東京の休日 191〜【「大名茶人 織田有楽斎(うらくさい)」展@サントリー美術館(六本木)】すーっと茶道の新たな扉がひらかれました〜
学べば学ぶほどに
「未知」が増えていく。
それが茶道の世界のおもしろきところと
常日頃より感じているのですが
こちらの展覧会では
また新たな扉が静かにひらかれたようでした。
これに心は激しく燃え上がってしまったようで。
四百年遠忌(おんき)記念特別展
「大名茶人 織田有楽斎(うらくさい)」
2024年1月31日(水)~3月24日(日)
さっそく展覧会の概要を
みてまいりたいと思います。
織田有楽斎(うらくさい)こと、
織田長益(ながます)(1547年〜1621年)は
織田信長の13歳年下の弟で、
(信長は次男、長益は十一男だそう。)
信長の長男・織田信忠(のぶただ)に
仕えておりました。
ところが「本能寺の変」を機に
「逃げた男」と呼ばれるように。
このレッテルを今一度見直し、
ちがった角度から「有楽斎/長益」を捉えよう
というのが今回の展覧会の趣旨です。
それにしても
どうして「逃げた男」と呼ばれるように
なってしまったのか?
どうして「逃げた男」を見直す試みが
されようとしているのか?
これらの疑問を紐解きながら
展覧会をみてまいりたいと思います。
どうして「逃げた男」と呼ばれるように
なってしまったのか?
その理由は「本能寺の変」の際に
本当に「逃げた」からなのです。
36歳の「有楽斎/長益」は、
甥っ子にあたる織田信忠(信長の長男)に
仕えておりました。
「本能寺の変」の際には
二条御所で襲撃に合います。
主君・信忠は自害。
ところが、
「有楽斎/長益」は御所を
脱出したのです。
このことは、町の人々にまで知れ渡ります。
「織田の源五(「有楽斎/長益」のこと)は
人では無いよ
お腹召せ召せ
召させておいて
われは安土へ逃ぐるは源五」
と子どもたちは遊びながら
歌っていたのでそう!
今の言葉で表すと
「SNS上で大炎上」している状態でしょうか。
京都市指定文化財
《本能寺跡出土瓦》
桃山時代 16世紀 京都市【通期展示】
その後、
信雄(のぶかつ・信長の次男)に仕えますが
信雄が罪により
身分を剥奪されると
今度は秀吉のもとへ。
関ヶ原の戦いでは東軍として参戦し
戦後も豊臣家に仕えますが
大坂夏の陣の前には家康の許可を得て
主君から離れました。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三天下人に仕え
戦乱の時を乗り切ったのです。
どうして「逃げた男」を見直す試みが
されようとしているのか?
前述のように
潔く人生の決着を自らつけることが
尊ばれたこの時代に生き延びた
「有楽斎/長益」。
ところが、この価値観を一旦脇において
「有楽斎/長益」の人生を見つめ直してみると
あまりにしぶとく生きた姿が
「武士らしく」もみえてくるのです。
また、「有楽斎/長益」が
終の住処とした
京都・建仁寺の塔頭(たっちゅう)
正伝院(しょうでんいん)。
その中に建てられた茶室「如庵(じょあん)」は
現在、国宝に指定されています。
今回の展覧会では
この正伝院(しょうでんいん)の寺宝を
拝見することもできました。
《蓮鷺図襖》 狩野山楽 十六面
江戸時代 17世紀
正伝永源院 【通期展示】
蕾から満開、ちりゆく蓮の描かれた
優美な襖絵です。
《黒楽「正傳院」字茶碗》
伝仁阿弥道八 二口 江時代 19世紀
正伝永源院【通期展示】
さらに「有楽斎/長益」に始まる
「有楽流」は今も続く
茶道の流派。
400年もの間受け継がれるものを
築いたのですから、
きっとそこには素晴らしいものが
詰まっているのでしょう。
重要美術品
《大井戸茶碗有楽井戸》
一口朝鮮王朝時代 16世紀 東京国立博物館
その一つに
「つながりを大切に。
敵も味方もない。」心があります。
これは、今回数多く展示されている
手紙にもあらわれているように感じました。
《松平陸奥守書状織田有楽斎宛》
一幅 江戸時代17世紀
正伝永源院【展示期間:1/31~2/26】
「有楽斎/長益」は
千利休にも一目置かれる茶人であり
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の天下人からも
大切にされてきた存在。
「お茶」を介した人づきあいに
非常に優れた武将だったのではないかと
この展覧会で感じました。
とてもいい意味での
「人たらし」だったのではないかと。
《狸形壺》一合 明時代 15~17世紀
正伝永源院【展示期間:2/28~3/24】
その裏にあった
「感謝の念をもった人づきあい」は
今も「有楽流」の茶道で
大切にされているそうです。
ということで、今回は
四百年遠忌(おんき)記念特別展
「大名茶人 織田有楽斎(うらくさい)」を
ご紹介いたしました。
2024年3月21日(木)には
館内の茶室(サントリー美術館
6階茶室「玄鳥庵」)にて
12:00、13:00、14:00、15:00に
お点前がございます。
✴︎定員:1日限定48名(各回12名まで)
✴︎当日先着順
✴︎呈茶券は当日10:00より3階受付にて販売(予約不可、お1人様2枚まで)
ご興味のあります方は
ぜひこちらにも足をお運びくださいませ。
写真・文=Mana(まな)