リミックスMVって勝手に命名。マドンナもいいけど、やっぱりLSDが最高だ!(オススメMV #52)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の52回目です。(連載のマガジンはこちら)
今回は「勝手に命名シリーズ」の5回目として、「リミックスMV」というテーマでお送りします。
リミックス版の楽曲はたくさん世に出ていますが、オリジナルMVそのものをリミックスしたMVというのは、実はあまり多くありません。
「リミックスMVってなんなの?」と思われる方も多いと思いますが、解説に入る前に、まずリミックスMVを1つ紹介します。
比較しながらご覧いただきたいので、まずオリジナルのMVを紹介し、続いてリミックス版のMVを紹介する、というパターンでお届けします。
では、最初のオリジナルMVは、マドンナの「Vogue」です。
もう何も語ることがないほど、洗練され完成されたMVですね。
この「Vogue」は以前の連載で紹介したことがあるので、「Vogue」のMVやマドンナの解説はそちらをご覧ください。
さて、この「Vogue」の楽曲には、アルバムバージョンとは別に12インチシングルに収められたリミックスバージョンがあります。
アルバムバージョンの「Vogye」が4分50秒なのに対し、12インチシングルバージョンはなんと8分23秒もあり、もうモリモリです。(ちなみに、MVもそれぞれ4分54秒、8分02秒とほぼ同じ長さとなっています)
12インチシングルバージョンの「Vogue」は、アルバムバージョンをリミックスして制作されており、よりダンサブルな楽曲になっています。
そして、その12インチシングルバージョンの「Vogue」にもMVが存在しており、それがこちらです。
マドンナの「Vogue 12" Version」です。
画質が悪いのが玉に瑕(きず)ですが、アルバムバージョンのMVとは違い、いい意味で振り切っているMVですね。
ちなみに、この12インチシングルバージョンの「Vogue」のMVは、「Vogue」リリース30周年を記念してマドンナのYouTubeチャンネルで公開されたものです。
映像にでかでかと「ROCKAMERICA」と表示されていますが、ROCKAMERICAはMTVがスタートする前年の1980年に業界向けにMusicVideoを配信していた会社で、配信されていた映像素材しか残っていなかったのかもしれません。
さて、話を戻しましょう。
楽曲自体をみると、アルバムバージョンの「Vogue」がうまくリミックスされてダンスチューンに寄せてあり、8分と長めの演奏時間なのですが途中飽きることなく最後まで聴かせてくれます。
そして肝心なMVの解説にまいりましょう。
楽曲のダンサブルなリミックスにあわせて、MVの映像自体も動きのある映像を中心にまとめられていますが、その映像はアルバムバージョンの「Vogue」のMVの映像のみを素材とし、カットをバラバラに分けたうえで再構成されています。
これこそが「リミックスMV」と名付けた理由です。
オリジナルのMVの映像をベースにし、それをバラバラに分けて再構成し、リミックス版の楽曲のテイストに合わせた映像に仕立て直してMVとして制作する...これは一見簡単なように見えますが、単純にリミックスされた楽曲にあわせて映像を組み合わせたのであればバランスが悪くなり、かつ単体のMVとしての存在価値が低く、視聴者に与える満足も低くなっていしまいます。
バランスを取り、単体のMVとしての存在価値を上げ、かつ視聴者に満足を提供するのは、どうすればよいのか?
そのひとつの方法は、リミックス版の楽曲にあわせてオリジナルのMVを作る...というやり方です。
しかし、これは「リミックスMV」ではありません。
あくまで、「リミックス版の楽曲のMV」となります。
この12インチシングルバージョンの「Vogue」のMVは、楽曲もリミックスであり、MVもリミックスなのです。
これこそ正真正銘の「リミックスMV」と言えます。
なお、参考までにリミックスの楽曲にあわせて制作されたMVの例を紹介しましょう。
ザ・ウィークエンド(The Weeknd)の「Save Your Tears」です。
ウィークエンドは歌詞も独特なものが多いのですが、MVもブラックで見ごたえのあるMVがたくさんあります。
このMVも、メチャクチャなところもありますが、またそれがいい味になっていて見ごたえがありますね。
ウィークエンドについては別の機会に詳しく紹介するとして、この「Save Your Tears」にはリミックスバージョンの楽曲が存在します。
それがこちら、ザ・ウィークエンドの「Save Your Tears (Remix)」です。
アリアナ・グランデを客演に迎えたリミックスバージョンですが、オリジナルのMVとは全く違い、オールアニメーションのMVとなっています。
しかし、リミックス版の楽曲、特にアリアナ・グランデとコラボした歌声とアニメーションで描く世界観のマッチングがすばらしく、これはこれで優れたMVであると言えます。
しかし、このMVはあくまでリミックス版の楽曲のMVであって、「リミックスMV」ではないのです。
「リミックスMV」について解説しましたが、「ザ・リミックスMV」とでもいうべき、素晴らしい「リミックスMV」が存在しています。
それが、以前こちらの連載でも紹介したLSDのMVです。
まず最初にオリジナルのMVをご覧ください。
LSDの「Genius」です。
この「Genius」のMVは、ある種完成されており、これ以上何も手を加える必要がないほど優れたMVであることは間違いないのですが、以前の連載でもお伝えしましたが、他のLSDの楽曲と同様にこのMVも繰り返し観ることはありません。
しかし、この「Genius」にはリミックス版の楽曲があり、そのMVは何度も繰り返し観ています。
そのMVこそ、マドンナの12インチシングルバージョンの「Vogue」を超えるであろう「リミックスMV」なのです。
それが、このLSDの「Genius (Lil Wayne Remix)」です。
何回、いや何十回観ても見入ってしまうMVです。
オリジナルのMVの映像をベースにしながら再構成し、細かく色を変化させたり、リル・ウェインを模したキャラクターが絶妙なタイミングで出てきたりと、恐ろしいほどの手の込みようです。
クオリティはオリジナルのMVを超えているのではないでしょうか?
楽曲のリミックスは一般的となり、優れたリミックスの楽曲もたくさん出ていますが、「リミックスMV」はほとんどありません。
MVを制作される映像作家の皆さんも、ぜひ「リミックスMV」に積極的に取り組んでいただき、楽曲としてのリミックスだけではなく映像としてのリミックスもひとつのMVのジャンルとして立ち上げてもらいたいと切に願っています。
以上が今回の内容ですが、最後に違う種類の「リミックスMV」を紹介しましょう。
それは、HALCALIの「ストロベリーチップス 田中ちがいMix」です。
HALCALIの「ストロベリーチップス」は以前この連載でも紹介しましたが、
このMVはHALCALIのオリジナルDVD「春狩デーヴィーデー (仮) [DVD]」に収録されている映像作品です。
このMVは「リミックス版の楽曲にあわせて、オリジナルの楽曲のMVを素材として映像もリミックスして、リミックス版の楽曲のMVを制作する」というものではありません。
リミックス版の楽曲が存在せず、「MVそのものをリミックスする」というアプローチで生まれた「リミックスMV」ととなります。
つまり、HALCALIの「ストロベリーチップス」のMVそのものをリミックスして作られたMVなのです。
本当は皆さんに、この「ストロベリーチップス 田中ちがいMix」をご覧いただきたいのですが、他のHALCALIのMV同様、YouTubeをはじめとする動画配信サービスにはオフィシャルMVがアップされていません。
探したところ、オフィシャルではない動画としていくつかアップはされているようですので、ご興味のある方は探してご覧ください。
さて、今回は「勝手に命名シリーズ」の第5弾として「リミックスMV」を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
しつこいですが、LSDの「Genius (Lil Wayne Remix)」のMVは超おすすめですので、ぜひ一度ご覧ください。
ではまた次回に。