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113本目『ドナルドのグランドキャニオン旅行』Grand Canyonscope 1954年【ドナルドダック主演作をすべて観る】
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公開当時のポスター画像が見つからなかったので代わりに配信版のアートワークで代用
あらすじ:
グランドキャニオンへ観光にやってきたドナルド。ガイドさんの説明に感動するのはいいが、いきなり谷底へ大きな石を落として遊ぼうとするなど、開始1分足らずですでに危険(文化財を傷つける行為)。先住民に容赦なくフラッシュを焚いたり、先住民の衣装を勝手に着て雨ごいの踊りをする(もちろん雨が降る)など、例によって罰当たり上等。さらに、ガイドが無配慮にもロバの眼前で強いフラッシュを焚いたために、ドナルドが乗っていたロバが錯乱。さらに冬眠中(?)だったルーイ・ザ・マウンテン・ライオンまで巻き込み、貴重な自然遺産をメチャクチャにする大乱闘に発展するのだった……。
コメント:
マナー最悪観光客のドナルドがグランドキャニオンで大規模な文化財破壊をやらかしてしまう回。最初から最後までやってはいけないことしかやっていないのだが、ドナルドの表情は常に心からウキウキしていて、観光地でテンションが上がってしまう気持ちそのものには共感してしまう。一応ツッコミ役としてツアーガイドがいて、ドナルドのお行儀の悪さを一応咎めてはくれるのだが、彼とてガサツなので結局ドナルドと一緒に事態を悪化させてしまう。今回もドナルドはいろいろと悪いことをしているが、一番良くないのは調子の悪いロバの目に向かってカメラのフラッシュを焚いて叩き起こそうとすることだろう。あれは完全に悪い。それまでの作品でもたびたび描かれている、観光地化によって自然の風景や動物たちが大きな被害を受けるというテーマが今回も描かれている。観光客たちを乗せるロバたちの顔を見てほしい。みんな目が死んでいる。おそらく報酬などないだろうに、危険な断崖絶壁を歩かされる強制労働である。終盤の大破壊のスペクタクルはシリーズ屈指のスケール。ただそこにいるだけで周囲の者が破壊しつくされてしまうというドナルドの疫病神ぶりは、なんとなく「こち亀」の両津勘吉に通じるものを感じる。
備考:
・『グランドキャニオン・スコープ』という旧邦題もある。
・後半から若干強引なシチュエーションで登場するライオンは「ルーイ・ザ・マウンテン・ライオン」という準レギュラーキャラで、『ドナルドのライオン騒動』(1950年)以来の仲。
・シネマスコープ作品。のちにスタンダードサイズに再構成してタイトルバックを差し替えたバージョンも存在する。
・ディズニープラスに配信あり。山寺宏一による吹替版も制作されているようだが、配信はされていない。
・普段のジャック・ハンナに代わって監督を務めたチャールズ・オーガスト・ニコルズは、『ピノキオ』のアニメーターのひとりで、シネマスコープ初期の短篇『プカドン交響楽』の監督(ウォード・キンボールと共同)。ディズニー短篇の監督としてはプルートの主演作を数多く手がけている。1962年のディズニー退社後はハンナ・バーベラ・プロダクションへ移籍。『原始家族フリントストーン』『チキチキマシン猛レース』の演出など、やはり日本でも人気の高い作品に携わった。長篇作品『シャーロットのおくりもの』(1973年)の監督でもある(やはりディズニーの同僚であったイワオ・タカモトと共同)。