東京の休日 #102 〜メトロポリタン美術館展:美の迷宮を旅してきました〜
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が
東京会場(国立新美術館)にて開幕しました。
〈2022年2月9日(水)~5月30日(月)〉
ニューヨークにある
メトロポリタン美術館。
この「美の迷宮」から
65点が来日している今回の展覧会。
西洋美術500年を
豪華に辿ることができます。
(メトロポリタン美術館内です。)
さっそく見どころ5つを。
1.贅沢な「集い」
ラファエロ、カラヴァッジョ、
フェルメール、レンブラント、
マネ、ルノワール、ドガ、
ゴッホ、セザンヌ、モネ...
1400年代〜1900年代に
活躍した西洋画家たちが
一堂に会するこの美術展。
イタリア、オランダ、
フランス、イギリスと
ヨーロッパ各地から
巨匠の集う歴史的な「瞬間」に
立ち会えた喜びを感じます。
カラヴァッジョ
《音楽家たち》
本場メトロポリタン美術館は
十分堪能するのに三日は必要でしたので
(アメリカ、アジア、アフリカ部門を
鑑賞することも含めると。)
アルフレッド・シスレー
《ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋》
こうして作品をハイライトで
観られる今回の展示は
とてもありがたいなと感じました。
フィンセント・ファン・ゴッホ
《花咲く果樹園》
西洋美術500年の歴史を
短い時間でありながらも
丁寧にめぐることができます。
2.巨匠の別の「顔」
クロード・モネ
《木馬に乗るジャン・モネ》。
風景画に時折ぼんやりと
人物を登場させるモネ。
御子息を描いたこちらの作品の
お顔はこれまでみたことのないほどに
はっきりとしていました。
こんなにも美しく人物を描くのならば
もっと人物画見たかったな!と
欲が湧いてしまう作品です。
ヨハネス・フェルメール
《信仰の寓意》
こちらは色合いと構図から
フェルメールと一目でわかる作品ですが
よくよく見ると
フェルメールの絵画に多く登場してきた
おしとやかな女性とは一味ちがった
脚を地球儀に乗せた女性が描かれていたり
床に蛇がいたり、
天井から怪しげなガラス玉が吊るされていたりと
フェルメールの印象ががらりと変わり
さらに人柄への興味を掻き立てられる一枚でした。
レンブラント・ファン・レイン
《フローラ》。
凛々しい男性を
黒を基調に描くことの多い
レンブラント。
こんなに優しい女性を描くことも
あるのだと驚かされました。
3.西洋絵画の「これが観たい♡」
(メトロポリタン美術館内の様子です。)
西洋美術の歴史を辿るとなると
やはり「王道」も観たくなってしまいます。
モネの睡蓮、ルノワールの少女、ターナーの光…。
まずは、
クロード・モネの
《睡蓮》からご紹介を。
柔らかい色合いの作品の多いモネですが
こちらは深いブルーと緑がとても綺麗で。
一目見た時には夜かと思ったのですが
睡蓮のお花が咲いているので
夜が明ける頃なのでしょうか。
オーギュスト・ルノワール
《ヒナギクを持つ少女》 。
ルノワールの描く
王道の少女といった一枚です。
白い肌も、お上品な衣装を纏う姿も、
優しくお花を手にしているところも素敵で。
《海辺にて》 も
来日しております。
エドガー・ドガ
《踊り子たち、ピンクと緑》
これを描いた頃には
視力がひどく衰えていたというドガ。
そのことを感じさせない
美しく色鮮やかな踊り子たちです。
ポール・セザンヌ
《リンゴと洋ナシのある静物》。
セザンヌらしい色合いに
独特でありながら落ち着く構図に
気づくと惹き込まれておりました。
《ガルダンヌ》も合わせて鑑賞できます。
その人物画をつい観たくなってしまう
エドゥアール・マネ。
《剣を持つ少年》 が来日しておりました。
ポール・ゴーギャン
《タヒチの風景》
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・ サルーテ聖堂の前廊から望む》
の風景の美しさもたまりませんでした。
さらに、
エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン
《ラ・シャトル伯爵夫人》には
やはりル・ブランの描く女性の絵は
素晴らしいなと思わされました。
マリーアントワネットを
イメージした時に浮かぶ肖像画。
それを描いたのがこのル・ブランです。
(ご本人も美しいル・ブラン氏。
こちらはフィレンツェのウフィッツィ美術館に
所蔵されている自画像です。)
マリーアントワネットを始め、
数多くのヨーロッパ上流階級の
人々に支持されてきた彼女。
飾りすぎることなく
モデルの美しさを惹き出す
天才だなと今回も感心させられて。
ポーズもドレスとお帽子も素敵なのですが
手の美しさには一層はっとさせられました。
4.「初来日」の豪華さ
65作品のうちの46点が
日本初公開ということだけでも
贅沢に感じますが
その顔ぶれもとっても豪華でした。
ラファエロ・サンツィオ
《ゲッセマネの祈り》
エル・グレコ
《羊飼いの礼拝》
カラヴァッジョ
《音楽家たち》
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
《女占い師》
今回のポスターにも選ばれている
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
《女占い師》 ですが
こちらがこの展覧会で
一番印象にのこった作品でした。
メトロポリタン美術館で
見逃していたことをひどく後悔したほど。
登場人物の交わし合う視線の怪しさ、
漂う空気の緊張感、
描かれたテーマの面白さ、
衣装の素晴らしさ、
人物と背景、占い師の老婆と隣の女性とのコントラスト
すべてが魅力的な名作でした。
5.「美の迷宮」が再現された展示
メトロポリタン美術館を訪れた数年前、
館内で少々「迷子」になりました。
実際に道に迷ったというよりは
絵画に埋もれ、出口に辿り着けないのでは
という錯覚におちいったのです。
それほど広い上に、
惹き込まれる展示の仕方を
されていたからなのですが
この「迷子」が
なんとも幸せでした。
オノレ・ドーミエ
《三等客車》
その空間が小さいながらも
この度再現されております。
明確な順路が提示されておらず
「こっちへ行ってみよう」と
歩みを進められること
次のお部屋には
どんな絵画が待っているのだろう
わくわくできることが
本場の「迷宮」のようでした。
ジャン=レオン・ジェローム
《ピュグマリオンとガラテア》
ということで、
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』
を5つの視点でご紹介させていただきました。
マリー・ドニーズ・ヴィレール
《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》
その豊かな西洋絵画コレクションに
惚れ惚れとさせられた数年前の
ニューヨークでのひと時。
その思い出が忘れられず、
美術ファンという以上に
今回の美術展は心待ちにしておりました。
ジャン・オノレ・フラゴナール
《二人の姉妹》
5月末までの開催とのことで
機会があれば、もう一度伺いたい
さらには、ニューヨークの
メトロポリタン美術館へも
また足を運びたいと夢が広がっております。
メトロポリタン美術館について
綴った記事もぜひ合わせてご覧ください。
写真・文=Mana(まな)
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』
会場:国立新美術館 企画展示室1E
東京都港区六本木 7-22-2
会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)
開館時間:10:00〜18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館)
https://met.exhn.jp