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[ベリーは誰のものか?]視察先で考えた、まなびのみなとを続ける方法

森のベリーは誰のものか。

はじめまして、まなびのみなとの勝瀬(かつせ)です。
ミカタカフェや高校生マイプロジェクト広島の事業リーダーをしつつ、事務局長を務めています。今回は、6月に訪れた都農町での視察のこと、今まなびのみなとで起こっていることを綴りたいと思います。
9月27日の夜にこの文章を書いていますが、まずは9月25日に生まれたこんな会話から。

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「フィンランドには国有地の森があってね。そこになっているベリーは、誰でも採って食べていいことになっているの。だから週末にはみんな森へ行って、ベリーを採ってそこらへんで食べていたりする。」
先日、そうミカタカフェで話していたのは、ヨーロッパ36カ国周遊の旅を終え日本に帰国したまなびのみなとメンバーの一人。
まなびのみなとは、大崎上島に住んでいる人、大崎上島に住んでいたことのある人で構成されている団体。“帰ってきた人”がお土産話を手渡してくれる瞬間がよくよくある。

「フィンランド行ってみたいんです。そこで暮らす人がどんな人なのか、話してみたいんです。」
一連の話題のきっかけを作ったのは、大阪に暮らす大学生。
まなびのみなとは、大学生のおためしぐらしを積極的に受け入れているため、夏休みは毎週のように大学生が島を訪れる。たまたま居合わせた大学生が会話の中心になることがよくよくある。

ベリーの話は、こんなふうに生まれた。

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大崎上島に3年間住んでいたけど今は都市部に暮らす人と、
普段は都市部に住んでいるけど、1週間だけ大崎上島で暮らしてみる人。

そんな両者がふと出会うシーンが、1年間に何度もある。
こんなシーンを見るたびに、この島にまなびのみなとがあってよかったなと目を細める。

「人と人が出会うには、屋根が必要なんです」と、早稲田大学の古谷先生も言っていた。
まなびのみなとは、屋根なのかもしれない。

一方で、この屋根はいつまで持つだろうか。そんな不安もある。
「それをやりたい人、それを必要だと思う人が旗を立て、事業化する。」
当たり前だったそんなスタンスがいま、まなびのみなとでは難しくなりつつある。

サポートを頂いていた財団からの助成期間が終了。
委託を受けて実施していた町の事業が終了。
総事業数は10を超え、お互いがお互いをサポートする余裕がなくなる。
ファンドレイズの戦略を立てるにも、そこに労力を割けるメンバーがいない。

これまでおいしいおいしいと無邪気に食べ続けていたベリーは、勝手になり続けるものではないことに気づく。
「今度は自分たちが土を耕し、水をやり、草刈りをする番なのではないか。」
「それって、まなびのみなとでやることだっけ?やりたいことだっけ?」
「…。」

5月から、こんな議論が夜な夜な続いた。

2023年、約6,800人が暮らす大崎上島で年間出生数が10人に満たなかったという情報が駆け巡り、衝撃が広がった。高齢化率は50%に迫っている。
人口減少の一途を辿る離島。税収が減り、子どもたちの遊び学ぶ光景が減り、それでも豊かさだけは残るこの島で、私たちは何を目指せばいいのか。持続可能な未来のため、どうお金を生み出せばいいのか。

離島は基本的に赤字です。定期船の運航や港湾の整備など、支出の多くを島外の税収によって賄っています。人口減少社会において税収は厳しい状況が続くため、少ない予算の中でも離島の存続を望む島外の人々がいなければ成り立ちません。

離島経済新聞社【特集|島で生きるために必要なお金の話】


そのヒントを得るため、今年6月にお邪魔したのは宮崎県都農(つの)町。
人口1万人の過疎地で、「ひとからはじまる、まちづくり」をミッションに活動するまちづくりベンチャー・株式会社イツノマさんに視察を申し入れ、現地を訪れた。

代表の中川敬文さんは、あのキッザニアをつくったUDS株式会社で社長をされていたお方。noteをはじめとするSNSで頻度高く情報発信をしており、その発信をチェックしていた私は、都農町への視察を熱望した張本人である。

点でしかないまなびのみなとのプロジェクト型事業を、線にして面にしていくためのビジョンを描き直すこと。それが今回の視察の目的。
あるいは、点しか生み出せないことを認めて、やれることをやれる範囲でやろうという諦めの決断をすること。苦しむメンバーがいるなら、それも大事な決断でしょう、ということを事前に話していた。

「誰もが学びに出会う日常を。」
これまで私たちが掲げてきたビジョンは、これからも島を支えるか。
ビジョンに紐づくミッションは、果たすべき使命を言葉にできているか。
それは重荷ではないか。
確認のための3日間だった。

宮崎県立都農高校は2021年3月に廃校。
基準の生徒数まであと2名足りずに廃校が決定されたという。
町にはキレイなままの校舎や、都農高校への道順を案内する看板が至る所にあった。
都農高校じゃない、地域の外の学校へ進学したであろう高校生たちが公園でブランコをこぎ、ただ時間をつぶしているところにも遭遇した。都農高校があれば、彼女たちの放課後はどう変わっただろうか。
「あの時、もっと本気で取り組んでおけば」
町に染みついたそんな声は、大崎上島の成り行きの未来にも重なった。

それでもイツノマの皆さんの取り組みは前向きで、明るい。中学生まちづくり部の部室には、都農町をフィールドに活動をしたいという中学生メンバーの野望が溢れていた。

自動チェックイン・チェックアウトの仕組みで省エネ性を高めたHOSTEL ALAは、県外からの高校生・大学生のスタディツアーを受け入れ、地域プレーヤーとの出会いを生みだす拠点になっていた。
そして、そんな一つ一つの取り組みを紡ぎ、グランドデザインとして未来の地図を描いている。

「学び」に軸足を置く私たちがこれからやるべき、教育のその先のまちづくりをイツノマさんは多角的に実践されていた。そして、今後の動きとして企んでいることのスケールの大きさにも驚く。(ここでは書かない)

夜も更けた頃、中川さんから頂いた言葉が私たちをハッとさせた。
「まなびのみなとの強みはメンバー層の厚さ。メンバーが代わるがわる自分の事業についてプレゼンし、そこへの想いをぶつけられるのはとても羨ましいです。
メンバーの多さゆえビジョンやミッションが一つに定まりきらないこと、そんなに気にすることですか?16人いるメンバーが、それぞれのミッションをもう持っているじゃないですか。メンバーの数だけミッションがある団体、かっこいいじゃないですか。そんなチーム、探してもなかなかないですよ」

お話を聞かせてもらうだけでなく、お話を聞いてもらえる時間も頂けたからこそ、もらうことができた言葉だった。

金言を賜るとはまさにこのこと。
課題はなくなっていないけれど、迷いはなくなった瞬間。
宿泊していたHOSTEL ALAに帰り、興奮を抑えながら眠りについた。

「島に、どんなミライがあったらいい?」
視察から帰ってからの数週間は、メンバーそれぞれが持つ未来像を話す時間が続く。まさに16個のミッションを重ね合う時間だった。

飛び交った言葉を集約すると、このような言葉が並ぶ。
・まずは自分たちが学び続けること
・今まで関わってこなかった人とも、関わりを持とうとし続けること
・これまで作ってきた学びの場や人間関係を、島の外にも開き続けること

会議の中で多く出た単語(大きい文字は出た回数を表す)


「最近は小学校とか公園から、どんどん遊具がなくなってて。それってどうなんだろうって思ってる。」
「アメリカでは公園を作るNPOがあるみたいですよ。民で公園を作っちゃおう、みたいな。」
「まなびのみなとでも、遊具とか勝手に寄付してしまおうか。その遊具で、自分たちも本気で遊ぶ。」
「そうしようそうしよう。教育の事業を一生懸命やり続けてさ、そのお金を全部遊具に突っ込んじゃうっていうの、なんかおもしろいじゃん。まなびのみなとっぽい」

こんなやり取りが22時過ぎに生まれて、まだ話し足りない雰囲気はあるけど解散するような夜の会議が続く。

話していたのは、まさにベリーの話だった。
森で自らベリーを育てる覚悟。
森へ遊びにきた人たちへ、惜しむことなく笑顔でベリーをお裾分けする覚悟。
そして、機嫌良く、自信を持って、それを続ける覚悟。

都農町へ行って考えたこと、言葉をぶつけ合って出てきたこと。
それらを団体リーフレットとして形にすることになった。
設立から5年半、リーフレットもパンフレットも持たずに走ってきた。

「大崎上島で、いろいろやってる団体です。」という紹介から、
「こんな覚悟を持って、楽しみながらやってます。」という紹介に変えて、
たくさんの人に手渡したいリーフレット。
16人のメンバーと、大事にしたい3つの指針と、いま取り組んでいる11の事業が載ったリーフレット。

ぜひ、受け取ってください。
10月から皆様にお渡しできる予定です。

もし、少しでも私たちのことが気になったら、ベリーを食べに来ませんか?
大崎上島まで。


お読みいただきありがとうございます。

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