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「中国経済の悪夢」フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年9月号 一言感想

グローバリストの考えを知るために購読しています。(私は、”行き過ぎた”グローバル主義には反対で、国家・国民主権を支持します。)


中国経済の悪夢

①中国経済危機の本質 - 過剰生産能力の悪夢

ゾンユアン・ゾー・リュー 外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究)

Chinaのが生産過剰になっているという論文。理由は、一般的な資本主義市場だと、企業は売れるから生産するが、China企業は中共のGDP拡大優先の政策により生産を行い、それが根付いているため、生産過剰となっても止められないという事らしい。例えばソーラーパネルだと、世界の需要の2倍の生産能力を持っているそうだ。

私は、これも行き過ぎたグローバル主義の弊害の一つだと思います。Chine、欧米、日本に限らず、まずは国内を優先し、余剰があればそれを世界でどう分け合えばよいかという考えが必要と思います。

論文著者の著書
Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions  /  Zongyuan Zoe Liu (著)



東アジア安全保障を考える

②米中対立と第一次世界大戦の教訓 - 中国と20世紀初頭のドイツ

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史学)

第一次世界大戦前の英独の対立を、現在の米中対立になぞらえた論文。戦争を防ぐためには、米国は「中国の今後の経済成長をアメリカが阻止するつもりはないこと」を北京に納得させる必要があり、Chinaは輸出規制に同意すべきと書いている。

論文内で取り上げられていた本
The Rise of the Anglo-German Antagonism, 1860-1914 ペーパーバック – 1988/1/1  Paul M. Kennedy (著)
伝統的に友好国だった英独が、敵対し第一次世界大戦へと繋がった流れを分析している。

論文著者の共同著書 10/29発売予定
The Great Transformation: China's Road from Revolution to Reform (English Edition)
Odd Arne Westad (著), Jian Chen (著)




③新興大国と覇権国 - 衝突は不可避なのか

マンジャリ・チャタジー・ミラー 米外交問題評議会シニアフェロー

アメリカ(覇権国)が、China(新興大国)にどう対応すべきかの論文。
今ならまだ米国が主導権を握れる段階なので、速やかに対応すべきと論じています。

抜粋①『パワーシフト理論は、しばしば見過ごされがちな、もう一つの暗黙の真実を示している。それは「覇権国が国際秩序をどのように管理するかが、挑戦者の野心と同じくらい重要な影響を与えること」だ』

抜粋②『「新興大国が既存の秩序のどの部分を、どのように変えたいと考えているのか」を正確に把握する必要がある。ほとんどの新興大国は、全面的なリビジョニスト(現状変革論者)ではなく、国際秩序の一部の側面を嫌っているだけで、他の側面は受け入れることが多い。』

抜粋③『より賢明なアプローチは、一帯一路に代わる、より優れたイニシアチブを示すことだが、これまでのところ、ワシントンはそうしていない。』


④東アジアと中国の核戦力 - 核共有と軍備管理の間

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

米国の、対中核戦略についての論文。威嚇策を取るには韓国と日本の核武装が必要で、下記のように、日本が核戦略の保有に積極的になってきていると書いている。

抜粋『
史上唯一の被爆国である日本では、核兵器開発など、かつてなら、考えられなかった。しかし、2002年の段階で、安倍晋三衆議院議員は「核兵器の保有は、それが小型(戦術核)である限り、合憲だ」と述べた。
2020年の世論調査では、日本人の75%が世界的な核兵器禁止(条約)を支持していたが、一部の自民党指導者は核により許容的な立場をみせるようになった。2022年のロシアのウクライナ侵攻後、安倍元首相は、日本は、アメリカとの北大西洋条約機構(NATO)型の核共有協定を検討すべきだと主張した。2022年3月の調査では、日本人の63%が核共有の協議に門戸を閉ざさないと答えている。ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は2023年に、日本は「5年以内に核保有国になる方向へ向かっている」と述べ、日本の核保有への野心について、より大胆な見方を示した。

私は、日本の核武装については、核よりも新しい技術での抑止(今だとサイバー)を目指して欲しいと考えていますが、国益になるのであれば核武装の議論もすべきだと思います。
米国に命じられて選択をするのでは無く、私たち国民が、責任を持って決める事だと思います。

参考 論文で触れられている映画
『レーガンは、米中西部での核のホロコーストを描いた映画「ザ・デイ・アフター」を観るまで、軍備管理にはほとんど関心を示さなかった』



⑤気候変動とポピュリスト - 温暖化対策と文化戦争

エドアルド・カンパネッラ ハーバード大学ケネディスクール リサーチフェロー
ロバート・Z・ローレンス ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際貿易、投資)

序文抜粋『
ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。

私の気候変動についての考えは、何が問題かが明確になっていないという事です。温暖化はしているっぽいが、地球の周期的なものじゃないかと思っており、その対策は必要だが、CO2とかは企業の金儲けの手段になっているだけと考えます(森林伐採してメガソーラーを作ったり)。推進派は、反対派を避難するのでは無く、対策を金儲けにしている勢力を避難し、問題点と必要な対策を明確にすべきと思います。

米大統領選挙の政治と外交

⑥政治暴力の連鎖を防ぐには - トランプ銃撃事件と政治暴力リスク

リリアナ・メイソン ジョンズ・ホプキンス大学 准教授(政治学)
ネイサン・カルモー ウィスコンシン大学マディソン校 コミュニケーション・市民再生センター 事務局長

トランプ銃撃事件の犯人は共和党支持者であり、共和党が暴力の肯定を煽っていることが事件の原因とする論文。私は、いろいろな角度からの分析は良いと思いますが、警備の杜撰さに触れない=それを隠すような主張は如何なものかと思います。

序文抜粋『トランプは日常的に特定集団を侮辱し、政敵を「害虫」と呼び、移民をアメリカの「血を汚す」動物とさえ呼んだ。政治暴力そして大衆の暴力支持を煽り立てているのは、(政治指導者の)レトリックだけではない。文化、そして攻撃的な共和党系集団もそれを助長している。政治暴力を低下させる上で重要なのは、共和党が多元的で多民族の民主主義を受け入れる方向へ路線を見直すことだ。政治暴力への世論の許容度は党派を超えて高まっているが、右派はこの感情を現実に暴力行動に移す可能性がはるかに高い。実際、共和党が立場を見直さなければ、アメリカの政治的未来はこれまで以上に暴力的になる危険がある。』



⑦カマラ・ハリスとドナルド・トランプ - 中国にとってどちらが好ましいか

王緝思 北京大学国際戦略研究院 院長
胡然 北京大学国際戦略研究院 研究員
趙建偉 北京大学国際戦略研究院 研究員

北京大学の国際戦略研究所による、米大統領選によるChinaへの影響についての論文。民主党・共和党どちらが勝っても、Chinaへ大きな影響は無いと論じています。理由として、バイデン政権はトランプの対中政策を踏襲している事を挙げていますが、私は、Chinaの自信の表れだと感じました。

抜粋『
北京からみると、アメリカの対中戦略の専門家は概して三つに分けられる。
第1のグループは、「新冷戦の戦士(New Cold Warriors)」たちだ。彼らは、米中のライバル関係はゼロサムゲームで、ワシントンと北京は冷戦状態にあり、さらに攻撃的な戦術をとる必要があると考えている。中国との競争は「管理するのではなく、勝たなければならない」という考えだ。
第2のグループは、「競争の管理者(Competition Managers)」と呼べそうだ。新冷戦の戦士たちとは違って、彼らは、米中のライバル関係はゼロサムゲームではないから、中国と共存する戦略をとることが不可欠だと考える。中国との対立は「解決すべき問題ではなく、管理すべき状況」だと主張した。
第3のグループは、「歩み寄り派(Accommodationists)」と呼べるかもしれない。第1、第2グループと同じように、中国の政治システムと中国の世界への影響力拡大を嫌っているが、中国との競争が衝突につながることを懸念している。

論文内で取り上げていた書籍
Lost Decade: The US Pivot to Asia and the Rise of Chinese Power ハードカバー – 2024/6/11
英語版 Robert D. Blackwill (著), Richard Fontaine (著)


Current Issues

⑧イスラエルとヒズボラ - かつてない衝突へ

アモス・アレル ハーレツ紙 国防アナリスト

2―3週間ごとにイスラエル北部の国境を調査しているという、ハーレツ(確かイスラエルの新聞)のアナリストのレポート。

序文抜粋『
いまやイスラエルは、北の国境地帯におけるヒズボラとのさらに大規模な戦争の瀬戸際にあるようだ。イスラエルとヒズボラの立場は、リタニ川以南への影響力をめぐって真っ向から対立している。仮にバイデン政権が、国境周辺からのヒズボラの撤退を含むイスラエルとヒズボラ間の合意をまとめても、イスラエルの指導者たちは、ヒズボラとの決着を望む国内の声を無視するわけにはいかないだろう。イスラエル、レバノンは、民間人と国のインフラにかつてないダメージが及ぶような、全面戦争に直面する危険がある。


⑨フィッシュ・ウォーズ - 水産資源をめぐる紛争

サラ・グレーザー 世界自然保護基金(WWF) シニア・ディレクター
ティム・ギャローデット 元米商務次官

世界各地でさまざまな漁業に関する紛争が起こっているらしい。結論として、漁獲量を減らす事を挙げているが、食べる分は必要だと思いますし、適正な漁獲量を計ることは難しいと思います。「世界中の人が飢えない食料は生産されているが、それが分配されていない問題」の解決が、漁業問題の解決にも繋がると思います。

抜粋『世界自然保護基金(WWF)による最近の分析では、世界各地に20の潜在的な漁業紛争スポットがあることがあきらかになっている。南シナ海、アフリカの角、ギニア湾などの海域で軍船と漁船、外国漁船と国内漁船の衝突が続いていることを考えれば、これに驚く必要はないだろう。気候変動によって水産資源の分布が現在予想されている北へと移動すれば、北極圏、東地中海、メラネシアなど他の海域でも、紛争が過熱していく可能性は高い。』

参考 WWFのIUU(Illegal, Unreported and Unregulated「違法・無報告・無規制」)漁業のページ



フォーリンアフェアーズ一言感想まとめページ


フォートトーク生成「新興大国と覇権国の衝突」

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