東京の休日 #63 〜新春に堪能したいアーティゾン美術館の「琳派と印象派」展〜
素晴らしい展覧会でした!
『琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術』
2020年11月14日(土)〜2021年1月24日(日)
(前期展示(2020年11月14日〜12月20日)の会場風景です。)
ちょうど一年前に新しく生まれ変わった
アーティゾン美術館
(旧:ブリヂストン美術館)にて
現在開催されています。
新年にふさわしい豪華な絵画が
ずらりと並んでいました。
尾形光琳
《孔雀立葵図屏風》
ピエール=オーギュスト・ルノワール
上《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》
下《少女》
見どころは、なんといっても
「琳派」と「印象派」を
見比べることができるところ。
伊年印
《源氏物語図 浮舟、夢浮橋》
ポール・シニャック
上《ラ・ロシェル》
下《プティ・タンドリー》
共通点と相違点を
見いだしながら鑑賞できたので
双方の理解がより深まりました。
<共通点>
その誕生の「背景」にあります。
琳派は、17世紀初めに京都で
印象派は、19世紀後半にパリで
それぞれ生まれています。
《洛中洛外図屏風》
(前期の展示作品となります。)
どちらも魅惑の大都市にて
宮廷文化としてではなく
庶民のそれとして育まれた
「美術」なのだそう。
エドゥアール・マネ
《オペラ座の仮面舞踏会》
そのため、題材はより
「身近なもの」となっています。
ポール・セザンヌ
《鉢と牛乳入れ》
自然の草花や風景が描かれた作品が
多くみられるのはこのためなのですね。
尾形光琳
《李白観瀑図》
ポール・ゴーガン
《乾草》
カミーユ・ピサロ
《菜園》
表現もより「自由」なものとなり、
ポール・ゴーガン
《馬の頭部のある静物》
それまで重んじられてきた
日本であれば中国の影響を受けること、
ヨーロッパであれば宗教や王族貴族に
まつわることからは離れた作品が誕生しました。
ベルト・モリゾ
《バルコニーの女と子ども》
<相違点>
酒井抱一
《新撰六歌仙四季草花図屏風》
どちらにも描かれている「自然」ですが
琳派では、
より美しく理想化されて描かれ
印象派では、
ありのままの美しさが描かれているのです。
池田孤邨
《四季草花図屏風》
これはとても興味深い違いでした。
アンリ・ファンタン=ラトゥール
《静物(花、果実、ワイングラスとティーカップ)》
「水」の表現に、それがよく現れています。
尾形光琳の《白楽天図屏風》や
酒井道一の《松島図屏風》と
クロード・モネの
《雨のベリール》
の波。
波を題材とした美しい作品を
生み出しているのが琳派で、
波の美しい風景を
作品としてのこしているのが
印象派というのがよくわかります。
別々にみていたら気づかなかった視点でした。
(クロード・モネは《睡蓮》、《睡蓮の池》も良かったです。)
このような比較をしながら
鑑賞できたこと以外にも、
しびれるような展示が多数ありました。
エドガー・ドガの彫刻越しに
国宝、俵屋宗達《風神雷神図屏風》を
みられたことはその一つ。
エドガー・ドガ
《踊りの稽古場にて》
その「躍動感」を
重ね合わせてみてしまいました。
どちらの作品の登場人物
(神様ですが!)も
今にも躍り出しそうな気配を
漂わせているのですよね。
最後に待っている
この展覧会の象徴的な場面も。
鈴木其一の
《富士筑波山図屏風》の間に
ポール・セザンヌの
《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》
が展示されているのです。
この展示には感動しきりでした。
左右の屏風の間に
西洋絵画が展示されていること
そのものが「芸術」のようでした。
描かれているのは
どちらも神聖な山。
まるでこのように展示されることが
予期されていたかのように
色合いもぴったりと合っていて
目が離せませんでした。
日本の絵画がいかに
「余白」を大切にしているかと
いうこともわかりますよね。
酒井抱一
《芥子藪柑子図》
日本人でありながら、
「日本」について知らないことが
多いことにも気づかされましたし
鈴木其一
《藤、蓮、楓図》
その中で少しでも
日本の文化や美意識について
学べたことが良かったです。
それもこんなに素晴らしい作品の数々を通して。
中村芳中
《四季草花図扇面貼交屏風》
伊年印
《草花図屏風》
館内も美術館にとどまらない
美しいアートスペースでした。
1階のカフェもとても洗練された空間。
今回の展覧会のコラボレーション
メニューをいただきました。
《風神雷神図屏風》の風神さまを
イメージしたお抹茶ラテ
抹茶シュークリーム
雷神さまをイメージした
イカスミのトルテリーニ
《舞楽図屏風》をイメージした
ドライフルーツティー
どれも絵画の印象そのままの麗しいみた目。
お味も美味しかったです!
展覧会の余韻に浸ることができた
ひと時でした。
今回の展示は、比較をすることで
(優劣をつけるという意味合いでなく)
気づかされることがほんとうにたくさんありました。
展覧会の監修者、小林忠先生(学習院大学名誉教授)の
YouTubeでの解説もぜひご覧ください。
より理解が深まります!
なお、アーティゾン美術館の特集が
本日17時からBS朝日にて再放送されます。
「美の地平 〜ブリヂストン美術館からアーティゾン美術館へ〜」
BS朝日(BSデジタル5CH)
2021年1月3日(日)17:00-18:54
池田孤邨
《青楓朱楓図屏風》
クロード・モネ
《黄昏、ヴェネツィア》
年明けは、1月5日(火)から開館されるそうです。
(日時指定予約制となっております。)
写真・文=Mana(まな)
『琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術』
会場:アーティゾン美術館
東京都中央区京橋1-7-2
会期:2020年11月14日(土)〜2021年1月24日(日)
開館時間:10:00 - 18:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(11月23日、1月11日は開館)、11月24日、年末年始(12月28日 - 1月4日)、1月12日
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/rimpa/
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