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【リレー投稿】私の羅針盤_vol.1 まっきー

瀬戸内海に浮かぶ人口7,000人弱の離島”大崎上島”

2023年度の出生数が13人、高齢化率は45%超と少子高齢化の例に漏れない島ながら、3つの高校に加えて、海外大学と連携した高等教育機関も存在する。
島にはたくさんの”教育者”がいて、僕にとってこの島は、紛れもなく”教育の島”である。

7年前に初めて訪れた広島県の離島とは、なんの縁もゆかりもなく、強いて言えば父親の影響でカープファンだったくらい。
地域おこし協力隊制度を使って、3年間、町営塾で高校生を教えた。
「お前それはおかしかろぉ!」と上司でもなんでもない地域の方からどやされたことも一度や二度ではない。
それでも4年の歳月を経て、再びこの島に帰ってくることを決めた。
大崎上島のことを書こうと思うと、自然と「なんで自分がこの島に帰ってきたのか?」を考え始めた。

島に来て1年目は、「いつまで住むか」なんて全く考えていなかった。
ただ、島への熱い想いをもつ大人が多いことに驚いていた。
自分が生まれた鹿児島の片田舎では、「この町はもう廃れていくから外に出て行きなさい」と言われて育った記憶がある。
実際は、喧々諤々に地元の未来について議論する大人が身近にいたのかも知れないが、「戻って来たい」とは全く思わないまま、高校で地元を離れて寮生活を始めた。
そんな記憶をたどると、大崎上島の高校生たちが「いつかは(島に)戻って来たいって思うよね〜」と話しているのを聞いて、なんとなく羨ましく思った。

残ることを意識し始めたのは、島の電気屋さんの言葉がきっかけだった。
「君にも自分の地元があるから、『島に残って』とはとても言えない」
「けど、島のことを好きになって残りたいと思ってくれたらすごく嬉しい」
商工会青年部との飲み会で、息ができなくなるくらい笑った後だったことも相まって、「この島に住むのもいいな」と思い始めた。

2年目からは集合住宅から、Iターン者がほとんどいない別の地区に移り住んだ。
「この地区は来るもの拒まず去るもの追わずじゃけぇ」とゆる〜く受け入れて頂き、マイペースにソフトボール大会や地区のお祭りに参加した。
気まぐれで始めた畑は、道行く人が代わる代わるアドバイスをくれ、庭に山椒の木が生えていたことも隣の家の人が教えてくれた。
町民運動会の「自分の地区を背負って戦う」という感覚は、高校で帰宅部だった僕にとっては10年ぶり。
地域の中で生活していくことがだんだん楽しくなっていった。

さらに背中を押されたのは、区長さんの台詞。
「◯◯ちゃんもう中学校かぁ〜!」
「卒業式なんか毎年泣いちゃうよー(笑)」
地区の子どもの成長を我が子のことのように話す姿に「自分の子もこんなふうに地域に見守られながら育って欲しいな」「この島で子育てするのいいな」と明確に思うようになった。

地域おこし協力隊の任期が終わり、教育の島を担える人材になるべく、名古屋に修行に出た。
映画『ビリギャル』のモデルとなった塾で指導方法を磨くかたわら、スタバの美味しさやUber Eatsの便利さも学んだが、それでも大崎上島の魅力が薄れることはなかった。

帰ってきた島の我が家は、電気屋になった当時の教え子がエアコンを新調してくれた。
夜な夜な一緒に釣りに行った教え子が魚を配達してくれたり、農家の跡取りとして帰ってきた子と温泉でばったり遭遇したり。
5年ぶりの町民運動会でも彼らが地区の代表として係の仕事に汗を流していた。
「明日は広島市内のマルシェに魚売りに行くんよね」
「この時期、町からの仕事もあって忙しいんよ〜汗」
中高生が憧れるおしゃれなカフェでもなければ、IT技術を駆使したソーシャルイノベーションでもない。
今ある魅力的な日常を紡ぎ続ける仕事が、島の子ども達や島外の人たちからどう見えているのかはわからない。
「島のことを好きになって、残りたいと思ってくれたらすごく嬉しい」
一島民として、教育の島の日常をこの先もずっと紡いでいきたい。

(まなびのみなと 代表理事 牧内和隆)

鹿児島県に生まれ、長野県の大学へ進学。営業職を経て、地域おこし協力隊として大崎上島へ移住。
3年間、町営塾で生徒の指導を行った後、指導力のさらなる向上を目指し名古屋へ。勉強の仕方を”正しく”伝え、学習への”動機づけ”をし、自ら学ぶ姿勢を育む――― という『教えない指導』に4年間従事し、再び大崎上島へ。
受験科目や社会・経済のことはもちろん、アニメやマンガ、歌い手さんやTik Tok、ゲーム実況…etc.
中高生との話のネタになりそうなものにはどんどん興味の幅を広げ、時には生徒以上にハマったりもしながら島の暮らしを満喫している。
憧れは大人気マンガ『ONE PIECE』に登場する大海賊・白ひげ。いくつになっても、教え子たちが訪ねてきたくなるような教育者を目指す。


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