自治体の住宅支援(自治総研セミナー感想)
自治総研のセミナーをオンラインで視聴しました。テーマは『コロナ禍で問われる社会政策と自治体 「住まい」の支援を中心に』。
最近、こうしたセミナーに現地に赴かなくてもオンラインで参加し、知見を得ることができるのは非常によいことですね。セミナーの内容を網羅的にまとめるものではありませんが、特に印象に残っていること、感想を記録しておこうと思います。セミナーの案内は、こちらから。
地方自治総合研究所 (jichisoken.jp)
1.大まかなまとめ
コロナ禍にあっては、特に低所得者層への影響が大きいとはよく言われているところです。ところが、コロナ禍にあっても、生活保護制度における被保護世帯の数は横ばいです。
一方で、住宅確保給付金や生活福祉資金貸付制度の利用者は激増しているという現状があります。生活保護の中にも住宅扶助はありますが、家賃のみ支援してほしいという人に対しては利用できません。生活保護を受給することへの抵抗感がある人もあり、こうしたセーフティーネットを用いる人が増えているのでしょう。
日本の持ち家率が減っていること、借家に住む高齢者の貧困率が高いことが問題となっている現状から、住居の支援を必要とする人に対して「住宅手当」を支給すべきではという議論があるようです。
しかし、日本において「住宅手当」の支給を検討することは容易ではありません。それは、日本の住宅が「新築・持ち家」であることを前提に、各種の政策・制度が設計されているから。しかし、「新築・持ち家」であることを前提とすることで、空き家の増加が社会問題化しているなど負の側面もあります。「住宅手当」を支給するのであれば、高齢者や低所得者に対してであれば理解を得られるかもしれません。
2.感想
自分にとって住宅政策の視点はなかったので、まず、その点が勉強になりました。
コロナ禍は、今までの社会問題をより顕在化させるといわれています。コロナ禍によって貧困問題がクローズアップされており、その中で住宅が注目されているというのは、もともと日本において貧困や住宅に関する様々な問題が進んでいたということなのでしょう。
「新築・持ち家」を前提としている社会が成り立ちにくくなっている、また、「新築・持ち家」ではなく「借家」になっている人が、住宅に関する支援からこぼれ落ちている。だから、「借家」の人に対する支援を検討していくべきという視点はわかります。
一方で、自治体は、住民に新たに住んでもらうことを前提として定住促進をする際、「借家」の人よりも「新築・持ち家」の人の方が、長くその自治体に住んでくれるであろうことを考えると、「借家」の人に対する支援を行う優先度は下がってしまうことも想定されます。住宅に関して、どのような社会があるべき姿なのか、それを描き、合意を得るのは難しいとも感じます。
自治体が住宅支援を行うとしても、自治体だけで必要な住宅を整備、管理することはできません。公営住宅を整備するだけではなく、家賃への補助、不動産の流通を円滑にするといった民間の住宅資本の活用を促す方法を考えていくことが必要でしょう。
また、住宅を必要とする人への支援の観点から住宅支援を行うのであれば、住宅に関する部局と福祉に関する部局が連携することが必要と考えられます。
このような、社会問題を解決するに当たって
・より良い社会の在り方の模索
・自治体における政策手段の検討
・自治体における部局の連携
といったことは、どのような問題にも共通していますね。
まとまっていない感じではありますが、こんなことを感じたセミナーでした。
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