だから、ミュージカルが好きだ。
井上芳雄さんのインタビューを読んでいて、
そうか、だからミュージカルってこんなにハマるんだ…!って改めて感じたことがあったので、今日はそちらの記事から。
──ミュージカルを愛し、その最前線を走り続けている井上さんは、ミュージカルのどこに一番の魅力を感じていますか?
音楽があることですよね。音楽って感情をほぐす、出しやすくする、伝わりやすくするという効果があると思うんです。例えば、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でジャベールが星に向かって歌いかける瞬間って、現実にはきっとあり得ないですよね。でも心の中ではそう思っているかもしれない、そう思う瞬間があるかもしれない。その“現実ではない場面”が実際に目の前に浮き出てくるところが、ミュージカルの一番の魅力だと思います。
もちろん、シェイクスピアの長ゼリフでもそう感じることがあるかもしれないけど、音楽に乗ったときに“現実にはない場面”がより伝わるし、「自分にもその気持ちがあるな」と実感できるというか。踊りや群舞を観て気持ちが躍るのもそうですよね。ミュージカルを観てうれしくなるのは、真実に触れた気がするからなんじゃないかなと思うんです。今まで誰も、言葉にも形にもできなかったものを感じて、それを「自分だけじゃないんだ」とわかり合える喜びがある。「そうだった、そうだった」と思い出すというか。そうやって音楽によって呼び覚まされる感情や真実があるということが、ミュージカルの一番の魅力なんじゃないかなと思います。
ミュージカルの曲を聞くと、
それぞれの曲で、そのストーリーと、キャラクターと、その感情がセットで思い起こされます。
たとえば、レミゼでいうと、
「彼を帰して」からは、それまで不信感に似た感情すら持っていたマリウスに対して無償の愛を注ぐバルジャンの、神々しさすら感じる慈愛の心。
(キャストじゃないけどこのジョシュ・グローバンさんの、優しさの中に力強さもこもった歌声が好きすぎる…!)
たとえば、「オン・マイ・オウン」からは、
報われない恋にそれでも一途にならずにはいられないエポニーヌの、悲しさ混じりの純情さ、ピュアさ。
加えて、レミゼのように同役を複数人キャストでやると、
同じキャラでも、演る人のもともと持っている声質の違いとかで、
微妙に演じられ方にも個性が出てくるので、
その違いとかからも、想起される感情にもちょっとずつ変化が出てきて、
それもおもしろいなあ、と思います。
もちろん、お話自体はフィクションだし、
観客たる自分は、自分が生きているのとは違う世界での出来事を、客観的・俯瞰的な視点で見てるわけですが、
井上さんの言う通り、
不思議とどこか自分自身の心にも引っかかってくる点があるというか、
自分の中にある感情とシンクロしてくる場面も多いんですよね。
もちろんストレートプレイでも感じる感情ではあるのですが、
ミュージカルの方がそういった「感情の増幅具合」が特に大きいというか。
それこそが、井上さんのいう「音楽の力」なんだと思います。
逆の観点でいうと、
音楽そのもの、単体の楽曲にも、感情を伝える効果はあるけれど、
そこにミュージカルとしてのストーリー・あらすじがのっかってくることで、さらに感情が強く揺さぶられてくるんだろうなあ、と。
個人差はあるかもしれないですが、
大人になると、なかなか感情をストレートに出すことって、日常生活ではあまりないじゃないですか。
もちろん心の中ではいろいろな感情が日々渦巻いているけれど、
それを心の外、口の外、体の外に出すのって、なんだか憚られるというか、気恥ずかしいというか。
そんなときに、ミュージカルを観て、登場人物たちの感情をその音楽から全身で受け止めると、自分の中に渦巻いてた感情が自然と浄化されるというか、そんな感情を覚えるんですよね。
憑き物が落ちる、みたいな感覚にも近いのかもしれません。
舞台から発せられる感情を受け取りながら、
あっ自分ってこんなことを考えてたのか、とか、
こういう感情になったこと、自分もあるなあ、とか、
登場人物たちの感情を、自分の中にも反芻して。
レミゼだと、笑うというより泣くことのほうが多い舞台だとは思いますが、
笑いにしろ涙にしろ、そうやって舞台鑑賞してる間は、
自分の素直な感情を解放して、自分をリセットして俗世に戻る。
(劇場なら暗いから、思いっきり泣いても誰にも見られないし!笑)
そんな「非日常」を味わえるから、
やっぱりミュージカルって大好きだなあ、って思います。
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