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東京の休日 164 〜【大阪の日本画】展:悪魔派、船場派、なにわ風俗画に感性をくすぐられました〜

『大阪の日本画』
2023年4月15日(土)〜6月11日(日)

東京ステーションギャラリーにて。

新しい画家との出逢い、
そして新たな「大阪」のイメージの開花と
とっても充実した内容でございました。



素敵な作品のご紹介の前に
まずは展覧会全体のお話を。

明治、大正、昭和。

近代の大阪で活躍した
画家50名以上の作品が集められたのが
今回の展覧会です。

主に、昨年2022年に開館したばかりの
「大阪中之島美術館」から作品が来ております。


京都、東京の日本画の影に隠れていた
大阪のそれにスポットライトがあたるのは
とても珍しいとのこと。

絵画を通して
大阪という魅惑の街のエッセンスに
ふれられたようでした。





それでは、
この展覧会の主役となる

大阪の画家たちを
作品とともに紹介してまいります。


まずは
北野 恒富(きたの つねとみ)
1880(明治13)年〜1947(昭和22)年。

「大阪の日本画」の
第一人者。

浮世絵を学びながら
挿し絵やポスターを描いてきた画家です。

「美人画」で一世を風靡するのですが
描く女性たちの目元はなんとも妖しげ。

「悪魔派」と呼ばれるように。

ただこれが当時の大阪の人々には
受け入れられず

作風を変化させ描いたのがこちらでした。

《宝恵籠(ほえかご)》
1931(昭和6)年頃

毎年一月十日に今宮戎神社(大阪)で行われる
商売繁盛を願う行事
「十日戎(とおかえびす)」。

この時に登場する
「推し」の芸妓さんなどを旦那衆が担ぐ
「宝恵籠(ほえかご)行列」のひと場面が
描かれています。

初々しい表情、
お着物の柄の繊細さに見入ってしまう
一枚です。




続いて、

中村 貞以(なかむら ていい)
1900(明治33)年〜1982(昭和57)年。

70名以上いたと言われる
北野 恒富(きたの つねとみ)の
お弟子さんです。

《失題》
1921(大正10)年

大胆な構図で、
お化粧、衣装が目を惹く
女性が描かれています。

みればみるほどに
興味をそそられる作品です。




「船場派(せんばは)」
と言われたのは

深田 直城(ふかだ ちょくじょう)
1861(文久元)年〜1947(昭和22)年

を始めとする画家たち。

裕福な商人が
床の間に飾る作品として
好んだのが

「船場」の地で生まれた
船場派の作品でした。

あっさりすっきりがその特徴。

《糸桜猿猴》
1893(明治26)年

もその一つです。



そして、
菅 楯彦(すが たてひこ)
1878(明治11)年〜1963(昭和38)年。

江戸情緒あふれる街並みを
はんなりと描いた
「浪速(なにわ)風俗画」。

これを確立した画家です。

人々のありふれていながらも
尊い暮らしを細やかに表現していて。

絵画全体の優しい雰囲気と

東京ステーションギャラリーの
レンガの壁との相性の良さも
またぐっとくるポイントでした。




そのお弟子さんが

生田 花朝(いくた かちょう)
1889(明治22)年〜1978(昭和53)年。

《天神祭》では
これまた江戸時代の装いの人々が
にぎやかに集う様子が描かれています。



島成園(しませいえん)
1892(明治25)年〜1970(昭和45)年

の作品も
とても印象にのこるもの。

《祭りのよそおい》
1913(大正2)年

愛らしい少女たちの作品にみえますが
実は「格差」をテーマにしているのだそう。

こうした社会的課題を
主題とする画家なのです。




ギャラリーをあとにし

作品を振り返ると
大阪のイメージと思い込んでいた
「華やか」「にぎやか」が

「繊細」で「温かい」に変わっておりました。


それも、作品の買い手が
「商人」だったことにあるよう。

自宅やお店に飾る作品を求めたのです。

これにすんなり応えたこともまた
大阪の画家たちの特徴。

ちなみに、
京都は「貴族」
東京は「武家」が
買い手でした。


ただ一つ残念なことに
大阪の日本画が発展しなかった理由には

パトロンとなっていた商人たちの人気が
巨匠に集中し

若手にまで活動の場の
広がらなかったことがあるよう。



それでもこうして
現在のわたしたちの

感性をくすぐってくれる
「大阪の日本画」ですので

まだまだ脈々と受け継がれている
ように感じます。



ということで
大阪の新たな魅力に
気づかされた

『大阪の日本画』展

今回はご紹介させていただきました。


ぜひ東京ステーションギャラリーの
美しさとともにご堪能くださいませ。


写真・文=Mana(まな)

『大阪の日本画』
会場:東京ステーションギャラリー
 東京都千代田区丸の内1-9-1
会期:2023年4月15日(土)〜6月11日(日)
開館時間:10:00〜18:00
 ✴︎金曜日は20:00まで開館
 ✴︎入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(5/1、6/5は開館)
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202304_oosaka.html


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