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『さかさまに』のこと【再掲・加筆】
試しにnoteのアカウントを取って、ひとつご挨拶の投稿をしてから、何も書かずに11年が経ってしまいました。なんということでしょう。
※この記事は2012年5月18日に執筆した内容に、一部修正して再掲したものです。そして最後に新しいセクションを加筆しています。
『さかさまに』を投稿してから13年が経ちました。試しにTwitterで検索してみると、今もたまに突発的に話題に上がっていることを知りました。本当にありがとうございます。多くのみなさんのご協力のもと完成した作品なので、多くの方に聞かれ続けているのは心からうれしい限りです。
『さかさまに』制作秘話
さて、この『さかさまに』の舞台裏についてお話ししたいと思います。この曲をライブなどで演奏したときにはMCでちらっとお話ししたことがありますが、この歌詞には元ネタがあります。
中学か高校ぐらいのとき、友人宅へ遊びに行ったときのことです。その友人が「こんなお話が新聞のコラムに載っているで」と言って見せてくれたのが、「老人の人生が逆行して行き、最後には赤ちゃんになる」という『さかさまに』という小説のことでした。
ちらっとそんな話を聞いただけなのできれいさっぱり作家の名前も忘れたし、もちろんその本を手に取ってすらいません。ですが、なぜかこのタイトルとあらすじが妙に頭の中にこびりついていて、ふとしたときに頭の中に蘇るのでした。
そんな中、自分で企画した生演奏コンピThe Art Of Real Sounds vol.1に曲を書くことになり、まるで呪縛のように頭から離れない一文から色々と連想させていこうと思い立ち、するするっとそこから引っぱり出てきたのがこの曲です。タイトルもその記憶の彼方にあるお話からお借りすることにしました。
ところで、先日その友人と久々に飲む機会があり、このことを話しました。すると、そのコラムに紹介されていたお話を教えてくれました。大佛(おさらぎ)次郎さんの『さかさまに』というお話だったのですね。なんだかそれが分かった瞬間、幼なじみの友人に10年ぶりに出会ったような、なんだかそんな感覚になりました。
しかしまあ、あらすじをちらっと見たら、自分の記憶とは全然違うお話じゃないですか。人間の記憶なんて、いいかげんなものですね。でもせっかくだし、一度読んでみたいものです。なんだかもう、他人事のように思えませんから。
2025年になって 今さらながらの追記
というわけで、今から13年前に以上のような記事をTumblrで執筆したのですが、実はこのときに記していた友人というのが、1万人もフォロワーのいる現役高校古典教師の八神夕歌さんです。彼は隣町に住む、同じ中学校のクラスメイトでした。
当時はともに文芸部に所属していて、ともに作家になることを目指して小説を書きあい、見せあいっこをして感想を言い合ったり、お互いの家に遊びに行って一日中ゲームをしたりしていた、大切な友人です。高校以降は別々の進路を歩むことになりましたが、今でも記憶の引き出しから多くの楽しかった思い出を呼び戻すことができます。
彼は自身の結婚式に僕を招待しただけでなく、なんと新郎の退場の際にこの曲を大音量で流したのでした。曲の内容を考えると、決して結婚式にふさわしい曲とは思えないのですが、それだけこの曲が彼にとって大切なものになっていたということ、そして彼の人生の晴れ舞台でこの曲を選んでいただいたことは非常に光栄に思います。
今も交流が続いていて、2024年の帰国時には久々にお茶をすることができました。やはり旧知の仲の友人というのは、会った瞬間に最初に出会ったころの年齢に気持ちが戻っていくから不思議なものです。
ちなみに、元ネタである大佛次郎さんの小説についてはいまだ読めていません。だって購入すると6,000円もする本ですから。なかなかチャンスがないまま今に至っています。
今さらながらこの記事を再掲しようと思った経緯にはいくつかあります。ひとつはこのnoteのアカウントをこれから再活用しようと考えていること。もうひとつは、今年ボカロ活動をゆるゆると再開しようと考えていることです。
間もなく2曲ほどの公開を予定しており、新しい曲の作成も進んでいます。『さかさまに』を公開してからもいろんな作品を投稿したのに、13年も経った2025年の今でも代表曲が変わらないというのにはなんとなく歯がゆいものがあるので、より良いものが作れるように気合を入れるべく、当時の記事を再編集したうえで公開しました。
また、実はこの公開を控えている作品のうちの1曲には、八神さんに大きく関わっていただきました。中学校を卒業してから25年以上が経ち、ようやく実現するコラボレーションです。そのような経緯もあり、今回久々に『さかさまに』のことを再編集したうえでつづってみました。また八神さんのファンの皆様も、そちらをお楽しみにしていただけると幸いです。
8年もボカロ曲動画を投稿していなかったので、自分は多くの皆様に忘れられている存在かもしれませんが、またボカロPとしての第二期をのびのび楽しみながら活動したいと思います。どうぞこれからもよろしくお願いします。