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プレイング・フォー・チェンジのチャレンジは、多様性による成果の最大化とも言えるのではないだろうか(オススメMV #160)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の160回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は、プレイング・フォー・チェンジというプロジェクトの動画を紹介するとともに、その取り組みと多様性との関連性について考察してみたいと思います。

まず、皆さん、プレイング・フォー・チェンジってご存じですか?
実は私自身、昨年初めてYouTubeにレコメンドされて視聴し、その動画がお気に入りになり、動画が制作された背景や経緯を調べてみました。
そして、『こんな取り組みがあったなんて知らなかった!』と感動し、年始初めての投稿となる今回、満を持して皆さんにお届けする次第です。

では、さっそくその動画をご覧ください。
最初は、サンタナ夫妻が参加するこちらの動画。
プレイング・フォー・チェンジの「Oye Como Va」です。どうぞ!

めちゃくちゃイイでしょ!
色々なミュージシャンが入れ代わり立ち代わり登場して、様々な楽器を演奏ししたり歌いながら、全体の楽曲を構成しているのです。
しかも、それぞれのミュージシャンの演奏している姿や表情、そしてその周りの風景が組み合わさり、最高のMVとして仕上がっています。
こんな動画、いやMVは観たことがありません。感動です!

プレイング・フォー・チェンジ(Playing For Change)は、2002年にマーク・ジョンソンとホイットニー・クロエンケという方によって始まったプロジェクトになります。
上の動画でもわかる通り、様々なミュージシャン、それも世界各国のストリートミュージシャンの演奏や歌唱を組み合わせて(重ね合わせて)ひとつの楽曲と映像として構成し、動画を制作しているのです。
上の「Oye Como Va」では、元の楽曲のメイン奏者であるサンタナ夫妻も登場していますが、基本は世界各国の一般のストリートミュージシャン達で構成されているところも特徴になっています。
この動画をMV(MusicVideo)と呼べるかどうかは微妙ですが、それぞれのミュージシャンの動画を編集し再構成して新たな動画として制作されていることから、ミュージックビデオと呼んで差し支えないと判断し、今回お届けしています。(というか、皆さんに紹介したいので、無理矢理のこじつけではありますが...)
本来MVは、PV(PromotionVideo)という側面も持っており、楽曲の販売促進(プロモーション)の役割もあるのですが、その点から言うとこの動画はMVではありませんが、ご容赦ください。

プレイング・フォー・チェンジは、一部ではチャリティプロジェクトという説明もされているようですが、確かにその面もあり、2007年に「プレイング・フォー・チェンジ基金(Playing For Change Foundation)」が設立され、世界各国の恵まれない子供たちのための音楽に触れあう施設や音楽教育のために収益を還元しています。
しかし、チャリティをするために始まられたプロジェクトではなく、元々は(そして今でも)世界各国のストリートミュージシャンの素晴らしさを多くの方に伝えるために、彼らの演奏や歌唱を紡ぐ(つむぐ)ことで更に素晴らしい楽曲として多くの方に伝えることが主旨なのです。
そして、その取り組みの中で、音楽をベースとしてより多くの方を幸せにするために、恵まれない子供たちに音楽と触れ合う場を提供し、また音楽を学ぶ場を提供しており、それがチャリティ活動となっているのです。

最近の動画では有名なミュージシャンも参加しているため(上の動画ではサンタナ夫妻)、プロジェクトの趣旨が伝わりにくくなっているのですが、プレイング・フォー・チェンジの趣旨が色濃く伝わる動画があります。

それが、プレイング・フォー・チェンジの設立のきっかけにもなった動画なのですが、それがコチラの動画となります。
プレイング・フォー・チェンジの「Stand By Me」です。

シブい、渋すぎます。
奇をてらうこともなく、シンプルにそれぞれのミュージシャンの演奏や歌唱を紡ぐことで、彼らの良さを引き出し、最大化させています。
しかも特筆すべきは、個々を際立たせながらも全体としても完成させ、ひとつの楽曲、演奏、動画として成立させている点です。
しつこいですが、こんな動画、観たことありません。感動です!

この動画がプレイング・フォー・チェンジ設立のきっかけになったと書きましたが、共同設立者のひとり、マーク・ジョンソンが道を歩いていた時にあるストリートミュージシャンの演奏に出会ったことが全ての始まりです。
それが、上の動画に最初に登場するストリートミュージシャンで、ロジャー・リドリーという方です。(上のYouTubeのサムネイルの方)
その演奏に感動し、世の中のストリートミュージシャンの素晴らしい演奏を組み合わせると更に素晴らしい作品が出来上がるのではないかと思い立ち、知り合いのエンツォ・ブオノと共にレコーディング機材を持って世界中を回りながら素材を集め、編集して出来上がったのが上の動画なのです。

この「Stand By Me」の動画は、初期の動画ということもあり、映像もそれほどきれいではなく編集も凝ってはいませんが、それゆえミュージシャンの演奏がストレートに表現されており、めちゃくちゃいいですね。
しかし、プレイング・フォー・チェンジ設立のきっかけを作ってくれたロジャー・リドリーは、この動画が撮影されてほどなく2005年に鬼籍に入られたとのことで、それを知り更にこの動画を観るたびに感慨深くなります。
ロジャーの死去は残念ではありますが、死は誰にも訪れるため止むを得ず、それよりもこの素晴らしい演奏、素晴らしい動画を、私を含めて多くの方が視聴し、感動している現実を考えると、ロジャーの存在は今もなお価値あるものとして継続していると思えてなりません。
もし死後の世界があるのなら、ロジャーをはじめ多くのミュージシャンがあの世で一緒に演奏しながら楽しんでくれたらいいなと思う次第です。

プレイング・フォー・チェンジの動画を観ている中で、多様性(ダイバーシティですね)について考えさせられることがあります。
プレイング・フォー・チェンジの取り組みは、まさしくダイバーシティと言えるのですが、ただ単に多様性を目的とするものではなく、様々なストリートミュージシャンの演奏を組み合わせることで、それぞれのミュージシャンの特徴を活かし、最高の演奏で楽曲を仕上げ視聴者に届ける...というのが目的であると考えています。(あくまでも私の考えですが)
そのためには、国や地域、性別や年齢、民族などは関係なく、世界中の様々なストリートミュージシャンの中でその楽曲を最高の演奏で仕上げるための人選を行い、組み合わせて制作されているのがプレイング・フォー・チェンジの素晴らしい動画ではないでしょうか。

得てしてダイバーシティの取り組みは、多様なメンバーでチームを組むことに価値があるように思いがちですが、それではそのチームメンバーに失礼なように思うのです。
チームメンバーそれぞれの強みを活かし、最高の成果を上げるチームにしてこそ、メンバーそれぞれに存在する価値が生まれ、より各メンバーの強みが活きてくる...という好循環がうまれます。
もちろん、音楽にせよビジネスにせよ、単一の能力や考えのメンバーでチームを構成すると運用は簡単なのですが、広がりが生まれず、その結果、成果の向上は難しくなります。
そのため、多様性は必須ではありますが、多様性そのものを目的とするのではなく、全体の成果を最大化するためにメンバーの属性にはこだわらずにチーム編成をする...というのが本質のように思います。
と、そんなことを考えながら、プレイング・フォー・チェンジの素晴らしい動画を観ている今日この頃となります。

さて、そろそろ最後の動画に参りましょう。
最後は、ロス・ロボスが参加するこちらの名曲。
プレイング・フォー・チェンジの「La Bamba」です。

これまたメキシコっぽい陽気で楽しい演奏ですね。
楽曲の生い立ちからしてメキシコの方が多いのは必然ですが、多くの国の方々も参加しているのがプレイング・フォー・チェンジらしいところです。
しかし、全ての参加者が南国というか比較的暑い地域の方々というのが、やっぱりこの楽曲に合っているのかもしれません。

少しだけ残念なのは、上にあるYouTubeのサムネイルを、ロス・ロボスの画像にするのか、あるいは最初に登場する白の上下を着た男性4人組、トレン・ホイカニ(で合っているのか不明、原名はTlen Huicani)の映像にするのか、どちらかが良かったのにと思っています。(まあ、敢えてのこのサムネイルかとは思いますが...)

今回はプレイング・フォー・チェンジの数ある動画の中から3つを紹介しましたが、それぞれ楽曲も演奏も素晴らしい動画(もちろん全ての動画が素晴らしのですが、中でも私のお気に入りという意味で)という理由ももちろんありますが、それ以外の理由もあります。
2つ目の「Stand By Me」は、プレイング・フォー・チェンジ設立のきっかけになった動画ということで選びました。
そして、1つ目の「Oye Como Va」と3つ目の「La Bamba」については、原曲の(著名な)ミュージシャンが参加し演奏しているということももちろんありますが、その2組のミュージシャンは元々ストリートミュージシャンだった...ということが大きな理由となります。
カルロス・サンタナは皿洗いをしながらストリートライブをされていましたし、ロス・ロボスの皆さんは(ストリートではありませんが)何百もの結婚式やパーティーで演奏しながら生計を立てておられたのです。
つまり、今は有名になられていますが、元々はストリートミュージシャンであった2組が参加されているというところがプレイング・フォー・チェンジらしいな...と思い、チョイスさせてもらいました。
そう思ってこの2つの動画を観ると、また違った味わいがありますね。

なお、私は昨年にプレイング・フォー・チェンジの存在を知ったのですが、調べてみて日本のTVコマーシャル(いわゆるCM)で取り上げられていたことが分かり、愕然としました。
最初は2008年の放映で、そのあとも何回か放映されており、直近では2019年にも放映されているようです。
そのCMに出会えていたら、もっと早くプレイング・フォー・チェンジのことを知り、動画も早く観れたのに...と思ったりもしますが、逆にこの年齢になって初めてプレイング・フォー・チェンジの動画を観ることで、深く味わえているような気もしますので、良かったのではないかとも思っています。(いずれにせよ、プレイング・フォー・チェンジの存在を知ることができた幸運には感謝しかありません)

さて、今回は新春特別編として、MVではありませんが、プレイング・フォー・チェンジの3つの動画をお届けしました。
3つとも味わい深い演奏であり動画ですが、他にも素晴らしい動画がたくさんありますので、色々観て味わっていただければ幸いです。

ではまた次回に。

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