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世界的人口減少の時代へ フォーリン・アフェアーズレポート2024年12月感想

米国の外交シンクタンクの論文集12月号の一言感想です。
私の考えは、国家(国民)主権指示であり、”行き過ぎた” 金融資本主義には反対の立場から、本書を読んでいます。


論文10本中、トランプ関係が3本、ウクライナ関係が3本、China関係が2本あり、トランプ関係が多いのは分かりますが、それと同数ウクライナ関係であるのは、トランプ政権になってもウクライナ支援を続けることに強く拘る事が、FAR(グローバリスト側)の主張と理解しました。


世界的人口減少の時代へ

①高齢化と人口減少の時代 - 人口減少と人類社会

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 ヘンリー・ウェント政治経済チェア

専門は人口動態、開発政策、アジアの安全保障、朝鮮半島問題、グローバルヘルス

公開文『「人々が何を好ましいと考えるかが、ほぼすべての大陸で急速に一体化しつつある」。迫り来る人口減少時代への流れを作り出している大きなトレンドは、世界的に子どもをもつことを望む欲求が低下していることによって作り出されている。出生率が急激に低下し、ますます多くの社会が、いつまで続くかわからない、広範な人口減少の時代へ向かっている。結婚を奨励し、子育てを祝福する宗教的信仰も、出生率の低下が進む多くの地域で衰退しつつある。その先にあるのは、高齢化し、より小さくなった社会で構成される世界になるだろう。人口減少は、おそらく、社会がまだ考えもせず、いまは理解できないような多くの方法で、人類を大きく変貌させていくだろう。』

世界的な人口減少は人類の運命なので、官民協力して対策していこうという論文。
私は「人口減少が問題」と漠然と括るのでなく、どの程度の人口になればどのような影響があるのかの調査が必要と思います。また、人口減少が問題なら、過度なジェンダーレス等の推進は控えた方がよいと思います。

日本については下記の考えです。
 ・出生率の低下:原因は貧困化により結婚ができないから。婚姻者の出生率は減っていない。対策は減税で可処分所得を上げることなど(三橋貴明氏ブログ等より)
 ・過疎化:東京一極集中が問題。対策案の一つとして、政治と経済の中心を分ける。
 ・高齢化:食の改善(添加物をやめる)等により健康寿命を伸ばす
日本がモデルケースとなれば、人口問題においても世界貢献できる国になれるでしょうす。

関連論文
2019年7月号 人口動態と未来の地政学 ―― 同盟国の衰退と新パートナーの模索

2010年11月号 先進国だけではない、新興国の少子化で世界経済の成長は減速する

2011年12月号 ロシアの「死にゆく社会」 ―― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

2003年1月号「ユーラシアに迫りくるHIVの脅威――人的犠牲が伴う政治・経済・軍事的帰結」



二期目のトランプ政権と世界

②トランプはいかに世界を変化させるか - 高官人事と外交政策

ピーター・D・フィーバー デューク大学 教授

公開されている部分(下記)を読むとトランプに否定的な内容に思えますが、論文全体と通すとバランスよく分析しており、公開箇所に作為を感じました。

『トランプと側近チームは、高官任命では何よりも大統領への忠誠を重視することを明らかにしている。トランプへの忠誠を調べるもっとも簡単なテストは、「2020年大統領選の結果は盗まれたのか、あるいは、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件は反乱行為だったのか」を問うことかもしれない。次期副大統領となったJ・D・バンスが言うように、これらの問いに対してトランプが認める答えは一つしかない。このリトマス試験紙があれば、トランプは「チームの一員」だと考える人物だけを登用して、軍や情報機関の上層部を政治化できる。問題は、トランプのキャンペーンレトリックが、アメリカが直面する脅威を何ら理解していない、非現実的な大言壮語と薄っぺらな万能薬の類いで構成されていることだ。』

論文で触れている、トランプがアウトソースしていると言われる政策・団体
ヘリテージ財団 プロジェクト2025 日本語Wiki

America First Policy Institute

https://americafirstpolicy.com/

論文内で触れられている、元トランプ政権高官の回顧録



③ドナルド・トランプとアメリカの未来 - スティーブン・コトキンとの対話

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 フェロー

インタビュー記事。スティーブン・コトキン氏は著名な著名なロシア史の研究者で、過去多くFA誌に寄稿している。(下記リンク掲載)く発表している。
インタビューは、11月6日にドナルド・トランプが米大統領選で決定的な勝利を収めたタイミングで実施された。

序文抜粋『「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。』

トランプに肯定的な記事でした。

過去の寄稿文
2024年6月号掲載「ロシアの未来と米中露関係 - 五つのシナリオに備えよ」

2022年6月号「そして「欧米と中露」の対立へ - 現状を規定する歴史の源流とは」

2019年7月「トランプとロシア - 愚かなるがゆえの無罪」

2017年11月「スターリンとヒトラー - 二十世紀を分けた独裁者の思想と地政学戦略」

2009年12月「米中露トライアングルの勝者は誰か - 中国の影響力拡大は続く」



④トランプの政策ビジョンを考える - 衝動性と現実主義の間

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

序文抜粋『「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。』

軍産複合体にもっと投資をすべきという主張かつ、その根拠については述べていない論文だと感じました。


⑤全面戦争の時代へ - 包括的紛争時代の多様な抑止力

マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学教授

序文抜粋『戦争は人間と知的マシンとが協力して、よりスピーディーに展開され、無人機(ドローン)などの自律型ツールに大きく依存するようになった。宇宙とサイバー空間がますます重要され、しかも、「紛争勢力が多様化」している。国、テロ組織、武装集団が入り乱れているだけでなく、ウクライナ国軍にはスペイン内戦以来と思われる規模の国際的義勇兵が参加している。世界が目撃しているのは、過去の理論家が「総力戦」と呼んだものに似ている。だが、新テクノロジーと経済のグローバル化ゆえに、現代の戦争はかつての総力戦の焼き直しではない。全面戦争の時代における抑止をより信頼できるものにするには、戦争の定義が変化し、さまざまな抑止が必要になっていることを理解しなければならない。』

戦争の定義が変わってきており、全面戦争の定義も変わってきているなか、抑止力をどう持つかという論文。
私は、世界中の人々の抽象度(視点を挙げて、俯瞰して考える力)が高くなれば平和になると考えており、そのためにコーチングを学んでいます。

論文著者の本



ウクライナの未来

⑥ウクライナ戦争の世界化 - 「非ヨーロッパ化する戦争」の意味合い

マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授
ハンナ・ノッテ 戦略国際問題研究所 シニアアソシエイト

序文抜粋『ヨーロッパは、何世紀もの間、自国のパワーを対外的に誇示してきたが、いまや非ヨーロッパ諸国がパワーを誇示する舞台となりつつある。ブリュッセル、キーウ、ワシントンは、この新しい現実と折り合いをつけなければならないだろう。北朝鮮など、ロシアに兵士や軍需品を提供する国は、ウクライナを実験場として利用することで、将来自分たちが戦うかもしれない戦争に備えようとしている。戦争の流れを形作るか、戦争を終わらせる交渉に参加することで、ウクライナ戦争後のヨーロッパ形成のプレーヤーに自国を位置づけようとする非ヨーロッパ諸国もある。その多くは、ウクライナの復興にも関与してくると考えられる。』

上記論文⑤に続き、どうすれば平和になるかを考えさせられる論文。米国シンクタンクの論文なので仕方がないのですが、米国および西側が正義であり、ロシアが悪であるという前提を改め、各国の立場・考え方・言い分を考慮したアプローチが必要と思います。



⑦ウクライナ戦争を終わらせるには - 勝利の定義を見直せ

リチャード・ハース 外交問題評議会 名誉会長

序文抜粋『ワシントンは、実現不可能な勝利の定義に固執するのではなく、戦争の厳しい現実と向き合い、より妥当な結末を受け入れ、折り合いをつけるべきだ。キーウが主権と独立を維持し、希望する同盟や連合に自由に参加できることを勝利とみなし、ウクライナ全土を解放する必要があるという考えは放棄すべきだろう。アメリカとその同盟国は、ウクライナに武器支援を提供する一方で、キーウにモスクワと交渉するように求め、その方法を具体的に示すという不快な対策をとらざるを得ない。外交を模索する一方で、ウクライナを支援し続けることが、紛争を終結させるためには必要であることをトランプが最終的に理解することを期待したい。』

ウクライナとロシアを、外交によって争いを止める事を提案する論文。(ウクライナへの武器支援は継続する考えなのは同意できませんが)米外交問題評議会会長がこのような現実的な意見を出すようになった事は、世界の流れが平和に変わっていく兆しだと期待します。


⑧ウクライナ支援を続けるべき理由 - 何が問われているのか

ロイド・J・オースティン 米国防長官

オースティン米国防長官が、キーウの外交アカデミーで行ったスピーチです。
ウクライナを鼓舞するような勇ましい内容で、そのアカデミーの意図を汲んでいるとは思いますが、ウクライナの人に伝える言葉ならば、平和をイメージできる内容も含んで欲しいと思います。

公開文『プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。』


中国、台湾と米国

⑨中国を枢軸から切り離すには - 食い違う、中国と他の枢軸メンバーの利益

スティーブン・ハドリー 元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

公開文『中国と他の枢軸メンバーの利益は必ずしも一致していない。ワシントンは、それぞれの地域でロシア、イラン、北朝鮮に効果的に対抗することで、「敗者の枢軸」に中国を縛り付けることが、世界的影響力を得るための道ではないことを北京に示す必要がある。ロシアに兵器を提供すれば、中国に制裁が広く適用され、かなりの経済的コストに直面する。イランとその代理人たちの活動は、重要な石油資源を含む中国と中東の貿易を混乱させる。枢軸パートナーの冒険主義を厳格に抑え込めば、ワシントンは習近平に軌道修正を促せるし、そうすることは彼の利益にもなる。』

Chinaは、「敗者の枢軸」であるロシア、イラン、北朝鮮と接近しない方がよいという論文。私は、米国(民主党側)のプロパガンダと理解しました。枢軸とかならず者とかレッテル貼りをせず、今後の米国共和党は、話し合いで落としどころを探る外交をして欲しいです。


⑩台湾を守る曖昧戦略 - いかに壊滅的事態を防ぐか

ジェームズ・B・スタインバーグ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 学院長

序文抜粋『中台の衝突は不可避ではないが、あり得ないとも言い切れない。それを回避できるかは、米中台、三つの政府の慎重な政策の選択にかかっている。アメリカの台湾政策を批判する専門家が指摘するように、数十年にわたる「戦略的曖昧さ」路線が、米中台のいずれも完全に満足できる状況を生み出していないのは事実だろう。しかし、特定の当事者を完全に満足させる結果は、別の当事者には受け入れられないものだ。つまり、ワシントンが目指すべきは、すべての当事者が受け入れられる(複雑な)現状を特定することだ。高度なバランスを要するが、外交とはそういうものだ。』

米国の、台湾に対する曖昧戦略を評価する論文。戦争をしないためには、それが現実的なのかもしれません。

論文で紹介されている本「破滅的な事態を避けたければ、米中台の三角関係を十分に理解する必要がある」


まとめページ


フォートトーク生成「子ども、青年、中年、高齢者が自然と機械が共存する世界で笑顔で暮らしている」イメージと違う絵が生成されましたが、良い絵だったので採用

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