東京の休日 187 〜【マリー・ローランサン ―時代をうつす眼】展@アーティゾン美術館 :優美な才に惚れ惚れといたしました〜
「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」
2023年12月9日(土) 〜2024年3月3日(日)
アーティゾン美術館 (京橋)
叶うことなら
何度でも足を運びたい
素晴らしい展覧会でございました。
柔らかな曲線
心くすぐられる色彩
...とここまでは
想定内だったのですが
今回は
画家・マリー・ローランサンの
「優美な才」にすっかりうっかり
ハートを奪われてしまったのでした。
その麗しき作品をご紹介する前に
まずは展覧会の概要から。
主役の
「マリー・ローランサン
(1883-1956)」はこのような方です。
1883年(明治16年)、フランス・パリ生まれ。
アカデミー・アンベールで学んだのち、
そこで出逢った画家「ジョルジュ・ブラック」
の紹介で
モンマルトルの丘の集合アトリエ兼住居
「洗濯舟(バトー・ラヴォワール)」にて
キャリアをスタートさせます。
「洗濯舟(バトー・ラヴォワール)」といえば
パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、
モディリアーニなど若き才能の”たまり場”。
キュビスム
(20世紀初頭の最も重要な芸術運動の一つ。
幾何学的な形/キューブによって画面を構成する
試みです。)が誕生した場所でもあります。
マリー・ローランサン自身も
キュビスムの画家として
活動を始めます。
ところが、
第一次世界大戦が始まると
フランス国外への亡命を余儀なくされます。
(ドイツ人男爵と結婚し
ドイツ国籍を有していたためです。
のちに、この方とはお別れをします。)
それでも
1921年、パリへ戻ると
個展を見事に成功させます。
また、この頃
上流階級の女性たちにとっては
ローランサンに自画像を描いてもらうことが
ステイタス。
大変な人気を誇るようになっていたのです。
そして、
第二次世界大戦中も独自の作風を守り
73年の生涯を閉じるまで
制作を続けたのでした。
このような
画家人生を歩んだ
「マリー・ローランサン」の
女性画家が生きづらかった時代に
評価を確立した姿に迫るというのが
今回の展覧会。
同時代に活躍した画家の作品約25点を含む
約90点が展示されております。
それでは各章ごとに
作品を見てまいりたいと思います。
「序章:マリー・ローランサンと出会う」
こちらは、25歳の頃の自画像。
「洗濯舟(バトー・ラヴォワール)」を頻繁に
出入りしていた時に描いたものです。
単純化された線と
同一色の面で構成されています。
キュビスムの影響を
少なからず受けている作品と
いえるでしょうか。
「第1章:マリー・ローランサンとキュビスム」
こちらは
マリー・ローランサンの描いた
キュビスムの牽引者、パブロ・ピカソです。
先ほどの自画像以前の作品。
もっとも「キュビスム」の影響を
受けていた頃に描かれたことは
色合いからも伺えるでしょうか。
ただ、マリー・ローランサンは
キュビスムに染まり切ることは
なかったようです。
著書『夜の手帖』の中に
マリー・ローランサン
《若い女たち》1910−11年
ストックホルム近代美術館
「第2章:マリー・ローランサンと文学」
自らも詩人としての顔を持つ
ローランサン。
本の挿絵の仕事にも取り組みました。
80冊以上の本に
挿絵を提供したそうなのです。
パブロ・ピカソの紹介で出逢った
恋人のギヨーム・アポリネールも
詩人として名をはせておりました。
こちらは
『椿姫』の名著再版の際の挿絵。
作品としてこうして飾ることが
ふさわしく思えてしまうほど
魅力にあふれていました。
「第3章:マリー・ローランサンと人物画」
優雅な姿、明るい色彩、夢見るような表情。
パリ社交界で、瞬く間に人気を博したのが
ローランサンの描く肖像画でした。
その背景には
戦争の影を感じさせないことが
あったようです。
第一次世界大戦
世界恐慌を経験する中で
むしろローランサンの生み出す色彩は
華やかなものになっていきます。
少女たちは真珠やリボンで飾られ
赤や黄色が登場するように。
「第4章:マリー・ローランサンと舞台芸術」
マリー・ローランサンの才は
舞台芸術の世界でも花開きます。
バレエ『牝鹿』では
舞台衣装や舞台装置を担当します。
その成功により
さらに舞台の仕事が舞い込むように。
ローランサンの作品『草上の昼食』から
着想を得たバレエの上演も行なわれました。
その際の舞台衣装、舞台装置は
ローランサンが手がけています。
「第5章:マリー・ローランサンと静物画」
この展覧会でもっともはっとさせられたのが
「静物画」。
マリー・ローランサン
《扇》1919年頃、
テート美術館
マリー・ローランサン
《レモンのある静物》1919年、
パリ市立近代美術館
あまりその印象の強くなかった
ローランサンですが
やはり静物画を描く技術も類稀なものを持っていたようです。
また、こちらのエリアには
ローランサンが絵付をしたという
二脚の椅子も展示されていました。
多岐にわたる
ローランサンの活躍ぶりを
目の当たりにできる今回の展覧会です。
「終章:マリー・ローランサンと芸術」
二度の大戦、世界恐慌、
さらに女性芸術家が評価を確立することの
困難な時代に生きたマリー・ローランサン。
その生涯に想いを馳せながら
作品を鑑賞すると
より一層ローランサンという
人物への尊敬の念が湧き上がるとともに
独自の世界を描き続け
人々から支持された
その強さと才能に感嘆させられるのです。
孤独、悲壮感
そうしたものを包み込む
マリー・ローランサンの紡ぎ出す
「パステルカラー」。
優しいとだけ勘違いしていたその色彩に
時を経ても色褪せない生命力、寛容さを
感じた今回の展覧会でした。
♡おまけ♡
アーティゾン美術館 1階の
「ミュージアムカフェ」にて
「マリー・ローランサン—時代をうつす眼」展
スペシャルコラボメニュー
をいただくことができます。
「蝦夷鹿内もも肉のロースト
かぼちゃとビーツ 5種ベリーソース」
柔らかい赤身の蝦夷鹿の内腿肉をロースト。
鹿の出汁と赤ワイン、
5種類のベリーを煮込んだソースと共に。
(ランチ・ディナー / A、B、Cコースにていただけます。)
がイメージされています。
「アンコウのポワレ イカ墨と魚貝のエッセンス 春菊風味」
アンコウと共に蟹、しじみ、トマト、
香味野菜などで作ったブイヤベースソースに
イカ墨を追加した旨味を凝縮したソースを添えて。
(ランチ・ディナー / A、B、Cコースにていただけます。)
が表現されています。
「マスカルポーネムース」
メープルシロップが香る
マスカルポーネムースに、
酸味のある赤すぐりのコンポート、
フルーツ、彩りのチョコレートで
華やかに仕上げたデザート。
を表現しています。
どのひと皿も
作品のように美しく、
さらにお味もとっても美味しくて。
鑑賞の余韻に浸りながら
堪能させていただきました。
ご利用の際には
予約をおすすめ致します。
ということで今回は
「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」展
をご紹介いたしました。
春のような優しい色合い、
自然が内包する芽吹きのような力強さを
ぜひお愉しみくださいませ。
写真・文=Mana(まな)
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