダイバーシティ社会(岡田志麻先生)


 前提として、人と人とのコミュニケーションの不全がいろいろな社会問題を生んでいるという問題意識があり、心拍数や体温、表情などを新しい技術で測定、数値化することで、心(こころ)を可視化し、相手の行動を予測できるようになることで、コミュニケーションの円滑化を図り、新たなコミュニティを構築できるのではないかというのが、セミナーで紹介した心(こころ)伝達技術の趣旨だったように思います。

 もちろん、人の心、内心を全て明らかにするものではなく、人がコミュニケーションする上で、自分の投げかけへの反応としての心がわかることを目指しているとのこと。

 印象的だったのは、こころ伝達技術の研究を進めるに当たって、工学を中心に、心理学、脳科学、社会科学などなど、様々な学問領域が協力していること。最近、リーガルテックという、ITを用いて法務の業務を効率化する取り組みが注目されていますが、学際的な分野はどんどん増えていくのでしょうね。

 また、岡田先生としては、最近の学生が情報技術に流れがちで、 物作りに関心を持っている学生が減っていることに危機感を持っているとのことです。1つのセミナーの中で、デジタル化を大切にする立場と、物作りを大切にする立場と、2つの考えが示されたのは、すごくよかったと思います。

3.掛け算の前提としての一般教養の大切さ

 SDGsの持続可能×開発にしても、心(こころ)伝達技術のコミュニケーション×技術にしても、複数の分野が関わり、それぞれの領域が連携、調整しながら取り組んでいく「掛け算」は、これからより重要性を増していくのでしょう。そう考えると、様々な分野について、最低限の知識を有していないと理解できないことも増えてくるはず。当たり前のことなんですが、一般教養の大切さが改めて求められているのだなと、そんなことを考えました。

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