フォーリン・アフェアーズ「国際戦争と国内政治」2023年10月号 一言感想
米国外交問題評議会(今のところ、国際情勢において世界最大の影響力を持つと思われるアメリカのシンクタンク)の意図を掴むために購読しています。
国際戦争と国内政治
①流動化したロシア政治-プーチン体制の衰退と新タカ派の台頭
タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター シニアフェロー
・モスクワのドローン攻撃やプリコジンの反乱は、プーチンのリーダーシップの低下を表している。
・ロシア民衆は戦争の長期化を理解し始め、戦う決意を高めている。
・プーチンの支持率はまだ高い。
・モスクワ内では、プーチンの顔色を伺うのでは無く、与える情報によってプーチンの感情をコントロールするようになった。
・「新時代のタカ派」ゾロトフの存在価値を高めている。
という論文。
プーチンが絶対的な力を示さなくとも支持率が高いことの理由は、民衆が戦争に肯定的であるためであり、だったらトップがプーチンじゃなくてもいいじゃん、とプーチンの座を狙う動きが活発しているという事だと理解した。記事のは意図何だろう。戦争が長期化する、という考えを根付かせることか。であれば、中間選挙前の人気取り目的に、バイデンが大規模な介入をする事は無いということだろうか。
②欧米はウクライナを見捨てるのか?-キーウは欧米の心変わりに備えよ
リアナ・フィックス 米外交問題評議会 フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授
タイトルが示す通り、ウクライナ支援の懐疑論がある事は認めつつ、それでもウクライナ支援が必要だという論文。注目したのは「欧米がウクライナ支援を控えても、ウクライナは、モスクワに新たな指導者が誕生するまでは力で対抗するしかない」というような箇所で、ウクライナの勝利条件は戦争で勝つ事では無く、ロシア内でプーチンが失脚すること、つまりそのようなオペレーションを行う、もしくは既に行っているとも読み取れる。
また、下記③論文でも述べられている、もしトランプが勝った時の対策として、選挙前にウクライナ支援の法律を作ってしまおうという提案もしている。そんな法律はいらないが、トランプが勝つ可能性も考えている事がポイントと思う。
③トランプ2.0の時代-同盟国に恐怖を、ライバルに希望を
ダニエル・ドレズナー タフツ大学 フレッチャー法律外交大学院教授(国際政治学)
反トランプの総括のような論文。トランプが行ってきた事を非難し、2024年の大統領選挙でトランプが勝てば、世界でどんな酷い事が起きるか論じて、恐怖を煽っている。
注目すべきは、下記文のように、もしトランプが選挙に勝っても、トランプが自由に動けなくするよう、手を打っておけというロジックであり、そのロジックで選挙前に色んなことを強行するつもりがあるということ。
「トランプがイランに敵対的であることを指摘することで、バイデンはテヘランのテクノクラートとの核交渉を短期間で再開できるかもしれないし、凍結されたイランの資産を、合意に先立ってカタールなどの第3者に移転しておけば、トランプが再び合意から離脱するハードルをより高くできるし、その気まぐれから交渉を守ることができる。」
ちなみに私は、民主党よりは共和党のよいと思っており、トランプは戦争をしなかった実績において指示しています。2024年はロバートケネディJrを応援しています(10/9 民主党からではなく、無所属出馬を表明した。厳しい戦いになりそう)。大統領が誰になったとしても、日本が自主独立をしないと変わらない。
民主党支持者はこれを信じればいいし、共和党支持者は、逆の
2024年大統領選挙に向けての、反トランププロパガンダ
1年後の大統領選に向けて、これから、こういう記事が増えていくでしょう。
AIがもたらす機会と脅威
④イノベーションと社会-何が社会と技術の関係を規定するのか
ダイアン・コイル ケンブリッジ大学教授(公共政策)
AIの危険性について、規制をしっかり作るべしという論文。米国外交問題評議会としては、Googleやビルゲイツ(Microsoft)が等が、AIによって国家よりも力を持つことは避けたいのでしょう。
論文の内容とは外れますが、「正しく規制する派」の一番の有名人はイーロン・マスクですね(ただし、テスラで運転AIを開発している)。Open-AI(Chat-GPT)も「正しく規制派」だったようですが、いろいろあったようです。(著書「イーロン・マスク」より)
私は、一般人が幸せな世界になるためには、AI規制云々より、権力者が抽象度を高め、利他的な判断ができる事が必要と考えます。
⑤世界はAIを統治できるのか-手遅れになる前に規制を
イアン・ブレマー ユーラシア・グループ 社長兼創設者
ムスタファ・スレイマン インフレクションAI CEO兼共同創設者
上記④よりも、AI規制について細かく提言している論文。
このような論文を2件掲載している事で、本誌の考えが読み取れます。
Sea Change
⑥中国は停滞と混乱の時代へ-社会不満と経済停滞が重なれば
イアン・ジョンソン 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究担当)
Chinaの経済がピークを迎えた後は、習近平が支持を維持するために規制を弱めると考えられていたが、逆に規制を強めている。中国人の知識人へのインタビューも記述されているが、VPNを使って規制を免れる手法も(今のところ)あるもよう。
私は、中国式監視社会はもちろん歓迎しませんが、日本含む西側の、大手メディア等による偏向報道も同じ穴の狢だと思っています。上記④では権力者が抽象度を上げることが必要と書きましたが、国民一人一人が抽象度を上げないと、国益を優先する政治家を選ぶことはできないでしょう。
⑦気候変動型災害に備えるには-緩和と適応を連動させよ
アリス・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境担当)
「2023年に発生した気候災害の規模は、政府や政策立案者がもはや温暖化の緩和策、つまり、二酸化炭素やメタンなど大気中に排出される有害な汚染物質を削減する戦略に焦点を当てるだけでは不十分であることを、われわれに再確認させた。」から始まる論文。私はこれを、温暖化→気候変動へと、金儲けの舞台を大きくしたものと読み取ります。温暖化はしているっぽいが、その影響は不明、原因がCO2という根拠や薄い、と考えています。
ただ、インフラの見直しや、早期警戒システムの構築には同意です。
また、気候変動問題については、イーロン・マスクやチョムスキー博士等、反政府側の発言をしている大物も脅威としており、引き続きウォッチが必要です。
「世界各国は、異常気象に耐えられるように、インフラや政策を見直して「適応」にもっと注意を払う必要がある。」には同意。対災害のインフラは当然必要だし、熱を溜めない街づくりができるなら、それは良い事でしょう。
Current Issues
⑧アフリカにおける反欧米感情の台頭-ニジェール・クーデターの意味合い
エベネゼル・オバダレ 米外交問題評議会 シニアフェロー(アフリカ研究)
最近のニジェール含む、アフリカのクーデーターに関する論文。
政治的・経済的停滞に対する怒りのはけ口として、ある程度の反欧米感情は続くものの、アフリカのエリートは親欧米であると論じている。その根拠として、知識人や政治エリートが欧米の大学等の教育期間で学んでいる事を挙げているが、私は、それこそ欧米が仕組んだ国民の分断の成果なのではないかと考えます。
「サヘル全域のエリートも民衆も、欧米の思想、経済的恩恵、政治的進化の軌道に魅了されている。毎年数多くの若者たちが欧米での暮らしを求めて移動していることからも、彼らの立場は明らかだし、その多くが欧米の大学で教育を受けた、この地域の思想・政治エリートも欧米にこだわっている。」
⑨BBCとイギリスのソフトパワー-政府と国際放送の関係を考える
サイモン・J・ポッター ブリストル大学教授(現代史)
BBCが運営するワールド・サービス(国際向け放送)が経営難で、すでに、アジアの言語やアラビア語での放送を打ち切っているらしいです。
私は、国際向け公共放送は、認知戦・要はプロパガンダのツールと認識しており、 イギリス(MI6)の得意分野だと考えていたので意外でしたが、記事内の「英保守党がBBCのコスト削減圧力がサービスを低下させた」のような記述から憶測するに、グローバリストと反グローバリスト(保守側)のせめぎ合いなのかなあと思いました。
⑩北朝鮮とロシア-変化した関係の本質
スコット・A・スナイダー 米外交問題評議会シニアフェロー(朝鮮半島担当)
ロシアと北朝鮮の接近についての論文。
北朝鮮はロシアに武器を提供できるが、近代的な誘導システムを備えていないとの論はその通りだと思うが、私は、北朝鮮からロシアに提供するものとして、弾薬や人員で十分ロシアにメリットがあるのではないかと考えます。人だったらロシアにいるじゃん、とも思えますが、ロシアだって自国民が死ぬことには抵抗(世論)があるでしょう。実際、ロシア正規軍(ワグネルで無い)はチェチェン人とか囚人が多いとの情報もありますし。
参考 9月記事