革財布にハンドクリームを塗ればつやつやになる
今日も他人から提示されたテーマに合わせて、反射的に文章を書きます。
「30歳までに卒業したいいくらかの童貞」というのを掲げている。
これが何かといえば、「周りの人の6,7割は経験済みなのに自分はまだ」を潰していきたいという想いだ。スラムダンク童貞とか、ディズニーシー童貞とか、松屋で食事童貞とかがある。探してみると意外となくて、意識せず経験済みのものは多く、未経験のものを探すと周りもたいして経験していないものだったりする。然してこのたび、意に反してではあるがひとつの童貞を卒業してしまったのである。
お財布紛失童貞だ。
仕事へ向かう道すがら、数日前に行った病院から電話がかかってきた。電話の主が言うのだ。「お財布を落とされたようで、警察から電話があったのですが」と。
いやいやー、今日はさっきはじめて家でたんですよー財布なんてどこで落とすんですかー。と思いつつ。鞄の中を探るも、たしかに財布はない。普段細かい買い物は交通系ICカードなんかで行ってしまうが故、財布がないのに1日以上気づかなかったわけである。どこかで落とすか盗まれるかして、後に警察に届き、どうやら財布の中に病院の診察券が入っていたから警察がそこへ連絡をくれたらしい。
財布は警察署に届いている。が、中身があるかはわからない。現金、身分証明書、キャッシュカード、クレジットカード、その他諸々。なくなっていたらどうしよう。とりあえずなんか、連絡入れたりとか、しなきゃ。そう思うも、財布紛失なぞ初体験なので、何をどうしようかわからない。
連絡?どこに入れるの?
このあとどう動くの?
っていうかいま自分かっこ悪い?
なんか色々わからなくなって、無意識に最初にしたことといえば、とりあえずものすごく丁寧にハンドクリームを塗っていた。いい香りである。
いや。何をすべきかはわかっているのだ。キャッシュカード止めて残高を確認してもらい、クレジットカードも停止。警察にも電話。他人に迷惑がかかるものが入っていれば連絡。あらゆる手続きはスマホでできる。でもなんか、行動できない。イヤホンから流れるご当地アイドルソングを「いい歌だなぁ」とか思いながらハンドクリームを指先に塗り込んでいる。なんやかんや日本は財布が戻ってくるって聞いたことあるし大丈夫じゃない?とか考えていたりする。
ちなみにこういうのは心理学用語で「凍りつき症候群」とか「アンカリング」とか言ったりする。想定外のことが起こってしまったときに、茫然として何もできなくなるのが凍りつき症候群。以前得た知識・情報にとらわれて思考停止してしまうのがアンカリングである。そこまで知ってるくせにできないのかよ。って、思うじゃん?
できない。「これがアンカリングかー」と思っている。震度7が来たらまず死ぬタイプだ。なんならハンドクリームを塗りながら、「あ、今日指定されたテーマ『ハンドクリーム』やったな」と思いついて状況のメモまでとりはじめた。
そう、今日のテーマは「ハンドクリーム」だ。
そういえば4年前に救急車で運ばれたときも「何かのネタになるかも」と、薄れ行く意識の中メモをとっていた。成長がないものである。
このあと、唯一の支払い手段であるpasmoに残高がありますようにと過去の自分に祈りながら改札を通ったり、タクシーが軒並みpasmoNGで久しぶりの全力疾走をすることになったり、結局仕事には遅刻をしたり、仕事の終わりが警察署の受付終了時間ギリギリになり再度全力疾走をしたりして、なんやかんやあって、夕方財布を手にすることができた。
現金、カード類、クリーニングの引換書、友人から締切を飛ばすなよともらったお守り「締切守」。全て無事であった(届けてくれた人本当にありがとう)(でも右往左往していたら締切は1件飛ばした)。
なんだかやたらとハンドクリームを塗ってしまったので、普段ささくれの多い指先も、今日はつやつやである。一方、心はささくれまくりだ。疲れた。心に塗れるハンドクリームもほしい。ハンドじゃないな。何クリームなのか。
あれこれと考えながら、コンビニでシュークリームを買って帰った。もちろん現金で。財布は握りしめて。もう二度と君を離さないとピュアに誓う。
以上。今日のテーマは「ハンドクリーム」でした。