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完璧すぎるLSDのMVは、我々のイマジネーションすら奪ってしまうのか?(オススメMV #50)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の50回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は50回連載記念として、私の大好きなLSDのMVを、メイン4つにおまけが2つと山盛りで紹介します。
タイトル通りすべてのMVが素晴らしく完璧なのですが、完璧すぎるがゆえに致命的な課題を抱えています。

詳しい解説は後回しにして、まずその完璧なMVのひとつをご覧ください。
LSDの「Genius」です。どうぞ!

独特な世界観のアニメーションMVですね。
よく言えばカラフル、悪く言えばどぎつい色調の映像が多いのですが、全くイヤな印象がなく、最初から最後まで楽しんで観ることができます。

LSDは3名からなるユニットで、Lはラビリンス、Sはシーア、Dはディプロとそれぞれの頭文字をとって「LSD」と名付けられています。
LSDについては、別で連載している「レコードジャケットの楽しみ」「シーアにディプロにラビリンスって、そりゃいいに決まってるだろ!」の回で紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。

さて、この「Genius」のMVですが、大きく2つの特徴があります。
ひとつ目は、上にも書きましたが巧みな色使いと、それを生かすキャラクターデザインです。
場面ごとに切り取ってみると色使いが派手すぎるというか印象付けが強すぎるのですが、動画としてみるとポップなデザインのキャラクターとのマッチングが良く、また楽曲とのバランスもいいため、色使いに対しての違和感がなく、逆にこの色使いだからこそ素晴らしいMVとして成り立っています。

ふたつ目は、様々なギミックと全体のストーリー設定です。
多種多様なギミック(仕掛け)が施されていることで飽きさせないだけでなく、各所にちりばめられたギミックが微妙に関連していることで不思議な調和と世界観を構築しています。
また、それだけではなく全体を通したストーリーがあることも、まとまりを生んでいる要因です。

この2つの特徴が、通常のMVに比べて極めて高いレベルで実現されているところが、このMVのスゴイところです。
例えば、「ここにストーリーとは関係ないちょっとヘンテコな絵でも差し込んだら面白いのでは?」と思うところにキッチリ差し込まれていたり、卵を落として割るシーンが何度も出てくるのはお笑いでいう「天丼」のテクニックですし、また同じキャラクターがDJとなりターンテーブルで回しているのは目玉焼きだったりと、細部までこだわって作りこまれており、もう何もいうことはありません。
ちなみに、この「Genius」のMVは、LSDで最初にリリースしたMVからなのか、最初にメンバー紹介があり最後にはLSDを大きく押し出しています。

このMVの解説を続けるとキリがないので、次のMVに参りましょう。「Genius」のMVはオールアニメーションでしたが、次に紹介するMVは実写メインのMVとなります。
2つ目のMVは、LSDの「Audio」です。

現実世界と仮想空間が混在しているような不思議なMVです。
観おわったあと、この不思議な空間に引き込まれてしまっていたことに気が付く...という方も多いのではないでしょうか。

この「Audio」のMVも驚くほど完成度が高く、ツッコミを入れるところが全くありません。
ストーリー系の実写版のMVでありがちな楽曲が始まる前の無駄に長い映像だけの時間についてもちょうど程よい長さですし、実写とアニメーションの組み合わせ方も最高です。
3人がバラバラに登場して並行してストーリーが進みながら、最後は参集して終わる展開も申し分ありません。

この「Audio」のMVについても語りたいことはまだまだありますが、今回はたくさんMVを紹介するので、どんどん進めていきましょう。
続いて紹介するMVも実写版です。

このMVがLSDのMVでは一番人気があるMVです。
LSDの「Thunderclouds」です。どうぞ!

同じ実写版でも「Audio」とは違いメルヘンチックなMVですね。
良質の短編映画を見ているかのように、ハラハラドキドキしたかと思うと、ほっこりしたりわくわくしたり、超楽しいMVです。

この「Thunderclouds」のMVでディプロが運転するバンの上で踊る女性は、LSDのメンバーのひとり、シーアのMVでは常連となっているマディー・ジーグラーというダンサーです。
彼女はシーアの「Chandelier」のMVで世に衝撃を与え、その後もいくつかのシーアのMVに出演しています。
「Chandelier」のMVでは少女でしたが、この「Thunderclouds」のMVでは大人の女性となり、かつダンスだけでなく立派に演技もしており、成長の早さに驚くばかりです。(ちなみに、ChandelierのMVはこれです

LSDのMVには共通する世界観があり、主なMVについては全てご覧いただきたく、今回はたくさんのMVを紹介しています。
その「共通する世界観」について解説する前に、メインとなるMVの最後のひとつを紹介しましょう。

4つのメインMVの最後のひとつは、またアニメーションに戻ります。
LSDの「Mountains」です。

「Genius」とは違いカット割りが細かくなく、全体的にゆったりとしたテイストのアニメーションMVとなっています。
こちらのMVも不思議感が満載ですが、洞窟の奥にある本をメインに据えたストーリー展開は素晴らしいですね。

この「Mountains」のMVは、通常のMVとは違い「Lyric Video」といって歌詞をメインにしたMVとしてリリースされていますが、通常のMVとして通用するというか、通常どころか素晴らしいMVとして仕上がっています。

MVの内容をみると、シーアとラビリンスがビーチにいるところから始まり、急に雪山に場面が切り替わってそこでなぜか雪男に扮したディプロが拾われた壊れたロボットを拾って直してそのロボットはベッドで人形を抱いて眠る...もうワケがわかりませんが、(上にも書きましたが)山の洞窟にある一冊の本が主軸となっているところがこのMVのウマいところです。

さて、メインとなる4つのMVをご覧いただきましたが、ここからは全体を通した解説に入っていきましょう。

4つのMVには、共通したアニメーションのキャラクターが登場しています。
もちろんシーアにラビリンス、ディプロの3名もそうですが、それ以外に3つ目のトラやネズミのキャラクター、蝶なども複数のMVに出てきており、それが共通する世界観を作っています。

そして、そのアニメーションのキャラクターデザイン自体がLSDの世界観に大きく影響を与えています。
このキャラクターデザインは、ガブリエル・アルカラというポップアートのイラストレーターが手掛けているのですが、正直そんなに有名な方ではなく、採用に当たっては大きな決断だったと思いますが、この決断が大正解であったことはMVを見れば明らかです。

そして、4つのMVとも完成度が高く、優れたMVであることは明白であり、疑う余地はありません。
しかし、私はこの4つのMVを繰り返し観ることはほとんどありません。

なぜなら、「こうしたほうがいいのでは?」と思うところが全て備わっていて、全く考えることなく受け入れるだけで楽しめるからです。
この4つのMVは、視聴者が自分でイマジネーションを膨らませる必要がなく、全ての要素を完璧な内容とタイミングで提供してくれているのです。
そのため、自ら思考することなく楽しめるのですが、私としてはそれがイヤなのです。

この4つのMVをご覧になった皆さんがどう思い、どう感じられるかが気になるところです。
気に入られてヘビロテされるのか、私と同じように「すごいが、繰り返しはないな...」と思われるのか...

しかし、LSDのMVでも2つ、繰り返し見るMVがあります。
それがおまけで紹介する2つのMV&ライブ動画です。

1つ目のおまけMVは、リル・ウェインがリミックスした「Genius」です。

もう、めちゃくちゃイケてるリミックスですよね。
楽曲自体のリミックスも素晴らしいのですが、何より素晴らしいのは映像のリミックスです。こんな映像のリミックスは見たことがありません!

リル・ウェイン(Lil Wayne)は「生きている中で最高のラッパー」を自称している米国のラッパーで、彼のオリジナルの楽曲はあまり聴くことはないのですが、この「Genius」のリミックスは最高ですね。
しかし、楽曲のリミックスだけでなく、それを上回るほどMVの映像の出来が素晴らしく、何度見ても飽きません。

なぜLSDのメインの4つのMVは素晴らしいのに繰り返し観ることはなく、なぜこのリミックス版の「Genius」のMVだけ繰り返し観るのか?
それは、このリミックス版の「Genius」のMVは尖っているからではないかと考えています。

オリジナルの「Genius」のMVをベースにしていますが、大胆に削るところは削り表現も抑え、その代わりに押し出すところは押し出す。
完成度としてはオリジナルMVのほうが高いかもしれませんが、お気に入りは確実にリミックス版の「Genius」です。

しかし、MVというのは奥が深く、難しいな...と今更ながらに思わせられます。

なお、LSDのMVでは日本と関連があるギミックがいくつか出てきます。
このリミックス版「Genius」のMVでは赤塚不二夫さんのキャラクターが出てきていますが、「Thunderclouds」のMVでは「サンダー雲」と服の後ろに書いてあります。
他にもあるかもしれませんので、皆さんも探してみてください。

さて、最後は、おまけMVというかライブ動画となります。
LSDの3人とMVに出ているダンサーのマディー・ジーグラーが、The Ellen DeGeneres Showというテレビ番組でライブショーをした動画です。
メチャクチャいいので、ぜひご覧ください!

ナマの4人が一堂に会してライブショーを行う、というのは奇跡です!
アニメーションの世界とリアルの世界をうまく融合させたポップなライブに、もうくぎ付けです。

繰り返し見ても全く飽きず、毎回ディプロのやる気のない顔が気になりますが、逆にそれがいい味付けになっているとも思われます。
このThe Ellen DeGeneres Showのライブパフォーマンスは、どのアーティストも素晴らしい演出ですので、皆さんのお気に入りのアーティストが出演していればぜひ観てみてください。
YouTubeにチャンネルもありますので、ぜひ!

さて、今回は50回記念として私のお気に入りのLSDの特集をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?
まだご覧になっていない方がおられたら、完成度の高いLSDのMVをぜひ一度は体験してみてください。

ではまた次回に。

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