「世界戦争の足音」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年3月号)一言感想
グローバリスト側の主張を確認するために読んでいます。私は、”行き過ぎた”今のグローバル資本主義には反対で、各国家の主権を尊重することを支持します。
全体的に、反トランプと、グロバーリズム推進の号でした。米大統領戦が終わるまで、こんな論文が続くのでしょうか。ちょっと辟易します。
米大統領戦といえば、ロバート・ケネディJrのドキュメンタリー映画が無料公開されていました。
本題
世界戦争の足音
①世界戦争の足音ー歴史は繰り返すのか
現在の国際情勢と、1940年代の共通点を挙げ、世界戦争を警告する論文。その正否は、今は判定できないと思いますが、気が付いた事を挙げます。
・論文では二次大戦の日独伊を独裁国家と一括りに扱っており、私含む多くの日本人はヒトラーと日本は違うと思っていると思いますが、国際的には一緒くたにされてるのだと思った。
・私は、日本が毒ガスを使用した事を知らなかった。
・『かつての枢軸国も、ライバルを打倒していれば、仲たがいを始めたに違いない』という記述がありました。私は、二次大戦時の「陸軍省戦争経済研究班(通称:秋丸機関)の、対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」=「アメリカとは戦わず(参戦させず)、日独でイギリスの補給を絶つ戦略」を指示していましたが、成功したとして、確かにドイツと仲たがいする可能性は大いにあるなと、はっとさせられる一文でした。
米大統領選挙と世界
②共和党の国際主義と外交戦略ー軍事・貿易・経済戦略をどう立て直すか
共和党支持者の論文であり、フォーリンアフェアーズにしては珍しいと思いきや、共和党指示でも反トランプであり、つまり共和党内のグローバリストの論だった。
主張は、バイデン政権の経済政策の失敗を指摘し、それを立て直すにはグローバル化の推進が必要だという、特にひねりの無いグローバリストの一般論。あと、軍備基盤およびウクライナ支援の強化も主張している。ネオコンかしら。
③次期米大統領と欧州ーなぜ欧州の自立が必要なのか
①米国依存を辞め、②ウクライナ支援を強化しようという論文。①は同意だが、②は同意できない。米国依存を辞めて、どう世界平和・秩序を作るかを考えて欲しい。
④アメリカの新貿易コンセンサスーロバート・ライトハイザーの世界
前米通商代表のロバート・ライトハイザーの下記主張および著書を非難する論文
ライトハイザーの主張「製造業および何かを作ることを重視し、繁栄は「農業、製造業、(石油産業を含む)鉱業によってもたらされる」」
著書
これに対し、論文ではさまざまな反論を行っており、一つ一つは妥当な面もあると思うが、結局どうすればよいかという主張の根拠が弱い。グローバル化を推奨しているのは分かるが。
ガザと中東の未来
⑤紛争の一方で進む中東の和解と強調ーポストアメリカの中東秩序へ
ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー
サナム・ヴァキル 英王立国際問題研究所 中東・北アフリカプログラム ディレクター
イスラエルーガザの紛争解決には、アメリカやヨーロッパ、もしくは中国等の関与を増やすのではなく、中東の地域大国が、集団的なリーダーシップをとるべきという論文で、さまざまなアイディア ー例えば中東版ASEANのような組織「MENA(middle east north africa)フォーラム」ー を示しています。そのような取り組みをすることは良いと思いますが、結局イスラエルがどう関与して平和になるか、がなかなかイメージできないのが残念です。
⑥戦後のガザ統治に備えよ― 自治政府をどう改革するか
ダニエル・バイマン ジョージタウン大学 外交政策大学院教授
ガザをパレスチナ自治政府(PA)が統治することを提案する論文。そのために、イスラエルにPAを認めさせる必要があると論じているが、前提がおかしい。
それを決めるのは、ガザ市民(パレスチナ人)でしょう。ガザ市民から支持されていないPAを米国が操って無理矢理統治させようとしているのでは、と邪推してしまいます。
⑦抵抗の枢軸という新脅威の本質― ミサイルとSNSで戦う敵の目的は
ナルゲス・バジョグリ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 アシスタント・プロフェサー(中東研究)
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(中東研究)
ハマス含む中東側のSNS戦略が有効に機能しているとする、西側の論文としては興味深い内容である。
イラン、ヒズボラ、フーシ派を含む「抵抗の枢軸」と定義するのはどうかと思いますが。
抜粋『TikTokに、紅海で拿捕した船上で踊るフーシ派の動画を投稿し、ハマスのスポークスマン、アブ・オベイダを含む、「抵抗の枢軸」の重要人物の世界的な人気を高めようとミームさえ利用している。さらに、パレスチナ人のためにほとんど何もしていないと非難されるアラブの首脳たちとヒズボラの指導者を対比させて、ナスララを称えるコンテンツも制作している。このようなアプローチで、パレスチナを支援するために外国で制作されたコンテンツを補い、かつてないやり方で抵抗の枢軸の影響力を高めている。』
⑧ミャンマーは崩壊するのか― 反体制派と連邦制の夢
アビナッシュ・パリワル ロンドン大学東洋アフリカ研究学院 准教授(国際関係論)
ミャンマーの現軍事政権に反抗する、民主政権側の組織を応援する論文。
大体、西側大手メディアが民主政権と呼ぶのは、西側がコントロールしている政権の場合が多いという認識なので、本当かなあと思いながら読んでいます。
正しいと思えるエビデンスも無いので、何とも言えません。
序文抜粋『軍事政権は国内のほとんどの地域で追い込まれている。これらの反政府勢力の攻撃は非常に効果的で、ミャンマーの軍事政権は2023年11月の段階で「国家分裂の危険にある」と警告している。ミャンマーが複数の民族小国家に分裂していく可能性は、すでに現実問題として捉えられている。実際、軍事政権が敗北し、追放される可能性も否定できず、ミャンマーは連邦制に即して社会契約を書き変えるべきタイミングにあるのかもしれない。ミャンマー軍に対する攻撃には数カ月に及ぶ計画や異質なグループ間の連携も必要になるわけで、これが実現されていることからみれば、この国が連邦制に基づく民族間統合モデルを実践できるのではないかという希望も浮上している。』
私の考えと近い記事を見つけたので、リンク掲載します。
Webマガジンオピニオンズ ミャンマーで起きたこととこれからの世界について
https://web-opinions.jp/posts/detail/398
⑨南シナ海に迫る危機― 中国との危機を機会に変えるには
マイケル・J・マザー ランド研究所 上席政治学者
南シナ海(台湾では無い)のChinaの挑発・衝突行為についての論文。
一例
・シエラマドレ フィリピン海軍
・近年、中国はフィリピンだけでなく、インドネシアやベトナムにも威圧的行動をとるようになった。米国防総省の報告によれば、過去2年間だけでも、中国の艦船や航空機は過去10年間の合計よりも多い300回近くにわたって、そうした危険で威圧的な行動をみせている。
対策としては、米国だけでなく、友好国と協力して外交を行い、『アメリカの利益にとって重要な国際的な規範と構造を反映した、より多国間の国際秩序へ世界を導く上での、重要なステップを踏み出すこと』としているが、友好国(もちろん日本含む)を巻き込むのであれば、「アメリカの利益」と限定しないで欲しい。いや、むしろ正直で良いか。
おまけ
中東の歴史については、最近発売された 2024年度版 新・夢が勝手にかなう手帳(苫米地手帳)に分かりやすく纏められていますので、オススメです。
私の苫米地手帳の記事
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