フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年8月 一言感想
米を中心とするグローバリスト側の、外交に関する主張を理解するために読んでいます。(私は、反グローバリストです)
流動化するロシア
①プーチン後のロシア-「より良いロシアへの道」は存在するか
アンドレア・ケンドール・テイラー 新アメリカ安全保障センターシニアフェロー、エリカ・フランツ ミシガン州立大学准教授
「プーチンが悪い」論である。しかし、「ウクライナの包括的な勝利は考えにくい」と、さらりと書いており、西側の態度も変わってきたか。と思ったら、最後には、「より良いロシアになるにはウクライナの完全勝利が条件」と結論づけており、あれ?と思った。著者が2人なので、2人の意見が分かれているのかもしれない。
カダフィ後のリビア国家破綻を、内戦によって独裁者が失脚したあとの例としてあげているが、お前ら(グローバリスト)のオペレーションだろうが。
「ウクライナ進行以降、街頭でも繰り出すようなリベラルな数十万のロシア人たちは既に国を離れた」とあるが、これはCIAエージェントの大部分がロシア国内に居ないという事か。さらに、その後、かつての世界の民主デモ活動(実際はCIAによる内政干渉)がロシアで起きる事を期待した記述をしてており、散らばったCIAエージェントがロシアに戻る事を働きかけているように感じた。深読みし過ぎだろうか。
過去の政治分析を様々なデータを使って示しており、優れた分析のようだ。注目するのは、「リーダーが自然死した場合は、政治が変化しない」という箇所。という事は、プーチンは自らが自然死したように見せかけ、自分の後継者に政治を引き継ぐ事は有効なのではないかと思った。
米中対立と世界
②未来ビジョンを巡る米中衝突-どちらの見方が正しいのか
マーク・レナード ヨーロッパ外交問題評議会ディレクター
反グローバリスト的な、冷静な米中論、と見せかけて、実際は中国を押している論にみえる。著者がイギリスの方なので、かつて中国と接近してCIAに阻止された英国が、また中国に接近しているとも読める。そもそも、米中どっちが良いかという論が、2つから1つを選べという、思考を限定させるロジックである。
原題の地政学は、超大国の生き残りを賭けた戦い という事には同意。
③米中、どちらを選ぶのか-大国間競争と世界
リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター会長
「(米中)二つの陣営に分かれ、各国がどちらの側につくかを選ばなければならないような世界は望まない」には同意。
アフリカがChina寄りな理由は、アフリカは貧しく、治安が悪く、個人情報保護など言っている場合ではないから、China型監視システムを受け入れたい、という認識。資源大国のはずのアフリカが何故貧しいのかは、米英(グローバリスト)のオペレーションと思っています。
軍事について、Chinaが他国に軍事基地を作ることを米国が邪魔をする行為は、自分がやってきた事を他者がすると嫌だという、なんとも利己的な論理である。
経済制裁については、対抗するには、自国で経済が回るようにすること、日本はそれができる(潜在的能力がある)と思っているので、早く、日本は、米中どっちにつくのかという属国脳を辞め、独立の道を歩きましょう。
④いかに経済的繁栄を共有するか-ベーシックインカム、社会保障の強化
ダロン・アセモグル マサチューセッツ工科大学教授(経済学)
民主的資本主義は危機に瀕しており、民主主義への市民の信頼を回復することが解決策という論。半分くらいは同意だが、民主主義が絶対に正しいわけでは無いし、一番の問題は、今の行き過ぎた資本主義だと思う。
タイトルとなっているベーシックインカム(BI)については、人々に社会に貢献している感覚を与えることができないので間違っていると論じている。私のBI感はこちらの記事にまとめています。
どのような国にBIを導入すべきか、に対する私の考えというか苫米地博士の考えは、日本は、お金のためだけに働く生活をしなくともよい社会になっているという物です。本論文の議論対象となっている、途上国でのBIについては、私は分かりません。
貿易の未来
⑤グローバル化の改善と再設計を-貿易が依然として必要な理由
オコンジョ・イウェアラ 世界貿易機関事務局長
グローバル貿易を活性化:リグローバル化 しましょう、というグローバリストど真ん中の論です。
・貿易なくして世界の脱炭素化はありえない
・有害な漁業補助金の削減は、健全な海に異存する数百万人の生活レベルを向上させる
など、すごいロジックを展開しており、ある意味関心します。
著者が、ナイジェリアの経済学者、政治家で、現在WTO事務局長だそうです、知らなかった。グローバリスト中のグローバリストだから、Covidやウクライナの反省を活かして国内生産しよう、という発想が無いんだろうなあ。
「リ(Re)グローバル」は、そのうち岸田が使うかもしれません。覚えとこう。
⑥米中経済関係のリアリティ-ディリスキングと変化しない現実
ジャミ・ミシック 元キッシンジャー・アソシエイツ会長
ピーター・オルザグ ラザード 最高経営責任者(CEO)
セオドアー・ブンゼル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター
米中経済関係について、ディカップリング(経済関係の断絶)ではなく、「ディリスキング(リスク排除)」へ向かっているという考察。
国力が低下した米がChinaに寄り添ってきた現象と理解。
モスクワで何が起きているのか
⑦ワグネル反乱の真の教訓-なぜ治安組織は動かなかった
アンドレイ・ソルダトフ 調査報道ジャーナリスト
イリーナ・ボロガン 調査報道ジャーナリスト
プリゴジンの反乱について、プーチンの力が弱まっているという西側の主張。
『「私が裏切り者と呼ぶからには、軍はプリゴジンと彼のメッセージからは距離を置かなければならない」とプーチンは言いたかったのだ』と書いてあるが、プーチンはプリゴジンを名指しで非難していないですよ。
⑧プーチン時代の終わりの始まり?-反乱が暴きだした問題の本質
リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー
マイケル・キメージ アメリカカトリック大学歴史学部教授
プリゴジンの反乱について、プーチンの力が弱まっているという西側の主張その②
注意すべきは下記記述であり、米国がロシアに内政干渉を仕掛けようとしているとも読める。
・「ウクライナでの戦争が終結し、ロシアの権威主義が弱まる」という最善のシナリオが実現されることを望む一方で、われわれは最悪のシナリオに備える必要がある。
・プーチン以上に過激で、さらに右派的で反動的なロシアの指導者が出現するかもしれない。」
Current Issues
⑨戦後も続くゼレンスキーの闘い- ウクライナの民主主義を考える
ヘンリー・E・ヘール ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)
オルガ・オヌッチ マンチェスター大学 教授(比較政治)
ゼレンスキーの、対ロシア政治手腕を高く評価している論文(プロパガンダ)。しかし、戦争が終わった後は、今とは別のスキルが求められるとも、ゼレンスキーをパトロン主義(patronalism)とも書いている。
また、下記のような記述もあり、紛争終了とゼレンスキー外しが始まった兆しとも読める。
「欧州連帯」の指導層など、ゼレンスキーに批判的な国会議員たちは、シンクタンクや(オポラ、チェスノ、民主構想財団などの)NGOなどとともに、「戦争が終わっても、ゼレンスキーはこのような強権措置を止めないのではないか」という懸念をすでに表明している
⑩ ミャンマーは米中冷戦の最前線なのか-内戦と米中の立場
イェミャオ・ヘイン 米平和研究所 客員研究員、ルーカス・マイヤース ウィルソン・センター シニア・アソシエイト(東南アジア担当)
ミャンマーの軍事政権は認めん、という内容ですが、勉強不足でコメントできません。反対勢力の、民主化のシンボル アウンサンスーチー氏についても、本物なのか、それとも世界の民主化に見せかけたCIAのオペレーションなのかも、私は分からないので、ノーコメントです。
全体を通して
ウクライナをそろそろ終わらせよう、みないな流れになっている気がしました。
8月Web速報記事はこちら
7月記事はこちら
9月記事