紙の歴史
紙ができるまで人々は竹や布に文字を書いていたが、竹や布に文字を書いてそれを大量に保存をしておくと分厚く重たいので非常に使いづらいことから文字は普及しにくかった。
もちろん紙自体は紀元前2世紀頃に中国の前漢(ぜんかん)という時代にあったのだが、コストも高く文字を書けるような品質の紙ではなかった。
では、いつ誰がどこで紙に文字をかけるようにしたのかというと、紀元前2世紀から約300年後の105年に中国の後漢(ごかん)時代に生きた蔡倫(さいりん)という人物である。
蔡倫は木の皮や麻、ぼろぎれ、魚網(ぎょもう)を材料にした低コストで利便性のある「文字がかける紙」を開発した事によって中国は紙を大量生産できるようになったのである。
そして中国はこの製紙技術を門外不出(もんがいふしゅつ)という独占政策で他国に渡らないようにしていた。
というのも紙の製造技術により知識や情報を効率的に記録、伝達することができるようになったため文化的、技術的優位性を保つ事ができるようなったり、製造法を独占していれば紙を高い値段で他国に売ることができるからだ。
また、紙は軍事面でも地図や戦略計画でも使うことができるので、他国が紙を簡単に手に入れれば情報戦、行政管理能力が上がってしまう事からも製造法の独占を目指した。
しかし、約500年後に朝鮮半島を経て製造法が日本にも伝わりやがて「和紙」へと発展する。
さらにその約100年後に古事記が完成し、続いて日本書紀が完成していることからも実用的な紙がもたらす文明の発展が垣間見える。
西方への伝播は751年に中国がダラスの戦いでイスラーム軍に敗れ中国の捕虜の中に紙漉き(かみすき)職人がいた事によってサマルカンド(現在のウズベキスタン)へ伝わり、やがてシルクロードを通して12〜13世紀頃ヨーロッパへ伝わった。
14世紀に「再生」「復活」を意味するルネサンス時代を迎えるヨーロッパにとってこの技術は文明発展、近代化に多大なる影響をもたらした。
ルネサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴィンチの手記なども製紙技術が伝わらなければ、我々はこのような貴重な史料を認識できなかった可能性もあると思うと紙についての大切さがより分かるのではないだろうか。
たかが紙、されど紙
今日、当たり前のように手にしている本や、手紙、紙幣など生まれた時から我々は紙を使っているが、歴史を辿る事で過去、現在、未来への繋がりが少しづつ見えてくるとありふれた日常を照らす事ができると思う。
紀元前2世紀頃最初の紙ができてから12〜13世紀のヨーロッパに伝わるまで約1400年間の時をかける様はまるで小さな種から少しずつ、少しずつ成長しやがて立派な大樹になり、我々が生まれた時からそこに元々大樹があったかのような趣きのある歴史を感じさせてくれる。
自分自身も毎日紙にはお世話になってるし蔡倫の紙がなかったら本も読めなかったのかと思うと感慨深い。
蔡倫くんありがとう!!
参考文献