速報。ロイクソップの最新作は、超絶ヘンテコでMVでもないが、とにかくイイので観てほしい!(オススメMV #78)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の78回目です。(連載のマガジンはこちら)
今回は、ロイクソップから超絶ヘンテコなMVというか映像作品が公開されたので、当初お届けしようと思っていた内容を変更して、急きょロイクソップの特集をお送りします。
まずは、先日3月23日にYouTubeのRöyksoppチャンネルで公開された、MVというか動画作品をご覧ください。
ロイクソップの「I Hate My Shelf」です。どうぞ!
この映像はいったい何なんでしょうか?
何を伝えたいのか、何を感じてほしいのかは全くわかりませんが、決して嫌な感じはなく、何度も観てしまう不思議な作品です。
ロイクソップ(Röyksopp)は、北欧ノルウェーのエレクトロデュオで、1998年結成の大御所です。
私のお気に入りのアーティストのひと組で、この連載でも過去3回登場しており、過去の回で彼らの紹介もしていますので、ご興味ある方はご覧いただければと思います。(1回目、2回目、3回目)
ロイクソップは、2014年に6thアルバム「The Inevitable End」をリリースし、以降はアルバムをリリースしないと明言していたのですが、なんと今年2022年4月に「Profound Mysteries」というアルバム(多分...)をリリースするようです。
既に一部の楽曲がネットで公開されているのですが、単純なアルバムというのではなくプロジェクトとしてリリースされるようで、今後の展開が楽しみです。
さて、この「I Hate My Shelf」ですが、ロイクソップの作品というより、共同でクレジットされているアンドレアス・ニルソンの映像作品といったほうが適切なのかもしれません。
アンドレアス・ニルソン(Andreas Nilsson)は、スウェーデンの映像参加で、主にUKのアーティストのMV監督を多く務めており、ロイクソップやフィーバー・レイの作品も手掛けています。
肝心の「I Hate My Shelf」の内容ですが、全く意味が分からず、頭の中に疑問符(?)がたくさん浮かんでくるばかりですが、なぜかとりこになり、公開されたあと、毎日何回も観ているという有様です。
もう完全に中毒ですね。
壮年の男女が登場しますが、ケバケバしいメイクの女性に、裸に白いパンツ一丁の男性というシンプルなキャスティングです。
その男性が、コップが端に乗っている木製の棚に息を吹きかけて回し始める...という、これだけでもヘンテコ具合がMAXです。
この男性ですが、隠れた名作映画「ゴールド 金塊の行方」で私のお気に入りの俳優のひとりであるマシュー・マコノヒー演ずる主人公の男性の、裸に白いパンツ一丁の姿と不思議とダブってしまったことが、全く違和感なく受け入れられた原因かもしれません。
不思議感満載の映像ですが、この作品はオチがないというか、最後まで描かれていないことも特徴のひとつではないかと思っています。
この件については、のちほど詳細に解説させていただきます。
実は今年に入ってロイクソップは立て続けにこの手の作品を公開し、この「I Hate My Shelf」が4作品目となります。
せっかくですので、最初にリリースされた作品から時系列に順を追って紹介しましょう。
最初は2022年1月13日に公開されたコチラの作品です。
ロイクソップの「BJA」です。
インパクトはありませんが、ジワーとしみいるような映像ですね。
ロイクソップの楽曲も環境音楽かと思わんばかりの楽曲で、映像とともに落ち着いた作品となっています。
この作品は、カスパー・ヘッグストロム(Kasper Häggström)というノルウェーの映像作家が制作しています。
この方はレディオ・ヘッドのMVも手掛けたことがあるようですが、詳細な情報は不明です。
この「BJA」は、最初の作品ということもあってか、映像のインパクトはそれほど強くなく、かつロイクソップの楽曲も抑え気味で、全体的な印象はおとなしいというか、印象付けとしては弱い映像作品となっています。
この作品についても、オチがないというか途中で終わっているのが特徴と言えます。
この「BJA」が最初の作品として2022年1月13日にYouTubeで公開され、その約1週間後の1月28日に公開されたのが2つ目の作品となります。
ロイクソップの「The Downfall」です。
もうギャグとしか言えないような映像作品です。
ボーカルが入った分、若干印象付けはあるものの、落ち着いた楽曲で幾分映像が前に出る作品となっています。
この「The Downfall」の監督を務めたのはマーク・ライスビッヒ(Marc Reisbig)という、こちらもノルウェーの映像作家ですが、詳しい情報がないため、どんな方でどんな作品を今まで制作されていたのか、お伝えすることができません。
この作品もオチがなく、この先どうなるのかわからないところは前作と同様ですが、違う点としては前作はインストルメンタルでしたが本作はボーカルが入っているところでしょう。
その分、前作に比べて印象付けとしては強い作品となっています。
そして、この「The Downfall」の公開から約1か月後の2月23日に公開された作品であり、「I Hate My Shelf」の前作に当たる3作目がコチラです。
ロイクソップの「The Conversation」です。
シブい映像ですが、正直「なんのこっちゃ」という感じで、ヘンテコ感満載の作品となっています。
しかし、映像のインパクトは前2作と比べて確実にあり、かつ楽曲のインパクトもあるため、総じて印象に残る作品となっています。
この作品を監督したのは、マーティン・デ・トゥーラ(Martin De Thurah)というデンマークの映像作家で、ロイクソップのMVで一番のお気に入りである「What Else Is There ?」の監督も務めており、そう思って観るとロイクソップの楽曲とのマッチングも前2作と比べて良いように思います。
この作品は、オチがあるとかないとかのレベルというかカテゴリではなく、この男性が上の目線で語り掛けるのは誰なのか、逆に下の目線で語り掛けるのは誰なのか、そして何を語っているのかが全く分からないまま、上の目線で何かをしゃべろうとした瞬間に映像が途切れ、ロイクソップのマークが表示されるという、まさしく「なんじゃ、こりゃ」の世界です。
本作は、映像も楽曲も前2作に比べてインパクトが強く、印象に残る作品となっていますが、前作のボーカルありに対して今回は第1作目と同様インストルメンタルの楽曲となっています。
つまり、インストルメンタルであっても、ボーカルありの2作目より印象付けが強い楽曲となっています。
順番に見ると以下のようになっています。
第1作「BJA」:インストルメンタル、印象付けは弱い
第2作「The Downfall」:ボーカルあり、印象付けは第1作よりは高い
第3作「The Conversation」:インストルメンタル、印象付けは更に高い
第4作「I Hate My Shelf」:ボーカルあり、印象付けは4作中最も高い
こうなると、次の作品がどんなインパクトを提供してくれるのか楽しみです。
さて、そろそろ本題に参りましょう。
すべての作品にはオチがなく、最後がどうなったのかがわからない...という点が全作品の共通点であるとお伝えしましたが、それについて少しお話させてもらいます。
皆さん、「赤塚不二夫」というギャグ漫画家をご存知でしょうか。
もう鬼籍に入られている方ですが、赤塚不二夫さんはギャグ漫画、いやすべての漫画に対してこれまでにない取り組みをいくつもされている、いわば開拓者というべき方なのです。
その取り組みのひとつが、「最後まで描かない」という点にとなります。
例えば、登場人物が道を歩いていて、路面の石につまずいてこける...という場面を描くときに、今までの漫画ではコケるところを描くことで印象付けを行い、どんなこけ方をするのかで笑いを誘っていました。
しかし、赤塚不二夫さんは、どのようにコケたのかは描かずに、石につまずいてこける一歩手前までを描くことで、その先の状況を読者に想像させることで笑いを取られたのです。
これは今では当たり前に使われているテクニックですが、それを日本の漫画で最初に取り組まれたのは(私調べですが)赤塚不二夫さんが最初となります。
そして、話を戻してロイクソップの今回の4つの映像作品についても、同様の取り組みがなされているのではないかと考えています。
全てを描き切るのではなく、途中で止めることにより、その先の状況を読者に想像させることで印象付けを狙っているのではないかと。
もちろん、あくまでも私の推測ですので、実際のところはわかりませんが、皆さんはどう思われたでしょうか?
今回は、あまりに素晴らしい作品が公開されたため、急きょ予定を変更してロイクソップの映像作品を4つお届けしました。
特に、最新の「I Hate My Shelf」は超絶オススメですので、ぜひご覧ください。
ではまた次回に。