エニグマのMVは、スゴそうだけどヘンテコ映像がてんこ盛り?(オススメMV #79)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の79回目です。(連載のマガジンはこちら)
今回はエニグマの特集をお送りします。
といっても、エニグマをご存知の方はそんなに多くないかもしれません。
しかし、テレビ番組のオープニングで使われた楽曲があり、その楽曲を聴いていただければ「あっ、これ聴いたことある!」と多くの方が思われると思います。
では、最初にその楽曲のMVを紹介しましょう。
エニグマの「Return To Innocence」です。どうぞ!
モノクロから始まるシブい映像のMVです。
すばらしい楽曲とのマッチングもよく、良質のMVとして仕上がっています。
エニグマ(Enigma)は、1990年にドイツで結成されたプロジェクトで、ルーマニア出身のマイケル・クレトゥ(Micheal Cretu)がメインですが、メンバーの出入りがあったのち現在はクレトゥのびとりプロジェクトとして活動しています。
分野としては、昔で言うシンセサイザーミュージックですが、民族音楽や宗教音楽も取り入れた独自の音楽性を持っています。
今でこそシンセサイザーミュージックと多様な音楽要素との組み合わせは一般的ですが、その先鞭ともいえます。
そして、そのエニグマの代表曲が、この「Return To Innocence」です。
だいぶ前ですが、テレビ朝日系の報道番組「ニュースステーション」のオープニングで使われていたと聞くと、「あー、確かに!」とうなずかれる方が多いと思います。
この「Return To Innocence」は、1993年リリースの2ndアルバム「The Cross of Changes」に収録されていますが、楽曲のタイトルを直訳すると「無垢への回帰」という感じでしょうか。
MVもそのタイトルの通り、老人が亡くなるところから始まり、人生をさかのぼっていく映像となっています。
最後は赤ん坊の映像で終わるので、まさしく「無垢への回帰」ですね。
しかも、人生をさかのぼっていくだけでなく、映像自体も逆回しで流れるところが安直と言えば安直な表現ですが、そこが印象付けにもなっているので、微妙なギリギリのラインを攻めてきたなと感じました。
その結果、ギリギリセーフで、逆回しの映像表現がチープとならずに良い印象付けとなっています。
多分、逆回しの速度や映し出される映像によってはチープに感じると思われるので、試行錯誤を繰り返したうえでの結果ではないでしょうか。
この「Return To Innocence」のMVは、楽曲のタイトルをある種安直に映像として表現した点では「ヘンテコMV」と言えますが、その結果としては決してヘンテコではなく良質のMVとして仕上がっています。
しかし、そんな「ぎりぎりセーフ」のMVだけではなく、「イイんだけど、これナニ?」という、もう少しヘンテコ度合いの高いMVがエニグマには山盛り存在しています。
続いては、もう少しヘンテコ度合いの高いMVを紹介しましょう。
エニグマの「The Eyes Of Truth」です。
赤ん坊が川に流されて、ゾウが拾って育てて旅をする...というキテレツなストーリーを、エニグマの荘厳な楽曲と、映画張りの映像で表現した、すばらしいがヘンテコなMVです。
この「The Eyes Of Truth」は、先に紹介した「Return To Innocence」と同じ2ndアルバム「The Cross of Changes」に収録されていますが、タイトルを直訳すると「真実の目」でしょうか。
そういわれてみれば、MVの後半の寺院の映像では目の画像が強調して表現されていますが、タイトルとの関連はそれぐらいで、映画張りの映像が何を表現したかったのかは何度観ても分かりません...
しかし、ヘンテコ感はぬぐえないものの、MVを観て受ける印象は悪いものではなく、繰り返しの視聴に耐えうるものです。
それは、エニグマの楽曲自体が素晴らしいことと、その楽曲と映像が不思議なほどマッチングしているからと言えます。
しかし、この楽曲を聴いていると、傑作映画「バーフバリ」の映像が脳裏に浮かんできてぬぐうことができません。
「バーフバリ」の映像とこの楽曲の親和性が良いのではないかと思われるため、検証の意味も含めて「バーフバリ」の映像を編集し、この「The Eyes Of Truth」を流してオリジナルのMVを作ってみようかとひそかに考えているところです。(公開はせず、あくまでも個人の楽しみとしての取り組みです)
ちなみに、「バーフバリ」は2015年公開のインド映画なのですが、超オススメなのでご興味ある方はぜひご覧ください。
さて、話をエニグマのMVに戻しましょう。
エニグマのヘンテコMVはこんなものではありません。
続いてのMVは「大マジメにヘンテコMVを作った!」ともいうべき、壮大なヘンテコMVです。
エニグマの「Beyond The Invisible」です。
お父さんとけんかして家を出てきた女の子が異次元に迷い込み、ヘンテコな3人組と共に向こう側に行ってしまう...というストーリーでしょうか?
もう何も語ることがないほど、ヘンテコ度合いがMAXです。
この「Beyond The Invisible」は、1996年リリースの3rdアルバム「Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!」からのシングルリリースで、タイトルを直訳すると「見えないものの向こう側」とでもいうのでしょうか。
ちなみに、アルバムタイトルの「Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!」はフランス語のようですが、こちらを和訳すると「王国崩御!」になるようです。
前に紹介した2つの楽曲が収録される2ndアルバム「The Cross of Changes」は民族音楽っぽいテイストでしたが、この3rdアルバム「Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!」は民族音楽に加えて若干未来的な要素を組み合わせたような楽曲が多いように感じます。
それを象徴するかのように、この「Beyond The Invisible」のMVに登場する3人組は、めちゃくちゃヘンテコではありますが、未来から来たような風貌のようにも表現されています。
では、MVのほうに目を向けてみましょう。
まずは上にも書きましたが、3人組のヘンテコ具合が強烈ですね。
アルバムタイトルの「王国崩御!」から考えると、王国からの使者のようにも思えます。
お父さんとけんかして家を出てきた少女が、現世と異次元との境目の空間、いわゆる「トワイライトゾーン」(古い!)に迷い込み、そこで異次元の王国からの使者が彼女を異次元に誘う...という感じでしょうか?
それにしても、この世界観はなかなかなものです。
木なのか森なのかの精霊っぽい表現もありつつ、アイスダンスの男女が衣装を変えて幾度となく踊り、その中でヘンテコ3人組が圧倒的な存在感を示しています。
唯一無二とはこのことですね。
この世界観に大マジメに取り組み、「これでもかっ!」と徹底的に表現しているところにこのMVの価値があります。
そして、その結果、超ヘンテコではあるものの素晴らしい作品として仕上がっているところが、またスゴイ!
ちなみに、ヘンテコ3人組を見て、なぜか傑作映画「ヘルレイザー」のピンヘッドというキャラクターを思い出してしまいました。
いわば、陰のピンヘッド、陽のヘンテコ3人組...という感じです。(メチャクチャな表現ですが...)
だいぶ脱線してしまいますが、「ヘル・レイザー」は私の大好きな作家「クライヴ・バーガー」が自身の原作を自ら監督したファンタジー・ホラー映画で、1987年公開なのでもう35年も前の作品です。
しかし、エニグマのこのMV同様、たぐいまれなる独自の世界観を構築し、今でも色あせることのない名作として存在しています。
ご興味のある方はぜひ一度ご覧ください。
話がそれてしまったので元に戻しましょう。
本当はこの3つのMVで終わる予定でしたが、エニグマにはヘンテコMVが山盛りあるので、最後におまけで1つ、ヘンテコMVを紹介させてもらいます。
エニグマの「Push The Limits」です。
草原で古いテレビゲームに興じる男女2人組がおり、テレビゲームの中では剣道で戦いつつ、ベッドの上など異なる次元でも戦っていますが、何を表現したいのか全く分かりません。
しかも、チープなお面が何を意味するのか...
この「Push The Limits」は4thアルバム「Screen Behind the Mirror」に収録されていますが、楽曲タイトルを直訳すると「限界を超えろ」といった感じでしょうか。
アルバムタイトルは「鏡の向こうの情景」とでも訳せそうです。
楽曲とアルバムの意味を考えながらMVを観てみると、何となくわかりそうな気がするものの、やっぱり何のことが分かりません...
エニグマのMVは意味を考えて観るものではないのかもしれませんね。
なお、エニグマは今まで8枚のアルバムをリリースしていますが、最初はほぼ3年ごとにリリースしていたものの、2008年に7thアルバムをリリース後、次に8thアルバムをリリースしたのがなんと8年後の2016年となります。
もし同じサイクルであれば、次のアルバムは2024年になりますので、あと2年待たなければなりませんね。
早くエニグマの次回作、というより新しいヘンテコMVを観たいと願っている今日この頃です。
さて、今回のエニグマのヘンテコMV特集はいかがでしたでしょうか。
ヘンテコと言いつつクオリティの高いMVが目白押しで、かつ楽曲もオススメですのでぜひ視聴してみてください。
ついでに、映画「バーフバリ」と「ヘル・レイザー」も超オススメですので、映画好きの方はぜひ!
ではまた次回に。